「体を動かしたい」…避難している会員の声にも応え 土石流災害の被災地でボクシングジム再開 静岡・熱海市

 7月に発生した土石流で大きな被害を受けた静岡県熱海市の伊豆山地区にある「ボクシングスクール フィスト」。2015年にオープンし、去年、この場所に移転しました。

災害の1カ月後にジムを再開

画像1: 災害の1カ月後にジムを再開

 会長の多田友樹さん(35)。伊豆山出身で、アマチュアやプロボクサーとして、活動していました。建物への被害はなかったものの、7月3日の発災以降、休業していたジム。

 新型コロナの感染防止対策を行った上で、8月3日に再開させました。

多田友樹さん:「自分も避難所にいた時に会員さんも避難所にいて、避難所で会った時に早く体を動かしたいとか、はやくジムやってほしいとか、少しでも早くやってあげたい、そういうふうに思ったので、なるべく早めにジムを再開しようと思いました」

画像2: 災害の1カ月後にジムを再開

 ここに通っているのは、小学生から90代のお年寄りまで。ボクシングだけでなく、フィットネスや地域のお年寄りを対象にした健康づくりのサポートもしています。

 再開後一週間は、すぐに元通りとはいかなかったそうですが、11日は、小学生や昔からの会員で活気にあふれていました。

小6の男の子:「土石流が下っていた場所は、みんなで走っていたところ。自分が当たり前のように走っていた場所が土石流で一気になくなってしまって、悲しさが込み上げてきました。いろんな練習ができてとても楽しいので、(ジム再開は)うごくうれしいです」

別の小6の男の子:「自分にできることはボクシングを一生懸命やって、僕たちがそれ(土石流)を忘れるような、すごいっていうものを見せていきたい」

ジム支える医師「精神面も含めて、汗を流すことは大事」

画像: ジム支える医師「精神面も含めて、汗を流すことは大事」

 自らも会員で、このジムを医師としても支える男性は…。

医師 後藤直樹さん:「やっぱり子どもたちの体のことだけじゃなくて、精神的な面も含めて、ジムで汗を流す、仲間と顔をあわすというのは、大事なことだと思いますね。ひとつずつ明かりを灯していくところを増やしていくのがやっぱり復興への第一歩ってことだと思う」

 スクールの前の市道は今なお、土砂を運ぶトラックなどが行きかい、地元車両以外の通行は規制されています。

多田さん:「行方不明者がまだ見つかっていないというので、こんな状況で再開、仕事をするというのはどうなのかなというのは、お話はしたんですけど、いま前向きに考えてくれている会員さんたちのためにも、少しでも楽しく体を動かせるようにしたいと思っています。」

 ここ伊豆山のボクシングジムで流れる汗…。子どもたちの活気…。被災地の道しるべになりそうです。