【リニア】JR社長「今から着手しても遅れ取り戻せない」 静岡県は大井川「上流部の水」や「残土」などの環境への影響懸念 /今週の静岡

 品川―名古屋間の2027年開業が掲げられたリニア中央新幹線。大井川の水問題や南アルプスの自然などに対する懸念から、静岡県内ではまだ工事が始まっておらず、2027年の開業は絶望的な状況です。

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【リニア】JR社長「今から着手しても遅れ取り戻せない」 静岡県は大井川「上流部の水」や「残土」などの環境への影響懸念 /今週の静岡

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JR社長 「静岡未着工が2027年開業を難しくしている」

 そんな中、16日、JR東海の金子慎社長は会見を開き、改めて「静岡工区での未着工が2027年開業を難しくしている」と、強調しました。

画像: JR社長 「静岡未着工が2027年開業を難しくしている」

JR東海 金子慎社長(16日):「2020年6月に知事と会い、工事の着手をお願いした。その時点は、それから直ちにヤードの整備などに着手をして、その後工事が極めて順調に進むことを前提に、2027年開業にギリギリというタイミングだった。了解がもらえなかったので、その時点で2027年開業は難しい状態になった。今から仮に着手しても、遅れを取り戻すことはできないまま今日に至っている」

静岡県 環境への影響を懸念

画像: 静岡県 環境への影響を懸念

 そして14日の火曜日、都内で国の有識者会議が開かれ、県からは森貴志副知事がリモートで出席しました。会議ではJR東海が今後の議論を進める上で必要な、沢の流量の分析や沢の動植物の調査について説明し、委員との意見交換をしました。大きなテーマは3つ。「沢に住む生き物への影響」「高山植物への影響」「残土などによる環境への影響」です。リニアのトンネル工事がこれらに及ぼす影響について、JR東海が独自に行ってきた調査による資料を示しました。

JR東海 宇野護副社長(14日):「専門的な見地から様々なご意見を頂き、私どもにとってもとても参考になる話がもらえた。可能な限り対応していきたい。そういう意味で、具体的な議論が進んできた感じがしている」

 JR東海から議論の材料となる資料が初めて提示されたことについて、森副知事は…

森貴志副知事(14日):「先生方の議論にもあったが、不測の部分がまだある印象。水質の問題については、JR東海が示した基準よりも、実際に大井川に流れている水を中心とした水質について、より深い議論をしてもらいたい」

問題① 大井川の上流部の水

 大井川の「水」をめぐって有識者会議は、その流量について「トンネル掘削で湧き出る水を大井川に戻せば中下流域の流量は維持され、地下水への影響も極めて小さい」と中間報告をまとめています。これまで中下流域の水量が注目されてきましたが、森副知事が懸念を示したのは、大井川「上流部の水」についてです。

 去年、現地を視察した川勝知事も-。

画像1: 問題① 大井川の上流部の水

静岡県 川勝平太知事(去年8月):「べらぼうにきれいですよ。この水質は最良のものであります」

 有識者会議で、JR東海はトンネル湧水を大井川に戻す際に、導水路トンネルの出口がある椹島(さわらじま)付近の水温が、最大で10度近く上昇するという予測結果を示しました。これは、冬は大井川の水温が低いため、地熱によって温められた湧水を戻すと河川の温度が上昇するというものです。これにより生態系に影響がでる可能性があります。JR東海は、対策として「水を外気にさらしてから流す」こと、「雪と湧水を混ぜて流す」ことなどとしています。

画像2: 問題① 大井川の上流部の水

 課題は水質だけではありません。JR東海は、工事によって大井川上流部の地下水が最大300m低下するとしています。これによる住宅や多くの企業が集まる中下流域への影響は低いとしていますが、上流部への影響を否定する資料や調査結果は示していません。

森貴志副知事(14日):「測れない場所もあるだろうが、さらに上流部についてのデータをもらいたい。(環境への影響を)全く低減できない状態までは議論を進めてほしいという気持ちに変わりはない」

問題② 工事による残土

画像: 問題② 工事による残土

 リニア問題と言えば、大井川の水問題がクローズアップされていますが、トンネル工事で出た残土をどうするかという問題もあります。静岡県内のリニア工事で発生する土砂の量は推計370万立法メートル。この残土を置く場所として最も規模が大きいのが燕(つばくろ)です。川勝知事も去年現場を視察しています。

JR東海担当者:「この部分は地形としては、平坦な地形に計画をしております。できたものについては、今はそこの管理が非常に重要になるので、そちらについては弊社が将来にわたって責任をもって維持管理を行うことで考えている」

静岡県 川勝平太知事:「私はここは不適ではないかと思う。このように平坦になってるのかっていう理由についてはですね。しかも木が生えていないんですよね。なぜかと言うと、その上千枚沢の方から、深層崩壊、つまり土石流が流れてくるよなところに盛り土を持って大丈夫かっていう議論がある。それを前提にしたシミュレーションでないとダメ」

 川勝知事は、残土置き場としてふさわしくないという考えを示しました。また、残土の中には自然由来のヒ素などの重金属が含まれているものがあり、これらは「要対策土」と呼ばれ、特別な対策が必要になります。この「要対策土」についてJR東海は、大井川上流部の藤島に置くことを想定しています。そんな中、県は熱海市の土石流を受けて盛り土条例を強化しました。

JR東海 金子慎社長(去年8月)
Q.静岡県の盛り土規制条例が7月に施行され、対策土の盛り土が原則禁止となった。対策土を藤島沢に置く計画を維持しているが、例外的に盛り土できる適用除外を受ける事の条件の1つに、工事の事業区域内に盛り土すると条例では定められているが?

A.「自然由来の重金属を含む対策土に対する盛り土に関する適用の除外の情報について、これから適用されるのかどうか県と相談していく」

 条例では、適切な措置が行われていれば、適用除外もできるとしています。しかし、県は、リニア工事で出た要対策土は、除外の対象にはならないとしています。

                               (2月18日放送)