クマはもうすぐ冬眠するの? 「いえいえ、エサがあれば冬眠しません」 住宅に迫るクマ…静岡県内の対策は
住宅近くでも目撃証言…今年度146件
片寄翔太アナウンサー:「静岡市街地から車で20分ほどの北沼上地区です。近隣住民の方によりますと、こちらではこの家の真横のこの辺りでクマが出没したということです」
全国的に人里での出没が相次ぎ、県内でも各地で目撃されているクマ。11月27日、先週木曜日、静岡市葵区北沼上では午後9時すぎに、クマと見られる動物1頭が目撃されました。警察には「山の斜面にクマらしい動物がいた。山へ逃げていった」と通報が入りました。
静岡市によりますと、住民からは「外で動物の鳴き声が聞こえ、ドアを開けたところ驚いて逃げていった」と連絡があり、目撃場所の近くでは柿の木に複数の爪痕が確認されたといいます。クマを引き寄せる柿の木。近隣住民は不安を抱えて生活しています。
近隣住民:「クマが欲しがるものがそばにあるのが困る。(実際にクマを)見たわけではないが、見た人もいるから不安」
Q.今回出没したクマは逃げたが、近くにいるかもしれないというのは?
A.「いやだね、すごくいや」
静岡市では、11月23日に葵区の常葉大学静岡瀬名キャンパスの近くで、クマとみられる動物が目撃されていて、1日朝にも清水区広瀬で子グマ1頭が目撃されています。4月から11月27日までの県内のクマの目撃件数は146件。すでに昨年度の目撃件数に迫る勢いとなるなか、県も本格的にクマ対策をスタートさせました。
緊急銃猟の訓練も 講師「肺に穴が開いても走る」
藤枝市の県警察学校で行われたクマの「緊急銃猟」の訓練。緊急銃猟とは、クマなどが人の生活圏に侵入し危害の恐れが大きい場合に、自治体の判断でハンターによる捕獲を委託できる制度です。危害防止に緊急が必要なこと、銃猟以外では捕獲が困難なことなど4つの条件をすべてクリアしていることが条件で、県内ではこれまで緊急銃猟が行われたことはありません。
そのため、訓練前には…。
講師:「肺に穴が開いても走ったりするし、心臓を打ち抜いてもなかなかその場ですぐに止まったりしない場合があります」
行われているのは、ハンター目線でのクマの習性などを共有する講義。講師は、交通課に勤務しながら、現役でハンターも行っている警察官が務めました。
100人以上の関係者が参加した講習会。ところが、実際にクマと向き合った経験があるハンターや県職員は少ないのが実態です。
静岡県警生活保安課 山内兼光管理官:「訓練だとスムーズにことをなすことができるが、実際の現場となるといろいろな要件があると思う。実際に避難を求めるとしても避難できない住民もいると思うので、どういうところまで気をつかっていくかということが課題になると思う」
専門家「エサがあれば冬眠しない」
静岡でも本格化し始めたクマ対策。一般的にクマは寒さが本格化する12月には冬眠に入るといわれていますが、野生動物の専門家は警鐘を鳴らします。
森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「冬眠といってもクマの場合はヘビやカエルのように(寒さで)動けなくなる冬眠ではなく、むしろ12月中は山里でクマが好みそうなエサがある環境では注意していただくことが必要」
大橋さんによると、クマはエサがなくなることによって冬眠をするため、まだ柿などのエサがとれる場合は冬眠を行わず、12月下旬ごろまでは活動し続けるのではないかといいます。また、人の生活圏でエサを見つけたクマには、ある特徴も。
森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「クマのように学習能力の高い動物は、ある年に山里に出て柿や栗に味を占めると、次の年も(山に他の)エサがあっても出てきてしまうということが起こりえる」
こちらは去年、静岡市清水区の養蜂場で撮影された防犯カメラの映像。1頭のクマが画面左側の蜂箱の様子を見ています。ただ、目の前には電気柵が張られていて中に近づくことはできません。すると、その3日後には、子どもと見られる3頭の子グマが同じ場所に。3日前に現れたとみられる成獣のクマも現れ、周りのポールを破壊しました。
電気柵のおかげでこの日は蜂箱への被害はなかったそうですが、クマのエサに対する執着性がうかがえます。
森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「動物用の飼料や犬のペットフード、そうしたにおいのするもの、あるいは残飯やごみの処理も屋外にあればクマがついてしまった事例もあるので、そうしたものも注意していただく必要があると思う」
県は「クマ出没マップ」を随時更新していますが、大橋さんはクマの数と生息エリアが広がってきていると分析しています。そうした中、気を付けるべきこととは。
森林・林業研究センター森林育成科 大橋正孝科長:「クマと出会わないようにすることが大事。目撃があった近くでは行動はなるべく昼間にする。クマは活発に行動するのが朝と夕方が一番活発に動くといわれているし、そういう時間にあまり出歩かないとか、エサが目的で出ていることが分かれば、それを取り除くとか」

