白いご飯を隠す天然本マグロ、老舗は盛りも潔い 静岡市「うおかね」

 ペリー来航の頃には、すでに暖簾を掲げていたという。静岡市葵区馬場町、浅間通りに店を構える「日本料理 うおかね」は、江戸時代の末期から同じ場所で商いを続けてきた。店内にはテーブル席と個室があり、長い歴史を持つ日本料理店でありながら、丼や定食を目当てに足を運べる親しみやすさも備えている。
 看板メニューは、6代目が始めた「まぐろ丼」。使うのは天然の本マグロで、一本、時には半身で仕入れ、超低温で保存する。丼を覆うのは中トロを中心とした11~12枚。白いご飯が見えなくなるまで、惜しげなく並べていく。厚みのある切り身を口に運べば、本マグロらしい脂の甘みと上品な旨みが舌に残る。同じ天然物でも、漁獲された地域や季節、個体の大きさによって味は異なるという。いつ訪れてもまったく同じではない。その日のマグロと向き合えるのも、一本買いをする店ならではだ。

本鮪まぐろ丼(3000円)※仕入れにより個体差あり
本鮪まぐろ丼(3000円)※仕入れにより個体差あり

 丼に添えたいのが、駿河湾産の「桜海老のかき揚げ」。漁師から紹介された仲買を通じて仕入れ、年間を通して提供している。具材は桜えびのみ。彩りとして三つ葉をあしらう以外、別の野菜でかさを増すことはしない。揚げた衣の軽快な歯ざわりに続き、桜えびの香ばしさと旨みが現れる。産地の恵みを、余計な具材で隠さず食べさせるかき揚げだ。

桜海老のかき揚げ(1100円)
桜海老のかき揚げ(1100円)

 老舗で異彩を放つのが「絶対勝つ丼」。地元の高校野球を応援しようと、当初は夏限定で生まれたが、現在は人気メニューのひとつになった。名前にはゲン担ぎだけでなく、カツを卵で閉じず、その上へ「のせる」ことで「勝ちにのる」という洒落も込められている。自慢は、一般的なカツ丼の2倍とも3倍ともいわれる肉の厚さ。卵の上に置くため衣のサクサク感が残り、厚切りカツの量感も隠れない。名は軽妙だが、勝負めしにふさわしい迫力がある。

プレミアム絶対勝つ丼(1800円)
プレミアム絶対勝つ丼(1800円)

 酒席で支持されているのは、ブラックタイガーを使った海老の天ぷら。熱を入れた海老の甘みに、わさび塩の鋭い辛みを添えて味わう。調味料を重ねず、素材を主役に据える食べ方は、魚介を扱い続けてきた店によく似合う。

海老天麩羅(1100円)
海老天麩羅(1100円)

 天然本マグロを豪快に盛る一方で、桜えびのかき揚げは具材を絞り、海老天はわさび塩で端正に食べさせる。そこへ、地域への応援から生まれた厚切りのカツ丼も加わる。江戸時代からの歴史を静かに守るだけではなく、6代目のまぐろ丼や遊び心のある勝負めしも定着させてきた。老舗で何を食べるか迷ったら、まず白いご飯が見えない丼を頼みたい。うおかねの気前のよさが、ひと目で伝わってくる。

白いご飯を隠す天然本マグロ、老舗は盛りも潔い 静岡市「うおかね」

日本料理 うおかね
住所:静岡市葵区馬場町33
電話番号:054-252-0394
定休日:月曜日 ※祝日の場合は営業
営業時間:11:00-14:00 / 17:00-21:00