【リニア】「田代ダム案」めぐりJR東海と静岡県が激しい議論 27日夜には大井川流域市町に説明へ
JR東海 中央新幹線静岡工事事務所 永長隆昭所長(20日):「前回の専門部会では、県境から約100mの区間を目安に慎重に削孔を進めると説明したが、その点について静岡県から意見をいただいた。今回、いただいた意見を配慮して坑口から500m以降、県境から約300m以内でこちらで慎重に管理することにした」
JR東海が山梨県内で開始した“ボーリング調査”。これまでJR東海は、静岡県との県境100mまで調査を行う意向を示していましたが、静岡県側の懸念を考慮し、300mまで距離を広げることを発表しました。また発生した湧水の量が基準を上回ったまま減少しなかった場合、調査を中断する考えも示しました。いわばJR東海が県に対し譲歩した形です。
大井川の水問題に対し、不安の解消という前向きな発表があった一方で、白熱した議論が交わされたのが、いわゆる「田代ダム案」です。
田代ダムは東京電力のグループ会社が管理していて、発電のために大井川から水を取り、山梨県へと送っています。それをリニアの工事期間中、田代ダムでの取水量を減らすことで、大井川の水量を補おうという案です。
丸井敦尚委員:「大井川の流域の市町の皆様方が同意されれば、東京電力RPは取水抑制に応じてくれる行動をとると考えていいのか? それともまだその先に協議が必要なのか?」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤井尚夫副本部長:「関係者が分かりました。こういう前提ですねと言っていただければ、東電はB案(田代ダム案)の成立に向けて、即成立するということではないが、協議に入っていただけると認識している」
白熱する議論
出席した委員と説明にあたるJR東海。序盤はお互い冷静に対応していましたが…。
塩坂邦雄委員:「工事に伴って湧水が出てきたと。それによって表流水がどの程度影響があるかと考えているのか?」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤井尚夫副本部長:「なにか時間が2年ぐらい戻ったような気がするが、トンネル工事中にどれぐらいの水が出てきて、表流水がどのぐらい減るかというのは、専門部会でさんざんやらせていただいて、それでステップごとにどれぐらい減るか、それからどれぐらい水が戻せるかという話をしていて、きょうもその時の議論がベースになっている。それをもう一度説明しなさいということであれば、説明せざるを得ないが、もう1回工事中にどのぐらい水が減って、どれぐらいの水がという話になると、2年ぐらい前にここで話をしたことをもう一度しろという理解でいいのか?」
塩坂邦雄委員:「全く違います。私は過去に戻っていません。田代ダムの水を代替案で使おうとしている。ところが今は表流水だけ検討されているので、工事に伴って地下水が出てしまったら、田代ダムに供給される表流水が無くなるだろう。そうするとこの案そのものが成り立たないと言っている」
激しい応酬も
さらに終盤には、委員長とJR東海と激しい応酬も…。
森下祐一部会長:「田代ダム案に全力を傾けていただいて、専門部会での審議を少しでも先に進めていくことが一番重要なこと。そのためには、今まで私の印象だが、当事者としての必死さがあまり感じられなかった」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤井尚夫副本部長:「別にさぼっているわけではなくて、向こう(東電)も命がけで水利権を守られているので、そこはしっかり協議していきたい」
森下祐一部会長:「去年4月26日に提案された時点で、ある程度形の見えるものを作っていたという期待があっただけに、これからですよと言われると…」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤井尚夫副本部長:「そこはいろんな経過をたどっていただきたいが、(去年)4月に提案して以降、「じゃあ水利権どうなんだ」とか「法的な問題はどうなんだ」という話があって、水利権の話はいまだに言われる方がいる。これは別に、我々が遅らせたくて遅らせているわけではなくて、そういう声がずっと出続けているので、まとまるものもまとまらない。協議のテーブルにのっていただけない。そこは分かってほしい」
森下祐一部会長:「そこは分かるからこそ、そういうことはきちっと了解した後で出すのが普通だと思っていたので」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤井尚夫副本部長:「であれば、この場で『水利権の問題ないですよね』それから『工事中に限った話でいいですよね』とお答えしていただけますか? 無理ですよね、きっと」
森下祐一部会長:「その問題は…」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤井尚夫副本部長:「そこが問題なんですよ」
森下祐一部会長:「その問題は、前回東京電力RPの確約を取ってくださいと言った時には
そのような条件は付いてなかった」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤井尚夫副本部長:「何を言っているのか! 前回の議事録を見てください、私は言いました。こういう条件でいきますよと言った」
森副知事「距離は延びたがリスクが払しょくされたわけではない」
具体的な懸念事項について話し合う専門部会。水問題はどうなるのか? 森副知事は…。
部会終了後 森貴志副知事:「(ボーリングについて)距離的に延びたが、その分(水が流出するリスク)が払しょくされたわけではないので、その点については我々の懸念は残ったまま。水の流出の懸念がある以上は、その点についてしっかりした回答がない以上、掘削することを求めない。その点については会議の前も後も払しょくされたわけではない」
JR東海はこの後、27日開かれる県や大井川流域の市や町が集まる協議会で田代ダム案について説明し、東京電力側との協議開始の了解を得たい考えです。