静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の現地調査に同行(前編) 静岡・磐田市

磐田市では敷地川が再び決壊しました。なぜ同じ場所が崩れてしまったのか、また、どんな点に気を付けなくてはいけないのか。専門家の現地調査に同行取材しました。

画像1: 静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の現地調査に同行(前編) 静岡・磐田市

伊地健治アナウンサー磐田市敷地 6日:
「磐田市を流れる敷地川の決壊現場です。ご覧のように、川が左側に大きくカーブしているのが分かります。そして、その向こう側、土のうが積まれていますが、あの場所が決壊しました。そしてあの場所は去年9月の台風15号の際にも決壊したんです。今回の大雨では、川の向こう側。あの白い家が見える方角に川の水があふれだしたということです」

 敷地川は磐田市や袋井市を流れる川で、2級河川「太田川」の支流です。

画像2: 静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の現地調査に同行(前編) 静岡・磐田市

 6月2日先週金曜に堤防が決壊したのは、敷地川の中流部。
川が大きく蛇行している部分です。

画像3: 静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の現地調査に同行(前編) 静岡・磐田市

片山真人アナウンサー 磐田市 3日:
「氾濫した磐田市敷地川の上空です。まだ茶色く濁った川の水が勢いよく流れています」

 今月の大雨で堤防が決壊したのは、去年9月の台風15号による大雨でも決壊した場所。

 右側の画面が、4日後今週火曜日の映像です。川の水は、少なくなりましたが、付近では住宅への浸水や、柿畑に土砂が流れ込むなど、大きな被害が出ました。

画像4: 静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の現地調査に同行(前編) 静岡・磐田市

柿農家 磐田市敷地 3日:
「ここだよ」
「ここまで入ってきたんですね」
「機械がみんなやられちゃった」
「これだけ残ってバッテリーがあがっちゃった」

画像5: 静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の現地調査に同行(前編) 静岡・磐田市

なぜ同じ場所で決壊が

なぜ、去年と同じ場所が決壊してしまったのでしょうか。

画像1: なぜ同じ場所で決壊が

静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の現地調査に同行しました。

白い土のう袋と黒い土のう袋があるが?

画像2: なぜ同じ場所で決壊が

静岡大学 防災総合センター 牛山素行教授:
「(白い物は)去年の台風の復旧で置いたちょうど黒い土のう袋がある辺りで(土地が)少し下がりますよね。
あの部分は人工的に盛った堤防の部分だと思う。
その部分は 去年堤防が切れて今回 また切れてしまった。
低くなっている部分が なぜ低いかと言うと、どれぐらい昔か分かりませんが、
数百年前から数千年前ぐらいの間に川だった所ですね。
昔は黒い所から今回流れたのと同じように、向こうに水が流れていっていた。
左の方に曲がっていっていますが、
右の方に曲がっていた時代があったんだろう。
地形的に見ればあそこに水が流れていくこと自体は、
元々の地形に従った感じで水が流れて行った」

画像3: なぜ同じ場所で決壊が

いつごろ?

「明治以降は今と同じ川の形ですから少なくとも それより古い時代だろう」

 これは、敷地川周辺の土地の成り立ちを示した「重ねるハザートマップ」です。

画像4: なぜ同じ場所で決壊が

静岡大学 防災総合センター 牛山素行教授:
「緑色の部分が氾濫平野と言って川が形成した平らな土地。
青く描いてあるのが旧河道。昔の川の位置。
旧河道の水筋がいくつかあったことも分かります」

 決壊した堤防の南側は、もともと敷地川が流れていた場所で、現在は主に「田んぼ」として使われています。

伊地健治アナウンサー
「川の対岸を見てみますと、ところどころに壊れたコンクリートの護岸があるのが分かります。去年の台風で、川の堤防が決壊し、その応急処置が施され、そしてその最中にふたたび大雨がこの川を襲ったということがよく分かります」

 では、なぜ敷地川は、旧河道、昔流れていた場所から現在の流れに変わったのでしょうか?

 牛山教授に聞きました。

画像5: なぜ同じ場所で決壊が

静岡大学 防災総合センター 牛山素行教授:
「ここに黄土色ぽいところがありますが、この部分は扇状地(山側から)土石流のような物が出てきて堆積(たいせき)した部分。出てきた土砂で少し高くなった時期に敷地川が向きを変えたあの谷から土砂が出てきた時期があった。1回だけでなく何回か繰り返して、こういう地形になった可能性も…」

 扇状地の斜面を流れて下ってきた土や石が、敷地川まで達し、川の向きが変化したとみられています。

静岡大学 防災総合センター 牛山素行教授:
「すごく広い目で見ると、ここは谷になっていますけど、谷の間にある平らな所というのは この川が最近数千年くらいの間に繰り返し土砂を運んできて形成した平らな土地。そういう場所だということは、川の周辺の平らな土地というのは、これからも川が自由に動いて大きく流れる時には、川自体の位置が変わることもある」

人工物の護岸があったり治水工事をしたとしても変わる?

画像6: なぜ同じ場所で決壊が

「人間がやる工事は中小河川だと20~30年に1回あるような洪水に対応できるような堤防を造る。
造った堤防を超えるような水は絶対出ないかと言うとそれはありえない。
100年に1度だとしても、それを超えるような洪水は起きる。
自然と我々がいろいろな形で折り合いをつけなければいけない」

雨量の情報をどうとらえれば

画像1: 雨量の情報をどうとらえれば

 今後私たちはどのように大雨に対する警戒をすればよいのでしょうか?

Q:雨量の情報はよく出てきますが、どうとらえれば?

画像2: 雨量の情報をどうとらえれば

静岡大学 防災総合センター 牛山素行教授:
「降水量の情報は結構 難しい指標。例えば24時間に200ミリ降った場合24時間200ミリで大災害につながり得るような所もあるし、24時間200ミリは年に何回も降るありふれた雨だという地域もある。天城山で24時間500ミリ降ったとしても そんなに珍しいことではない。
恐らく天城山周辺で さしたる災害も起きない。
仮に浜松や磐田の海岸近くで24時間500ミリ降ると、
これは最近 数十年間の最大値の倍近くになってしまう。
降水量の絶対値だけ見ても大変な雨かどうか分かりにくい」

 そこで、牛山教授が勧めるのが気象庁のwebサイトで見ることができる防災気象情報「キキクル」です。

画像3: 雨量の情報をどうとらえれば

 過去30年の災害発生状況や、雨量などのデータから、1キロ四方ごとの、危険度を見ることができます。

静岡大学 防災総合センター 牛山素行教授:
「地域ごとに量的にたくさん降ったということではなく、その地域にとって危ない雨が降っている所が表示される。
単に降水量だけを見るのではなく。その地域にとってのたくさんの雨が降って、洪水や土砂災害が起こりそうになっている所がどこなのかを表示する情報がありますので、(キキクルを)参考にしていただくのが重要」

画像4: 雨量の情報をどうとらえれば