ビッグモーター現役社員を取材…社長会見をどう見たか? 経営計画書には「部下の生殺与奪権与える」との記載も

 大きな波紋が広がっている中古車販売大手「ビッグモーター」による保険金不正請求問題。静岡県内でも不正が行われた疑いが指摘されていて、番組では独自に現役の社員から話を聞くことができました。

ビッグモーター現役社員:「社内でも何も通達がされていない状態での会見というか、我々もどう対応していいか分からない状態での会見だったので、感想というよりは率直に『今こんなことに会社がなっているのか』ということを思った」

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 番組の取材に答えたのは保険金の不正請求問題で揺れるビッグモーターの現役社員です。

会見後に新社長から社員全員にメール

画像: 会見後に新社長から社員全員にメール

「全社員様へ」
「本日の記者会見でも発表した通り、今後は新体制で再出発していきます」

 これは、26日付で新たに社長に就任することが発表されたビッグモーターの和泉伸二氏が、会見直後、前社長と社員全員に送ったメール。

「改革の第一弾としてまず全店のLINEの使用をすべてやめることにします。会社支給携帯に入っているLINEのアカウント削除をしてください」  会社の「改革の第一歩」として、「全店のLINEの使用を全て止める」というのです。

ビッグモーター現役社員:「私自身も会社支給の携帯の(LINEは)削除した」

Q.どういう意図があると思う?
A.「情報統制ももちろんあると思うが、それからもっとクローズな場で社内の連携を行うという意図があるようには感じる」

「幹部に部下の生殺与奪権を与える」

画像1: 「幹部に部下の生殺与奪権を与える」

 これは番組が独自で入手したビッグモーターの「経営計画書」。その中に記されていたのは驚きの内容でした。 「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」(ビッグモーター経営計画書より)

 さらにこんな記述も…。

「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください。会社と社長の思想は受け入れないし、仕事の能力もない。早く辞めてください」(ビッグモーター経営計画書より)

画像2: 「幹部に部下の生殺与奪権を与える」

 25日、問題発覚後、初めて会見に臨んだ兼重宏行社長。冒頭、経営トップである自分の責任と話し、深く頭を下げて謝罪しました。しかし、「不正が“組織ぐるみ”でなかったのか」という点について問われると…。 ビッグモーター 兼重宏行前社長:「報告書を受けて、本当…耳を疑った、こんなことまでやるのかと、がく然としました。その時初めて、本当に現場に入ってよく見とけば良かったなと。ゴルフボールで傷をつける、ゴルフを愛する人に対する冒とくですよ」

 あくまでも、現場がやったことだと強調しました。

現役社員「いびつな企業風土。本当に知らなかったと思う」

画像1: 現役社員「いびつな企業風土。本当に知らなかったと思う」

 この発言について現役社員は─

ビッグモーター現役社員:「知らなかったと社長が言っていたことについては、報告書でも指摘されていたように、いびつな企業風土というのは感じていたので、知らなかったというのは、私は本当のことだと感じた」

 不正が広がった背景にあるとされるのは、修理費用の高い目標値です。

ビッグモーター 兼重宏行前社長
Q.修理代金は事故の重大さによるもので、コントロールするものではないと思う。

A.「まさにおっしゃる通りで、平均粗利で目標を決める。それは不合理の極みでありまして、勘違いした本部長が、誰も文句言えなかったんでしょうね。こんな不合理の目標設定して、それを全く理解しないで押し付けて、という。それが今回、不正を起こす大きな原因にはなってると思います」

画像2: 現役社員「いびつな企業風土。本当に知らなかったと思う」

 会見では、前社長がとった“ある行動”についても質問が飛びました…。

 問題発覚直後、前社長が全店の店長にLINEで「全社員の2%に満たない一部の社員の不祥事でも、会社全体の組織ぐるみだと決めつけて報道している」とメディア批判ともとれるメッセージを送っています。このメッセージの意図について問われると…。

ビッグモーター 兼重宏行前社長:「そういうご指摘をいただいて、これはちょっと不適切だったなぁと、本当に強く反省をしております」

Q.なぜ、そういうメッセージを?
A.「とにかくみんなを元気にしようということで、営業現場はこんな不正はタッチしていないから、堂々とお客さんと接してくれと。元気づけるために、文書が本当に不適切だったのは否めません。申し訳ございません」

 このようなメッセージが、全員ではないものの、会社側から送られてきた事実について現役の社員は─

ビッグモーターの現役社員:「後半部分の社員を激励する、あそこは本心のように感じたし、私自身、今回不正請求の件をニュースで知ったような形になるので、寝耳に水というような。社員のほとんどが寝耳に水の状態だったと思うので」

浜松市の店舗でも37件に不適切行為の可能性

画像: 浜松市の店舗でも37件に不適切行為の可能性

 ビッグモーターによる不正請求問題をめぐっては、外部の弁護士からなる特別調査委員会が板金や塗装の作業に関する調査を実施。その結果、県内でも浜松市南区の浜松南店で修理された83件のうち4割を超える37件で不適切な行為が行われた可能性があることが分かりました。

板金部門の元社員「上からガミガミ言われる」

画像: 板金部門の元社員「上からガミガミ言われる」

 こうした「不正行為」にビッグモーターの板金部門で働いていた“元社員”が番組の取材に答えました。

ビッグモーター板金部門の元社員:「利益を出せとしか言われない。数字が出ていれば、特に何も言われないが、やっぱり赤字になったとか数字が出ていなければ、上からガミガミ言われる。工場長はオンラインで面談とか各店舗オンラインミーティングがあるので、そういった時はかなり言われていた。やはり切羽詰まってとか、目の前の利益を重視して、そういったことになってしまうというのはあったと思う」

 26日は国土交通省がビッグモーターへの聴取を行いました。車にわざと傷をつけて修理をしていたなどの実態が、道路運送車両法に違反するかどうかが焦点と見られ、国交省はさらなる調査が必要となれば立入検査も検討しています。