【リニア】記者とのバトルも…静岡・川勝知事「山梨の水、静岡の水議論はしない」 山梨・長崎知事も「議論は迷惑千万」
森副知事や県の担当者が13日に山梨県に行ったことを明かした川勝知事。静岡県と山梨県の間でいったいどんな話がされたのか? 実は川勝知事の会見が始まる30分前に、山梨県庁で会見を開いた長崎知事が明らかにしていました。
山梨・長崎知事と静岡・森副知事らが意見交換
山梨県 長崎幸太郎知事(13日):「静岡県の森副知事はじめ、お三方お越しになりまして、今、懸案となっておりますリニア中央新幹線の広い意味で言うと、南アルプスのトンネル問題、当然、そこに先行ボーリング調査の話も含まれておりますが、そこで意見交換を致しました」
JR東海が南アルプスで行っているボーリングについて意見を交わしたといいますが、長崎知事はこう付け加えました。
山梨県 長崎知事:「山梨県と静岡県、この点で真摯な議論を積み重ねておりますが、決して感情的なケンカは全くしておりません」
「感情的なケンカ」という言葉を選んだ長崎知事。その背景には過去に2度あった「感情的な議論」があります。
山梨県 長崎知事(去年10月):「もう少し山梨県に対して礼を尽くすべきじゃないのかなと思います」
1度目は去年、静岡県がJR東海に対して山梨県側のトンネル工事で、県境近くに到達する前に工事を止める場所を決めておくよう一方的に協議を要請したこと。
静岡 川勝知事(去年10月):「お互いに連携をもう少し密にしようということで」
山梨県 長崎知事(去年10月)
Q.軋轢は解消された?
A「全く、完全解消です」
その後、両者は面会し、お互いに“仲直り”を強調しました。ところが5月、再び…。
静岡 川勝知事(5月15日):「もちろん礼節を欠いているとの自覚はあります。前もって調整をする時間を十分取れるように、山梨県にこちらの動きをお知らせするようにしたい」
山梨県内のボーリングをめぐってJR東海に対し、県境から300mより先には進まないように求めていた静岡県。これに長崎知事は…。
山梨県 長崎知事(5月12日):「静岡県の議論には大変強い違和感を感じている。正直言って。我々としては山梨県内の活動についていかなる県であっても、我々のことを頭越しに何がしかおっしゃっていただくのは、願わくばご遠慮願いたい」
その後2人は情報共有の強化策として“電話番号”を交換しました。
静岡 川勝知事(5月24日):「静岡県が山梨県の行政権に干渉しているかのごとき印象を持たれたこと、大変遺憾に思っていて、常にコミュニケーションをしあうことを確認したことで、今後、もうコミュニケーション不足みたいなことは起こらないと期待している」
山梨・長崎知事「山梨の水、静岡の水議論は受け入れがたい」
こうして“感情的な議論”の第2幕も幕引きに。事の発端となった「県境300mの要請」について、13日、長崎知事は静岡県側と認識の共有ができたことを明かしました。
山梨県 長崎幸太郎知事(13日):「静岡県からJR東海に出された要請文、これについては、あくまでもリクエスト、お願いベースの話だと言うことで、これ、前回 川勝知事と直接お目にかかった時も、全く同じ話をされておられましたし、今回改めてその位置づけも確認をしていただきましたので、それはそれでよしとしますと」
一方で、山梨県側からはこんな話をしたといいます。
山梨県 長崎幸太郎知事:「私から申し上げたのは、『静岡の水』『山梨の水』だというこの議論は、ちょっと我々としてはやっぱり…なんていうか、受け入れがたい。このことははっきり申し上げました」
JR東海「データを取得して報告する」
現在、県の専門部会で注目を集めているのが、ボーリングをめぐる湧水が静岡県と山梨県どちらの水か? という議論。もともと山梨県内にある水でも、湧き出る場所が静岡県内であれば、それは静岡の水だというものです。
静岡県専門部会 丸井敦尚委員(7日):「水質や水温など何かキーになるものを最初に見つけておけば、そのキーを使って比率が把握できる」
この議論についてはJR東海も前向きな姿勢を見せています。
JR東海 丹羽俊介社長(8日):「当社は(県の専門部会の)丸井委員から提案があった方法に基づいてデータを取得して、静岡県と丸井委員に報告するので、静岡県から山梨県にどれだけの水が流出するのか、丸井委員の判断を受けて静岡県と対話を進めていく」
山梨・長崎知事「議論は迷惑千万なのでやめてください」
水の持ち主について白黒はっきりさせるということから注目を集めたものの、山梨県の長崎知事は…。
山梨県 長崎幸太郎知事(13日):「JR東海に対しても、同じ議論をさせていただきました。これ、山梨県の水・静岡県の水という議論は迷惑千万なのでやめてくださいと」
長崎知事がここまで「迷惑」と断じたのは、この議論が「大井川の水問題」を超えて影響する可能性があるからです
山梨県 長崎幸太郎知事(9日):「源泉、元々の出所でどこの水となるのであれば、富士川は長野県と山梨県に源泉があり、川になって静岡県に流れていくが、それが山梨県と長野県の水になるんでしょうか。我々も富士川の利用に関して、何か言うことはできるんでしょうか。ちょっとおかしな議論になってくるんじゃないか」
静岡・川勝知事「水はみんなのもの」
こうした指摘に川勝知事は13日…。
静岡県 川勝知事:「山梨県の長崎知事が言われることは、もっともだと思っております」
Q.今後も専門部会でも、この「静岡の水か」「山梨の水か」という議論を進めるおつもりでしょうか?
A.「水は水循環法に書かれていますし、また世界的にも共通の理解ですけれども、これは誰のものでもないですね。ただし、民法的に言えば、土地所有者がその上にいればそのものとなりますけれども、水は動いていますから。したがって、そういう議論それ自体は成り立つとはいえ、基本的な考え方としては、水はみんなのものであり、同時に誰のものでもある、誰のものでもないという、そういう性質のものではないかと思っております」
これまで、「水は一滴も譲れない」としてきた川勝知事ですが、ここにきて「水はみんなのもの」と少し違った表現で記者の問いに答えました。さらに、山梨県の長崎知事が言及した富士川を例にこんな言い回しも。
静岡県 川勝知事:「それこそ、富士川をご覧くだされ。ここが山梨県の水だから、こちらは静岡県の水だからというのはばかげた議論ですよ。共有財産だということです」
静岡・川勝知事「県境付近の破砕帯までは水が出ない」
こうした、“これまでと違った発言”はこれだけではありません。
静岡県 川勝知事
Q.知事自身は県境を越えたボーリングは科学的な議論のために必要という考えですか?
A.「はい。水が引っ張られるということは、かねてから言われておりました。いわゆる、このボーリングが調査をかねた水抜きだってことも、共通の理解なんですね。ですから、破砕帯のところに行くまでは水が出ないでしょう。もし出た場合にはそれをどのように戻すのかということを、これはもっぱらJR東海さんが、関係者に説明するべきことであるというふうに思っておりますので、ボールはJR東海に投げられていると思っております」
Q.誰がどう見ても静岡県がボールを持っていると思いますけど?
A.「水が出た場合どうしますか? どれくらいの水が出るんですか? ということについて、こちらがお尋ねしていると。そういうリスク管理についてお答えするのはJR東海であると」
JR東海に対して県境300m地点でボーリングを止めるよう求めたのも水が流出する可能性を危惧してのこと。
ところが、川勝知事は13日の会見で、水が溜まっている可能性があるとされる県境付近の破砕帯までは水が出ないと推測しました。
ただ、「ボーリングをするか?」「しないか?」については自身の口から明言することを避けました。
静岡県 川勝知事:「専門部会のほうで容認されれば私はそれに従います」
山梨の水、静岡の水議論はしないが…
ここから、記者との攻防が始まります。
Q.山梨の水、静岡の水の議論はしない
A.「そうです」
Q.ということになりますと、山梨県境付近で今行われている静岡県境までの調査に関して、水が引っ張られようがなんだろうが、水を返せというような話にはならないわけなので、県境までの調査を事実上容認する。そして県境を越してからの調査は、県の専門部会の見解を仰ぐ、以上、それでよろしいですか?
A.「いえいえ、それは違いますね。水は山梨県・静岡県両方流れるわけですから、この水が静岡県から引っ張られているという、そういう前提のもとでこの議論をしているわけですね」
Q.だとすると静岡の水・山梨の水という議論はしないけれども、水は返せということですか?
A.「水は全部返すというのがJR東海さんの約束です」
ただ、JR東海が言う「全量戻し」はトンネルの掘削が行われるおよそ10カ月間に出た水が対象で、「調査」とされるボーリングは含まれていません。
さらに記者からはこんな問いかけも。
Q.逆を言えば、山梨県側の水を静岡県が引っ張ってしまっている可能性もあるわけですよね?
A.「それはへりくつですね」
山梨県とのボーリングをめぐる“考え方”については、一定の方向性が見え始めたものの、水をめぐってはより根深くなったようにも見えるリニア問題。様々な関係者が静岡県側の1つ1つの発言に注目しています。