7年前には危険性指摘「もしこれで事故が起きたら人災ですよ」 県の第三者委員会は「行政対応は失敗」 【静岡・熱海土石流災害2年 /責任の所在③】

 おととし7月3日、静岡県熱海市伊豆山の逢初川の源頭部に違法に造成された盛り土が崩れ、関連死を含め28人が犠牲になりました。行政は、なぜ大規模な盛り土を放置したのでしょうか。

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第三者委「行政対応は失敗」

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第三者委員会 青島伸雄委員長(2022年5月):「本件における行政対応は『失敗であった』」  

県が設置した第三者委員会が指摘したのは、事業者から重要事項が記載されないまま提出された土地改変行為の届出書を受理したこと。

 その後も、業者に対して、崩落防止対策の措置命令を見送ったことについて熱海市の対応が不適切だったと非難しました。

これに対し熱海市は…

静岡・熱海市 斉藤栄市長:「法的な責任、行政権限の不行使に当たらない」

県と市は「責任のなすりつけあい」

画像: 県と市は「責任のなすりつけあい」

 盛り土のあった土地の開発行為を巡っては、県と熱海市が責任のなすり付け合いに。土地の開発行為は1ヘクタール以上なら森林法で県が、1ヘクタール未満では土採取条例で熱海市が対応します。しかし…

熱海市
「1ヘクタールを超えていると県に何度も主張したが、取り合ってもらえなかった。引き続き熱海市が指導するよう指示された」(2022年5月11日 百条委員会)

 当初の盛り土は0.94ヘクタール。現場を見た熱海市からの指摘を受け、前土地所有者は1.2ヘクタールに修正しました。

県担当者(2022年7月):「(土採取)条例がスタートラインに立っているので、そこで(熱海市が)措置命令を出して対応していくのが普通だと思う」

「これで事故が起きたら人災ですよ」

画像: 「これで事故が起きたら人災ですよ」

 前土地所有者と一緒に仕事をしていた男性は、県にも繰り返し対応を求めたと言います。

男性:「もしこれで、私が訴え出たことを軽んじるのであれば、今後土砂災害等が起きたら、あなたたちは責任を取りますか? もしこれで事故が起きたら人災ですよ、と私言っています」

 盛り土が崩落する7年前に録音された、この男性と県の担当者とされる人物とのやり取りでは…

男性)あなたたちは危険を感じていないよ、身の。あんな行政のぬるい話でやっているからですよ。伊豆山で土砂崩れがきょう、あしたのうちに起きたときに、あなたたちは責任を負ってもらいますよ。私はしっかりと説明したつもりでいますから

県の担当者)もう少し冷静になって話をさせてもらいたい

男性)どこが冷静ですか

県の担当者)行政として、今現時点でどうできるのかっていう話。

男性)そうです。それをずっと聞いているんです、前から。だから、私がお願いするのはたった一つ。伊豆山見てください。

県の担当者)もちろん、見ます

静岡県 方針転換して「再検証」へ

画像1: 静岡県 方針転換して「再検証」へ

 「行政対応は失敗だった」と結論付けた県の第三者委員会。これを受け、県議会の特別委員会は、県の行政対応について調査を開始。その結果「検証は不十分」として、県に再検証を求める提言をしていました。

 一方で川勝知事は、「やるべきことはやった」と、再検証に後ろ向きな姿勢を示していました。しかし、県は6月、この方針を一転させ、内部で再検証を行うと表明しました。

静岡県 川勝平太知事(2023年6月):「砂防法や森林法などに関して検証委員会(第三者委員会)において取り扱われていない、新たな視点に基づく提言をいただいたことを重く受け止め、県として改めて検証を行い、その結果を速やかに県議会に報告していく」

画像2: 静岡県 方針転換して「再検証」へ

遺族の瀬下さんは…

瀬下雄史さん:「被害者の声が大きくなってきたことによって対応せざるを得なく、渋々やるんだろうなと思うんですけれども。とはいえ、再検証するという決断をされたことには、そこは評価したいと思います」