【リニア】JR東海金子社長が最後の会見…心残りは『静岡工区』 川勝知事に直談判も…新社長には「全力で誠心誠意取り組んで」

JR東海 金子慎社長(24日 都内):「リニアの問題は、私どもの会社にとっても大切な問題であるし、沿線のご期待、各方面からのご期待は、大変大きなものがある。静岡工区の着手についてしっかり対応しおうと取り組んできたが、現在までの所は、この着手の見通しを立てることができなかったということで、大変心残りに思っている」

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 先週金曜、都内で会見を開いたJR東海の金子慎社長。社長として迎える最後の会見で、心残りと明かしたのは、今も工事が始まっていない、南アルプストンネルの静岡工区について…。

争点は「全量戻し」

JR東海・金子慎社長(2018年):「この問題は、色々ちょっと考え方に少し差があるので、そこのところをまず埋めていく作業を丁寧にしなくてはいけないと思っている」

 2018年、社長に就任した金子社長が語った、静岡県との考えの差。当時、県がJR東海に求める、トンネル工事によって流れ出る水の「全量戻し」について、JR東海は、全量という言葉を使わず、「流れ出た分」の水を戻すと主張していました。

画像1: 争点は「全量戻し」

JR東海 金子慎社長(2018年):「全量を流すという措置を取った上で、社会的に理解可能な方法が提示できれば、という方で努力をしようと思う」

 社長就任から半年後、金子社長がトンネル湧水の“全量”を戻すことを初めて表明しました。これを受けて、川勝知事は…。

静岡県 川勝平太知事(2018年):「これは全量を戻すことがいかに重要かとJR東海が認識したことが大きい。前の社長のときまでは、ほとんど受け付けないという感じの対応だった。この短期間の間にトップの認識が深まったということを感じた」

画像2: 争点は「全量戻し」

 「全量戻し」表明に県側も一定の評価をしたことで、事態は進展すると思われました。ところが、この「全量戻し」が、この時から4年半あまりが過ぎた今も、リニア問題の大きな争点として、議論が続いています。

静岡県との溝埋まらず川勝知事に「直談判」も

画像1: 静岡県との溝埋まらず川勝知事に「直談判」も

 「全量戻し」表明後も、県とJR東海の間では膠着状態が続き、いつしか、2027年のリニア開業が遅れるのではないかという声も上がる事態に…。

JR東海 金子慎社長(2019年6月):「静岡工区は他の工区に比べて進捗が遅れている。この状態が続けば、開業時期に影響を及ぼしかねない」

静岡県 川勝平太知事(2019年6月):「自分のところの会社が立てた事業計画の年次に対して、それを何か金科玉条のごとく相手に押し付けると、無礼千万」

 県とJR東海の溝が埋まらない中、2020年、金子社長は打開策に打って出ました。金子社長が自ら静岡県庁を訪れ、川勝知事に直談判したのです。

JR東海 金子慎社長(2020年6月):「今、手を付ければギリギリなんとかかなというのが、今のタイミングだということがひとつ、その上で、ぜひそれで…」

 金子社長は、2027年の開業に間に合わせるため、リニア工事の拠点となる「ヤード」の工事だけでも許可してほしいと求めます。これに川勝知事は…

画像2: 静岡県との溝埋まらず川勝知事に「直談判」も

金子社長「じゃあ、いただきます」
川勝知事「はい、どうぞ。これは大井川の水で作られた牧之原台地のお茶で、牧之原の水はみんな大井川から得ている。それの農業芸術品です、どうぞ」

 大井川流域・牧之原産のお茶を使って静岡県側の考えを訴えかけました。トップ会談は予定を超える1時間20分に及んだものの進展せず…。去年にも、2度目の会談が非公開で行われましたが、状況は変わりませんでした。

新社長には…「全力で、誠心誠意取り組んで」

 2月、静岡工区で最も北にある「西俣ヤード」を上空から覗いてみると、建設のためとみられる資材は置いてあるものの、施設や人の姿は確認できませんでした。

 金子社長が就任当時に語っていた、「静岡県との考えの差を埋めること」は次の社長に委ねられることになりました。

JR東海 金子慎社長(都内 24日):
Q.2018年にトンネル湧水の全量戻しを静岡県と約束したことで、トンネル湧水の定義を巡って意見がかみ合わなかったり、最終的には国の有識者会議に議論が移った経緯もあるが、後悔みたいなものがあるのか、認識や考えを教えてもらいたい?

A.「全量戻しという発言も、これもあの…一貫して大井川流域の皆さんの懸念解消、心配を解消しないとこの問題を解決できない、解決することが大事だと思って、そういう発言をした。懸念を解消して、中央新幹線の工事を前に進めていきたいということで一貫しているわけで、この発言はそういうコンテクスト(文脈)の中でなされたものだと理解してほしい」

Q.丹羽新社長にどういった姿勢でこの問題に取り組んでほしいか?

A.「大きく変わることはない。水の問題環境の問題について、地域の懸念を解消するために、地域とのコミュニケーションをよくとって、できることを全力で取り組むということ。誠心誠意取り組むということ」

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