教授に聞く「静岡市の予算」…「注目は投資的な経費が23%増」「政策的判断を要するものは次の市長に委ねてもよかったのでは」
静岡市 「5大重点政策」に約150億円 専門家「経済の活性化につながるかが重要」
20日の静岡市議会2月定例会で、新年度予算について、こう話した田辺信宏市長。一般会計の総額は3517億円で、「5大重点政策」と位置付ける大型事業には149億4000万円が計上されています。
田辺市政で過去最大となった新年度予算案。専門家は…。
静岡大学 井柳美紀教授:「注目点としては、投資的な経費といわれるところが23%増で、かなり伸びていたということで、その中には台風被害の災害復旧の予算も含まれていたが、やはり注目すべき点としては、ハコモノ関連の予算が多く含まれていたことかなと思う。やはり予算としては厳しい現状があるのかなと思ってます。ハコモノそのものが悪いというよりは、ハコモノが経済の活性化につながっているのかどうかというあたりが重要。田辺市長もハコモノは経済活性化のために重要なんだと言うが、そういったところに結びついているかどうかというところが、やっぱり重要かと思っている」
ハコモノ関連の予算には清水区の「海洋・地球総合ミュージアム」の建設費に39億8000万円、新しいサッカースタジアムの建設に向けた調査費に3100万円、葵区の「歴史博物館」の管理運営費に3億9900万円などが含まれています。また、JR東静岡駅北口の市が所有する土地にプロスポーツの試合やコンサートなどが開催できるアリーナを整備する計画の調査費にもおよそ3100万円を充てています。
アリーナ建設計画の調査費計上
林輝彦アナウンサー:「すぐ後ろがJR東静岡駅です。その駅の目の前にある東静岡駅北口公園と向こう側の土地も含めたこのエリアに、静岡市はアリーナを建設する計画を立てています。かなり広々とした土地です」
市が想定しているのは、スポーツ観戦で5000席以上、音楽イベントで8000席から1万席を確保できる施設です。建設費はおよそ100億円から200億円で、運営費は年間で2億円から3億円程度とされています。
このアリーナについて、田辺市長は以前…。
静岡市 田辺信宏市長(去年3月):「若者の流出をなんとか…、流れを変えていきたいと思っている。そういった時に、若い方たちからよく出てきたのが、私たちが見たいコンサートが静岡には来ない、そういう文化機能、エンターテインメント機能が静岡は弱いから、どうしても東京の大学に行くんだ、あるいは県外に行ってしまうという、そういう声も多かった」
このように話し、若者の流出の歯止めになるとしていました。整備予定地の近くに住む人は…。
静岡市民:「交通機関と会場が近いのは結構ありがたい。グッズの販売で長蛇の列になってしまったり、終演後に人が溜まってしまったりして、地域の人の迷惑になるから早く退散してくださいとよく言われるので、この辺はマンションや住宅地が多いので、そういった問題がなければ大丈夫だと思う」
静岡市民:「人が増えて賑やかになるのはいいのかもしれないが、心配なのはマンションの方が騒音で困る人も出てくるんじゃないかと思う」
このアリーナ建設をめぐって、市が検討しているのが、官民連携による誘致です。先週開かれた検討委員会で、市は3つの案を提示しました。
1つめは、民間事業者に建設と運営を任せる「民設民営型」。
2つめが、民間事業者が建設したのちに、施設を市に寄付。その民間事業者が指定管理者などとなって運営する「負担付寄付型」。
3つめが、市と民間事業者の契約に基づく「PFI型」です。
専門家「政策的判断を要するものは次の市長に委ねてもよかったのでは」
これについて、専門家は…。
静岡大学 井柳美紀教授:「アリーナについては民間誘致ということをうたっているが、市の負担もあるというところで、どれぐらいの財政負担になるのかっていうことは、今後、明らかにしていく必要がありますけれども、例えば田辺市長がアリーナっていうのは、若者流出の歯止めになるという言い方をしているが、そういった目的に本当に資するものなのかどうか、まずそこもいろいろ考えていく必要があるかなと」
4月の市長選には出馬しない意向を表明している田辺市長。ハコモノ事業を含め、今回編成された予算の執行責任は次の市長が負うことになります。
静岡大学 井柳美紀教授:「今回大型のハコモノが作られるということで、次期市長の政策の選択の幅といったものは、狭められているって現状はあるのかなと思う。骨格予算という言葉がありますけれども、選挙を前にして義務的な人件費とか、そういったものの予算だけを組んで、政策的な判断を要するものは、次の市長に委ねるというような予算の組み方、そういった予算の編成の仕方っていうものもあっても、よかったのかなという気はする」