ビル火災で焼け跡から遺体…ビルに入った消防士か 専門家「逃げ遅れなく入る必要あったのか検証必要」 静岡市

 13日午後10時ごろ、静岡市葵区呉服町で、ビルの3階にある飲食店から火が出ました。周囲には規制線が張られ、あたりは騒然とした雰囲気に包まれました。火はおよそ5時間後に消し止められましたが、3階がほぼ全焼し、焼け跡から1人の遺体が見つかりました。

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 静岡市消防局によると、消火活動のため建物に入った駿河消防署の37歳の消防士の男性と連絡が取れておらず、警察が身元の確認を急いでいます。

6年前に消防設備の不備指摘…改善の報告受けておらず

梅田航平記者(15日午後1時ごろ):「火災の鎮火から1日半ほどが経ったが、周辺はいまだ焦げくさいにおいが立ち込めている。きのうに引き続き警察・消防などによる実況見分が進められている」

画像1: 6年前に消防設備の不備指摘…改善の報告受けておらず

 火事となったこのビル、6年前に消防による立ち入り検査で消防設備の不備が指摘されていましたが、消防はこれまでに改善の報告を受けていなかったということです。この不備が直接的に火事につながったかどうかは調査中ですが、6年もの間、不備が放置された形となったことについて、静岡市消防局は、14日の会見でこう説明しました。

画像2: 6年前に消防設備の不備指摘…改善の報告受けておらず

静岡市消防局 秋山義隆消防局長:「こちらの不備については平成28年(2016年)9月26日に立ち入り検査を実施している。その際に5つの不備事項があったので所有者等に通知を渡して改善を求めた」

Q.(その後)改善されたかどうかの確認は?

A.「現在、改善はされていなかったということだが、実は今回の火災で(ビルの)所有者が変更されたことわかった。したがって平成28年当時の違反については、改善されないまま所有者が変更されたという状況で解釈している」

消防「立ち入り検査を実施する」

 消防によると、2016年の立ち入り検査では階段部分の感知器不足など、5つの不備事項の改善を求めました。その後、今年2月にビルの所有者が変更となり、今の状況については、これから調査を行うとしています。

静岡市消防局 秋山義隆消防局長:「火災調査が終わったら、新しい所有者に立ち会っていただいて立ち入り検査を実施する予定。過去の違反ということであれば、また申し上げますけども、今の所有者が違反をしているかどうかはわかっていない」

静岡市消防局 おととし3人が殉職

画像: 静岡市消防局 おととし3人が殉職

 いまだに遺体の身元はわかっていない中、思い起こされるのは、おととし吉田町で起きた工場火災。この火災では、静岡市消防局の隊員3人と警察官1人が死亡しています。

静岡市 田辺信宏市長:「令和2年に殉職の火災を起こしているので、安全管理体制・再訓練、それを努めてきた中でこのような事故が起きてしまったことをとても重く受け止めている」

不明の隊員…ロープつけずに3人でビル内に 

 消防によると、行方不明になった消防士は、出火から1時間後、隊員2人と消火活動のため現場に入りました。その際、屋内活動の際の原則である
隊員同士を結ぶロープを着用せずに活動したといいます。

静岡市消防局 伴野泰造警防部長 :「通常、屋内に進入の場合はロープ、進入用の加工ロープで各隊員をつないで進入していく手法をとる。今回はある程度床面付近で視界が確保できていたと解釈されるため、(床の消防)ホースをロープの代用として退出に利用していた」

 しかし、隊員らが作業を終え、3階から退出した際には、男性消防士の姿はありませんでした。

静岡市消防局 伴野泰造警防部長
「先頭の隊員(不明の隊員)については、熱画像装置を手に握りながら、2人目が消防ホースを持って進入、3人目が後ろから追随する形で検索に入っている。退出の合図は隊長、そして進入していた3人で共通認識をしていた。退出にあたっては進入とは逆の順番で、一番最後に入ってきた隊員が先頭になって退出したところで、最後尾についているはずだった隊員の行方がわからない、ついてこないことを確認した」

画像: 不明の隊員…ロープつけずに3人でビル内に

 消防によると、現場に煙は充満していたものの、視界が確保されていたため、ロープではなく床の消防ホースをたどって進入と退出をする手法を選択したといいます。

静岡市消防局 伴野泰造警防部長
「火災現場なので、視界が十分だったとは言えないが、ロープの代わりにホースを代用することが可能だと判断できたと理解している。現時点では活動に対しては問題はなかったと理解している」

専門家「逃げ遅れがいないのに中に入る必要性があったのか、検証が必要」

 果たして、この手法は正かったのか。元東京消防庁・麻布署長で、20年以上現場を指揮した防災の専門家は。

画像: 専門家「逃げ遅れがいないのに中に入る必要性があったのか、検証が必要」

元東京消防庁 麻布消防署 坂口隆夫元署長
「延焼中の火災で、中に進入する場合は、基本的にはマニュアルでもロープ・命綱を着装して、それで投光器等の照明器具も保持して進入することになっている。出火から1時間経って、その中へ進入するわけですから、やはり危険性というものは伴う。原則からいくと、その3名の隊員が命綱をつけて外に行くと隊長がしっかりそれを保持して、連携活動をするというのが基本なのかなという気がする。屋内進入というのは、まず一つは逃げ遅れが中にいるということ。これがまず大前提になるわけなんです。今回の場合は、早めに逃げ遅れ者がいないという情報が入っておりますので、果たして出火から1時間経って隊員が中に入る必要があったのかどうか、この辺は私はしっかりと検証する必要があるのかなと思います」