熱海市土石流から1年半、責任の所在は?行政の対応に問題はなかったのか…浜松市では新たな盛り土被害も【重大ニュース静岡2022】

高橋諒記者(11月30日):
「ここは、土石流が流れ下った場所です。発災から、まもなく1年半が経過しますが、未だ土石流の責任は明らかになっていません」

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熱海市伊豆山の土石流災害

画像: 熱海市伊豆山の土石流災害

去年7月3日。熱海市伊豆山地区を襲った土石流。

 死者27人、行方不明者1人、被害を拡大させたのは“違法な盛り土”とされています。

 不動産会社の社長、天野二三男氏が2006年、熱海市伊豆山地区に土地を購入。

 別荘地をつくる名目で盛り土の造成を熱海市に申請したのが始まりでした。

天野二三男氏(前所有者):
「あくまで当社は許可申請人である。この管理責任者は、うちではありません」

 2011年。土地は、建設会社のB氏に売却。

 その10年後に土石流が起きました。

 B氏は、「盛り土の存在は知らなかった」と主張しています。

記者:「27人が亡くなりました。どこに責任があると思いますか?」

B氏:「・・・」

静岡県の対応は

消極的な静岡県の対応も浮き彫りになりました。

 盛り土が崩落する以前に収録された音声データです。

 ここには天野氏の関係者の男性と静岡県の担当者とされる人物のやりとりが残されています。

画像: 静岡県の対応は

男性:
「これが伊豆山で土砂崩れがきょうあしたうちにおきた場合、あなたたちは責任を負ってもらいますよ。私はしっかりと説明したつもりでいますから」

静岡県 担当者:
「もう少し、冷静になって話しをさせてもらいたいんですよ。」

男性:
「どこが冷静ですか」

静岡県 担当者:
「行政として、今現時点でどう出来るのかって話のか」

男性:
「そうです。それをずっと聞いているんです」

遺族は「殺人」で刑事告訴

発災から1年が経った今年7月3日。

 消防に最初の通報があった午前10時28分。

 各地で犠牲者を悼み、黙とうがささげられました。

娘を亡くした小磯洋子さん(72):
「(娘が)きのうのように思っているので、まだ帰ってくると思っているんですね」

 遺族らは、盛り土の土地所有者を刑事告訴。罪名は「殺人」です。

画像: 遺族は「殺人」で刑事告訴

 静岡県と熱海市を相手取りおよそ64億円の損害賠償を求める訴えも起こしています。

被害者の会 瀬下会長(14日):
「熱海市は代理人が13人。誰一人としてこの裁判に出席をしていない。こういう熱海市の無責任な体質が一番の問題ではないか」

被害者の会 小磯さん(14日):
「娘はいまだに自分がなんで死んだかわかっていないと思う。これからも熱海市、静岡県と闘っていきたいと思います」

 責任の所在は、司法の場で問われることになります。

 この事件を皮切りに国は各都道府県に盛り土の総点検を通達、県も盛り土に対しては厳しい罰則を設けるなど措置を講じます。

 そんな中、悲劇は繰り返されてしまいました。

浜松市でも

画像: 浜松市でも

原川朋華記者(19日)
「発災からおよそ3か月が経過しました。被災した家屋はすでに撤去されています」

 今年9月、浜松市天竜区では台風15号による大雨の影響で土砂崩れが発生。

 3人がけがをし、住宅3棟が全半壊しました。

 近隣住民が口にしたのは、「盛り土」の可能性です。

近隣住民(9月25日):
「トラックが何回も何回も土をおろしていたのを私は見ました」

近隣住民(9月25日):
「気にはかけていたけどまさかこんな事故になるとは思っていなかったですね」

 発災からおよそ2週間後、浜松市が開いた会見で…。

浜松市土木部 伏木章尋部長(10月6日):
「2社から土を搬入したと確認しましたので盛り土ということでよろしいかと」

 県の条例で届け出が必要な量を超える総量8000?の盛り土が少なくとも業者2社によって造成されていたことが明らかになりました。

行政の対応は

画像: 行政の対応は

ここでも浮かび上がったのが「行政対応の妥当性」です。

 浜松市が、2014年ごろから少なくとも4回、近隣住民から土砂の搬入に関する情報提供や相談を受けてきたことが判明。

 しかし、具体的な対応には及んでいませんでした。

 現在、第三者委員会による検証会で、原因の究明が急がれています。

 熱海市の土石流災害からわずか1年あまりで再び起こった盛り土による被害。

 今後、崩落を未然に防ぐことはできるのでしょうか。