川勝知事の不信任案 「造反は想定外」も多数派工作激化
19日午前11時、県議会第2会派で川勝知事を支える「ふじのくに県民クラブ」の議員総会が開かれました。
最大会派・自民改革会議が、来週24日に開催される臨時議会で、知事不信任案を提出することを正式決定し、その対応を協議するためです。
不信任案の可決には、4分の3以上の賛成、県議67人中51人の賛成が必要です。逆に言えば、17人以上が反対すれば否決となります。
つまり、ふじのくに県民クラブの所属県議17人がまとまって反対すれば、不信任案は否決できるのです。
可決か、否決か。焦点は、ふじのくに県民クラブから造反者が出るか出ないかです。
関係者によると、自民サイドは様々なルートを使って、ふじのくに県民クラブ所属の県議に不信任案賛成に回るよう働きかけを行っていて、会派内には一時〝疑心暗鬼〟のような空気も広がったといいます。
議員総会後、ふじのくに県民クラブの佐野会長は…。
ふじのくに県民クラブ 佐野愛子会長:
「(Q議員総会の中では知事に対する不信任案に対してどのような協議が?)会が全員一丸となって否決するということを確認ました」
「(Q一丸となって団結できるかということについてはどのように考えているか?)それはもう確認し合いましたので、大丈夫だと確信しています。やはり知事は謝って、これから政務を行わない、すべて撤回を致しました。ですので、やはりたくさんこれから課題がありますので、県政に続けて頑張っていただきたい。辞めるに値しないと」
ふじのくに県民クラブ 中沢通訓副会長:
「(Q皆さんの方に不信任に賛成したい側の方から働きかけというのはこれまであったのか、なかったのか?)本人じゃなくても、その人からの近い人が普段連絡をよこさない人が(電話を)かけてきたとか、そういうのはあったみたいですね。うちの会派はみんな自由に発言してますし、だけど、しっかりと結束しますよと言うことで衆議一決しています。他の会派では発言すら出来ないというね。雰囲気だというからどちらがいいのかわかりませんがね。私たちはきちっと対応してきます」
会派の17人がひとりでも欠けると、可決の可能性が出てくるためこんな心配も…。
ふじのくに県民クラブ 佐野愛子会長:
「(Q欠席でもマイナスだと思いますけれども、何かあの交通事故とか電車の遅延とか)そうですね」
ふじのくに県民クラブ 中沢通訓副会長:
「なるべく公共機関で、個人の車で来るとね。何かしらのアクシデントの時には、それは完全な遅刻不良になっちゃいますからね。なるべくここに気をつけてくださいねということは言っています」
「(Q前泊は?する人もいます」
「(Q仮に造反した方が出た場合の、いわゆる処罰は?)全く考えておりません。想定外です」
執行部が会派の結束に自信を見せた背景のひとつには、ふじのくに県民クラブに強い影響力を持つ労働組合団体・連合静岡が次のような姿勢を示したことがあります。
連合静岡 中西清文会長(おととい):
「(Q(不信任案について推薦議員に対してはどういった対応を求める?)今、連合静岡として、それに対して明確に、どういう対応しなさいというのは、基本的には推薦議員に対して伝えておりません。一つ言えるのは、うちの推薦議員はふじのくに県民クラブに所属しておりますので、当然会派としての意思統一は図られていると思っておりますので、会派の意思統一については尊重し、しっかり守ってもらいたいということだと思います」
「会派としての意思を統一し、それを守ってほしい」という中西会長の言葉は事実上「結束して否決を」、「造反は許さない」というメッセージを送ったとも言えるのです。
ふじのくに県民クラブが議員総会を開いていた同じ時間。県内の花の生産者らの訪問を受けていた川勝知事。11月22日の「いい夫婦の日」にちなんで、花束を贈られました。
川勝知事:
「(Qこれ奥様に?)もちろんです。夫婦の日ですから。せっかくいただいたものですから、あの一緒に楽しみたいと思っております。もうめちゃくちゃ嬉しいと思いますよ。それはわかっております」
そもそも不信任案提出を招いたのは、御殿場市を揶揄したと批判された知事の「コシヒカリ発言」が発端です。
川勝知事(先月23日):
「人口は8万強しかないところ。その市長をやっていた人物か。あちらはコシヒカリしかない。だから飯だけ食って、それで農業だと思っている。あちらは観光しかありません」
当初「誤解」を強調していた知事ですが、世論の反発が強まり、紆余曲折の末、全面的な謝罪に追い込まれました。
川勝知事(12日):
「あの発言はまことに無礼極まりないものでございました。それゆえ、これを全部撤回して、特に御殿場の皆様に対して、衷心より深くお詫びを申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」
静岡県議会に不信任案が提出されたことは過去1回しかありません。1973年に当時の竹山知事に出されて以来、48年ぶりです。そのときは少数会派の社会党などが不信任案を提出、大差で否決されました。
自民党会派が不信任案を提出するのは、県政史上初めてのことです。
自民改革会議 野崎正蔵代表(12日):
「不信任決議案を提出したいと考えている」
今回、知事の責任追及の前面に立っているのが、自民党県連幹事長で、県議会最大会派・自民改革会議の代表を兼務する野崎正蔵県議です。
自民改革会議 野崎正蔵代表:
「我々は御殿場市民を県民と思っている。もう堪忍袋の緒が切れたということです。嘘で塗り固められた静岡県政がこのままでいいのか」
「余計火を消すどころか、火に油を注ぎだったような会見だったような気もする。撤回したところで時計は戻らないじゃないですか」
今回の「コシヒカリ政局」の最大のキーマンである、自民改革会議の野崎代表が19日午後、静岡朝日テレビの単独インタビューに答えました。
不信任案を出す大義、そして成立の勝算はあるのか、気になる疑問について野崎代表を直撃しました。
自民改革会議 野崎正蔵代表
「(Q失政ではなく、失言で不信任するのは行き過ぎではないかという意見もあるが?)今回の不信任案に至る経過は、端を発したのが8万・80万というような発言もあったが、我々は総合計画の見直しも求めている中で、この川勝県政そのものがこの静岡県に活力と発展を見出してきたのかという点をすごく疑問を持っている。特に知事の肝入り事業についてはブレーキがかからないほど進むが、本当に皆さんにとって大切な生活関連の整備であったりとか、そういった事柄についてはあまり関心がないようにずっと感じている。そうしたことも含めて、また危機管理能力も含めて、我々は大きなそれが問題だと思っているので、発端となったのはその発言ではあるが、我々は常々そこに大きな問題があるという意識を持っている」
野崎代表は、他にも世界文化遺産センターや浜松新野球場、東静岡の「文化の拠点」整備の問題点や、県内経済の停滞などを挙げ、不信任の理由は「失言」だけではないと語りました。
自民改革会議 野崎正蔵代表
「(Q不信任は5か月前の県民の投票意思を覆すことにもなると思うんですけれども。不信任案提出にあたって6月の知事選における県民の民意についてはどう考えるか?)知事がこの4選を果たしてから、明らかにさまざまなところで問題的な発言をしている。熱海の土石流の課題に関しても、まるで自分事ではないように、自分のところに情報があがってこなかったというなお話もされているということでなので。4選してからの知事というのは、前からも問題発言等もあったが、さらに拍車がかかっているのではないかなと言う感じがしている」
「(Q不信任を本気で通すことを考えているとすると、ふじのくに県民クラブからの造反が不可欠になるが、どんな働きかけをしているのか。また秘策があるのか?)それについては、この場面で申し上げることは控えさせていただきたいと思います。我々はこれが可決するように精一杯努力をしていくということでございます」
「(Q今後、知事に辞めてもらう以上、川勝知事に代わる有力な候補者を準備しないと、県民に対して無責任になるが、現状で意中の候補者はいるか?今、実際にそのお名前を申し上げることはできませんけれども、この静岡県庁というのはやわな県庁ではないと思います。大変能力の高い県庁であると思っておりますので、そこをしっかりと指導していける立派なリーダーを我々も考えていきたいと思います」
「(Q今年、選挙がたくさんありましたけれども、また年末年始に知事選や県議選を行うことに県民の理解は得られると思うか?」賛否いろいろあろうかと思います。あるかと思いますけれども、色んな決め事の中でルールに沿って、こうした選挙というものは行われるわけでありまして、ひとつの民主主義の手続きだとも考えております」
「(Qリニア工事反対の知事を変えたいというのが背景の1つとしてあるのではないかという声もある。不信任の動きとリニア問題というのは関係しているか?)それはこれまでの様々な選挙戦でも、我が会派にも当該地域の県議会議員もおりますので、その地域住民の意思を無視して、そうしたことを進めるということは考えにくいというふうに思っております」