平安時代の史跡の池が何者かにより棚田状に変形、さらに堰の一部が破壊 不審者の情報も…静岡・湖西市
梅田航平記者:
「湖西市のおちばの里親水公園です。ここからおよそ1時間ほど登ったあちらの鉄塔付近に、今回手が加えられたという史跡があるということです」
愛知県との県境に位置し、2001年に国の史跡に指定された湖西市の大知波峠廃寺跡
10世紀中頃から11世紀末、平安時代半ばにつくられたというこの史跡で今、市が“ある問題”に頭を悩ませています。
湖西市 大須賀 広夢さん:
「こちらが改変された池になります。」
Qこれは今どのような状態になっている?
湖西市 大須賀 広夢さん:
「こちらの池は元々は一つの大きな池が目の前に存在していたが見てわかる通り高い土手が一本・二本築かれて合計三段の池に造成されている」
市の担当者に案内してもらった「遺構」。
かつては1つの池のような形だったといいますが、
8日時点では、まるで3段の「棚田」のように変形しています。
湖西市 大須賀 広夢:
「ここ最近何者かの手によって池の底の土が掘られてそれを土手状に盛ることで
結果としてこのような棚田状の地形になったと考えられる」
この事態を市が認識したのは去年12月15日のこと。
職員が別の要件で通りかかった時に池の“異変”に気が付きました。
湖西市 大須賀 広夢さん:
「我々が気付いた時に少し湿っていて、動物の手でここまで大規模に盛られることもないので、おそらく我々が発見する何日か前にこの造成をした人が行った、その数日後に我々がいったのでまだ土が乾燥しきる前の状態で見つかった」
事態の発覚後、市は注意を呼び掛ける看板を設置。
その翌日、文化財保護法に基づく毀損届を文化庁に提出しました。
ところが…
さらに 破壊された形跡が見つかる
湖西市 大須賀 広夢さん:
「今年2月8日に再度こちらの大知波峠廃寺跡に訪れたところ、石垣状に石を盛って堰をつくった遺構があったが、その堰の一部が破壊されることが起きた」
これ以上の被害を食い止めようと、市は2月、警察に相談。
今後も改変が続くようであれば被害届の提出も検討しているといいます。
市民も複雑な心境です。
湖西市民 40代:
「残念/国指定のところなので、いじられてしまうと大事なものがなくなっていく悲しさがある」
湖西市民 20代:
「以前来た時はこのように池が完全に乾いた状態ではなくて、かなり水位がしっかりあった。水草、カエルの卵もあったので、非常に自然豊な場所だと感じた。ちょっと変わっているのを見てびっくりしている」
一体だれが、どんな目的で?
実は被害が起きたこの場所は、ハイキングコースとしても人気で、公園の入り口から山道を徒歩で登ってくる必要があります。
つまり、この改変は、重機ではなく、人力で造成された可能性が高いと見られているのです。
市は“ある不審な人物”の存在を把握しているといいます。
湖西市はある不審人物の存在を把握
湖西市 大須賀 広夢さん:
「スコップを持って山から降りてくる男の目撃情報がある。ただそれだけでは犯人とは断定できないが、おそらくそういったスコップなりの道具を持ち運んで、こちらで作業をしていることが考えられる。また日中、昼ごろまでは非常に多くのハイカーでこの場所賑わうが、夕方以降は人の数がかなり減る。そういった時間にこういった改変行為が行われていると予想している」
静岡県によりますと、以前から遺構の改変行為があった可能性があり、2015年には文化財のパトロールを実施する団体から報告を受けたといいます。
県は湖西市に対し「遺構の現地確認」を求める連絡をしましたが、市は改変は起きていないと判断。
県に対し「経過観察を続ける」と回答しました。
そんなさなかに起きた遺構の大規模改変。
市は今後原状回復を行う方針ですが、電気も通っていない場所のため監視体制にも苦労しているといいます。
湖西市 大須賀 広夢さん:
「かなり山奥にありますので毎日登ってパトロールするのも中々大変な労力になる、防犯カメラの設置も中々難しい状況。そのような中で管理が難しい場所を狙って行われたことは非常に残念」