今月4歳になるはずだったのに…ミスにミスを重ね奪われた命 バス置き去り死事件から1週間 献花台にはたくさんの花と飲み物 静岡・牧之原市

 静岡県牧之原市の認定こども園で、3歳の女の子が送迎バス内に置き去りにされ死亡した事件は、発生から12日で1週間です。園周辺ではあさ、警察が検問を行い当時の状況について情報を集めました。

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警察は目撃情報求め現場周辺で検問

各務実来記者(午前9時半ごろ):「午前9時すぎです。女児が見つかったこちらの駐車場に面した道路では、警察官が当時の状況について知るため、検問を行っています」

画像: 警察は目撃情報求め現場周辺で検問

 牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」の送迎バスの中に3歳の女児が5時間にわたって置き去りにされ、熱射病で死亡した事件から1週間。女児は午前9時ごろからバスに閉じ込められていて、警察はその時間に合わせて、バスがとめられていた駐車場の近くで検問を行いました。

警察検問
「本日、女児が亡くなってから1週間ということで、この時間帯に通っている方の目撃を聞いているところなんですけど、ちょうど1週間前、5日の午前9時から14時の間で、どうでしょう、この道を通ったとかはございますか」

 女児が車内に置き去りにされていた時間帯に周辺を走っていなかったか、ドライブレコーダーの映像はないかなどの聞き取りを実施。

 警察はきょうも押収した送迎バスの検証を続けていて、事件当日と同じような気象条件がそろえば、近日中にも車内温度の変化などを調べる実証実験を行う方針です。

献花台には

画像: 献花台には

 事件が起きてから、初めての週末。多くの人が、園やバスがとめられていた駐車場を訪れ、女児の冥福を祈りました。

藤枝市 2歳児の父親(30代):「本当、女の子がお母さんから持たされたお茶ですかね。そちらを飲んで、服も脱いで、命をつなぎ止めていたというのは想像するとすごく胸が苦しくて。本当に言葉が出ません」

藤枝市 3歳児の母親(30代):「やっぱり水。空の水筒が置いてあったということで、本当に悲しくなっちゃって。私たちも水を欲しがっていただろうなと思ったので、カルピスを持ってきた」

 献花台の上に乗り切らないほど、多くの花や飲み物が手向けられています。

友達がたくさんいて、サッカーが好きだったという女児。園では毎日のようにみんなとボールを追いかけていたそうです。

今月4歳の誕生日だった

 中には、「おたんじょうび おめでとう」というメッセージも。亡くなった女の子は9月、4歳の誕生日を迎えるはずでした。

画像: 今月4歳の誕生日だった

掛川市 3児の母親(30代):「朝、たぶん普通にいってらっしゃいって言ったと思うんですよね。普通にいってらっしゃいって言って送ったのに、そんな無言の帰宅なんて、とても想像しただけで胸が張り裂けそう。本当につらすぎて、家に帰るとその話ばっかりして、あの記者会見を見たら余計につらくて、なんかすごく他人事だし」

藤枝市 60代:「つらかったというかね、あんな小さい子がのど乾かして、あの暑い車の中で…。なんかもったいない命で、助けられなかった。それが一番つらいです」

792件の「問い合わせ」 大半は批判や怒りの声

 牧之原市によりますと、12日朝までに事件に関する問い合わせは792件寄せられていて、大半は「なぜ防げなかったのか」といった、批判や怒りの声だということです。

牧之原市 杉本喜久雄市長:「遺族に直接会いに、お悔やみに行った。遺族からはこのようなことが二度と起こらないように対策を講じてほしいと話があった」

画像: 792件の「問い合わせ」 大半は批判や怒りの声

須藤誠人アナウンサ-:「3歳の女の子がバスで置き去りとなり死亡する事件が発生してから、きょうで1週間です。園には168人の園児たちが通っていましたが、今も休園が続いていて、静まり返っています」

車内の確認、欠席者の確認…ミスにミスを重ね奪われた命

 事件発生から1週間。これまでに分かっていることを整理します。

川崎幼稚園 杉本智子副園長:「バスが幼稚園に到着し、園児がバスに取り残されていないかをダブルチェックする決まりになっていなかった。登園する予定の園児が教室にいなかったにもかかわらず、クラス担任が『職員室に確認』『保護者に問い合わせ』をしなかった」

 川崎幼稚園では、休みや遅刻などをする場合、保護者がアプリに、その旨を打ち込みますが、登園する場合は何も打ち込みません。亡くなった女の子の保護者は、何も打ち込んでいませんでした。

川崎幼稚園 杉本智子副園長:「連絡なく休むことが亡くなった女の子の場合はなく、お母さんがいつもきちんと連絡をしていたのですが、この日、担任は休みなのかなと思ってしまったということです」

画像: 車内の確認、欠席者の確認…ミスにミスを重ね奪われた命

 当日、普段の運転手が休んだため、急きょバスを運転することになったのが73歳の増田立義園長です。

川崎幼稚園 増田立義園長:「僕もいつもやっていなかったので、運転をするというのが不慣れだったというのが一つの原因だと思います」

 バスには70代の派遣職員の女性も一緒に乗っていました。この職員は2歳の園児を降ろし、ほかの5人の子どもには自分で降りるように声を掛けただけでした。

Q.忘れ物を確認しようとかも思わなかった?

増田園長「その時は、私の園長という立場か習性かもしれないんですけど、その人(補助の女性職員)にお任せしているものですから、そこまでは気が回らなかったです」

 事件を受け、県と牧之原市は安全管理態勢を検証するため特別監査に入りました。初日は園長や副園長、女児のクラスの副担任らに聞き取りを行ったということです。

静岡県福祉指導課 小池美也子課長:「バス通園ということで、通常の通園方法と異なる。親が直接お子さんを連れてきて園に引き渡すという形ではなく、園がそこに介在することになりますので、そこのところで、やはり手続きがどうなっているのか、当日実際はどうだったかというところを中心に話を聞かせていただきました。事案の重大性に鑑みて、認定こども園法や法令に抵触するような事象、そういったものがないか確認し、そういったものが見つかった場合については改善勧告という形で求めていきたいと考えている」

 県は聞き取りを実施できなかった職員らを対象に、調査を継続するとしています。

 繰り返された送迎バスでの悲惨な事件。政府も対応に乗り出しています。先週、岸田総理は全国すべての保育所や幼稚園などで送迎バスの安全管理について、緊急点検を実施するよう、小倉担当大臣に指示しました。

小倉将信こども政策担当大臣:「2度この事故が起こってしまったわけですから、もう3度目はあってはならない。こども政策担当大臣の私を中心に、政府としてやれることは何でもやる。そのような覚悟を持ってスピード感を持って検討させていただきたい」

 今後、原因究明のため、関係者や有識者らにヒアリングを行った上で、来月中にも再発防止に向けた緊急対策をまとめるとしています。国が主導して、送迎バスの安全管理マニュアルを作成するのは今回が初めてです。