【リニア新幹線】静岡県が「田代ダム案」についてJR東海と東京電力との協議開始を了承
静岡県の文書:
「貴社が了解を得たいとする前提条件について、各会員が了解する旨、決定されましたので通知します」
先週金曜、県がJR東海に対して送った文書。
そこに書かれていたのは、リニア問題をめぐる大きな争点の1つ「田代ダム案」について…
JR東海の田代ダム案と水利権
鮮やかなエメラルドグリーンに染まる湖。
大井川の最も上流部にある田代ダムは、東京電力のグループ会社が管理し、大井川から水を取り、使うことのできる「水利権」が認められています。
このダムでは、大井川から毎秒4.99tの水を取り、発電のために山梨県側へと送っています。
リニア工事について県が求めている、水の「全量戻し」。
県内では、トンネル工事の一定期間、300万~500万トンの水が山梨県側に流れ出ることが見込まれています。
田代ダム案とは、工事で県外へ流れ出た水と同じ量だけ、ダムで取る水の量を減らすことで大井川への影響をなくそうというものです。
3月JR東海は、この案に関する協議を東京電力側と始める前提条件として3つの内容についての理解を、流域の市町などへ求めました。
JR東海 中央新幹線推進本部・澤田尚夫副本部長 3月27日:
「この3つの条件は東電から言われている条件。向こうからこういうことを確認してほしい、こういうことで理解してほしいと言われている」
田代ダム案について、東電側から示されたという条件。
それは「トンネル工事中のおよそ10カ月間に限る」こと。
「県内でのボーリング調査に伴う水の流出への適用も含む」こと。
そして「東電側の水利権に影響を与えない」ことの3つです。
利水者の多くは、これらの条件に理解を示し、JR東海へ、できるだけ早い協議開始を求めていましたが…
島田市・染谷絹代市長 3月27日:
「田代ダム取水抑制案については、ほぼ全員が了解した。少し待ったといったのは県だけだった。(県は文書を)できるだけ早くまとめて、返して、具体的な議論に入れるといい」
利水者側の意向と異なり、態度を保留した県。
その背景にあったのが「水利権」です。
川勝知事 先月28日:
「水利権と関係ないと言われても、それが本当に関係ないかどうかは、JR東海が関係ないというのとは別にして議論するべきもの。軽々に水利権と関係ないというには、少し詰めなくてはならないと認識している。」
県は、水利権に関する文言に難色を示し、改めて利水者の意見を取りまとめ、JR東海に修正案を示すとしていました。
県が送った修正案
そして、協議会の開催から2週間余りが経った先週、県がJR東海に文書を送付。
そこには、利水者から条件への合意が得られたとしたうえで、水利権に関わる文言などの修正案が示されていました。
3条件の一つ
「東京電力リニューアブルパワーの水利権には影響を与えないこと」
水利権について「影響を与えない」と言い切っていた記述は、「ダム案を根拠に水利権に関わる主張をしない」と修正。
その上で、JR東海が示す「およそ10カ月」という
県外へ水が流れ出る期間が延びるなど、「想定を超える」事態が起きた場合には、水利権について協議を行うとしています。
3月県の姿勢に苦言を呈していた島田市の染谷市長は、今回の修正案について…
島田市・染谷絹代市長・午前9時半:
「あれは流域の10の市町、また土地改良区など、利水関係協議会のメンバーとの細かなやり取りをして作り上げたものだから、流域は納得して合意して文書を作っている。ですから、JR東海に出した答えは、流域の思いそのものです」