袴田ひで子さん 93歳パリへ行く(4) フランスの中高生らと交流 質問攻めに 「社会の目は?」「報道のほとんどが巖を犯人扱い」【袴田事件】
袴田ひで子さん(93)のフランス滞在は、7月1日で3日目を迎え、パリの雰囲気にも随分慣れてきたようだ。朝はホテルの近くを散歩。リラックスした表情だった。前日はマクロン仏大統領に「日本の死刑制度廃止に協力してほしい」と訴えたひで子さん。大統領と直接言葉を交わした感想を聞くと「若くてハンサムだった…ハハハハハ」と上機嫌。
きょうは一転、フランスの中高生を中心とする若者との交流会。弟の袴田巖さん(90)の身に起きたえん罪事件の経緯や、巖さんが死刑囚だったときの様子を丁寧に説明した。そして「死刑ほど残酷なことはありません。私が面会に行っても巖に拒否されました。房から出ると処刑されると思う恐怖心からでした」と当時の実態を話した。
中高生からは質問が相次いだ。「巖さんはなぜ容疑者になったのか?」と聞かれると、「清水警察署の初動捜査がずさんだったからだ」ときっぱり。「当時ひで子さんと巖さんに対する社会の目は?」という質問には、「新聞報道のほとんどが、巖が犯人だという扱い。私は世間と距離を置いて生活していた。同窓会にも行かないし、盆も正月もなかった」と振り返った。そして、「こんなえん罪事件に巻き込まれて、今の日本の警察や司法を信用できるか」と問いには、「個人攻撃をするつもりはない。警察官や検察官を恨んだこともない。ただ法務省は、日本の法律で改正すべきところはしっかり改正してほしい」と強調した。さらに、「長い闘いの途中、あきらめた方がいいと言われたことは」と問われ、「50年闘ってダメなら100年やると言ってきた。無実の人間を処刑なんかされてたまるかという思いだった」と言い切った。
熱心に聞き入っていた中高生らの中には、涙を浮かべる姿もあった。終了後、大勢がひで子さんの回りに集まり、握手をしたり写真を撮ったりしていた。ひで子さんは「子どもは大人と違ってどんどん質問してくるね」と感心したようだった。一日の役目を果たしたひで子さんは、「お腹がすいた。和食が食べたい」と早くも日本が恋しくなったのか、パリ中心地にあるラーメン店に直行。醤油ラーメンをあっという間に平らげ、「日本のラーメンと味が変わらんね」と満足げ。そして「巖に土産を買わにゃあいかん」と、ボンマルシェへと繰り出した。ひで子さん、あす7月2日は、パリで1日を過ごす最後の日。死刑廃止を訴えるNGO団体主催イベントのクロージングセレモニーに出席する予定。
(峰島孝斉)