【リニア】JR東海が示した「田代ダム案」 静岡県は「少し待った」 大井川流域市町はほぼ了解

静岡県 川勝平太知事(28日):「取水を抑制する権限を持たない方が、取水を抑制すると言われたときには、当然取水を抑制する主体である東京電力との話し合いが終わっているものと受け止めた。そうした提案が十分な検討というか、下準備がないままに提案された結果、今日になっている」

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 28日、行われた川勝知事の定例会見。1時間半に及んだ会見で、半分以上の時間がリニア問題に割かれました。特に力が入ったのが、「田代ダム案」についてです。リニア工事で県が求める「全量戻し」の案としてJR東海が提示している「田代ダム案」。大井川の最も上流部にある「田代ダム」は、東京電力のグループ会社が管理していて大井川から取った水を、発電のために山梨県へと送っています。

JR東海が流域市町などに説明

画像1: JR東海が流域市町などに説明

 「田代ダム案」では、リニアのトンネル工事で山梨県側に流れ出た水と同じ量だけ、田代ダムの取水量を減らし、大井川の水への影響をなくす計画です。

 27日、大井川の流域市町や利水団体からなる「大井川利水関係協議会」が開かれました。出席したのはJR東海や大井川流域市町、そして県などです。当初、JR東海は個別に流域市町に説明をするとしていましたが、これに県が待ったをかけました。県の望み通り、一堂に会した場でJR東海は田代ダム案について説明、東京電力側と協議を始めることへの理解を求めました。

画像2: JR東海が流域市町などに説明

JR東海中央新幹線推進本部 澤田尚夫副本部長:「この3つの条件は東電から言われている条件。向こうからこういうことを確認してほしい、こういうことで理解してほしいと言われている」

 東京電力側から提示されたという条件は3つ。「トンネル工事中のおよそ10カ月間に限る」。さらに「県内でのボーリング調査に伴う水の流出への適用も含む」「東電側の水利権に影響を与えない」ことです。これに大井川の流域市町からは…

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島田市 染谷絹代市長
「皆さんの心配を思うと、もう少し言葉を修正して、『先進坑がつながってトンネル湧水をポンプアップできるようになるまで(約10カ月を想定)』と修正して頂きたい」

画像4: JR東海が流域市町などに説明

藤枝市・北村正平市長
「大事なことは必要な時に必要な水があること。県外に流出する湧水を途切れることなく大井川に戻していくという考えを確認したい」

JR東海中央新幹線推進本部 澤田尚夫副本部長
「1日ごとに戻すのは運用上、現実的ではないと思う。決めていくにあたっては、(関係者の)意見や事情を聞きながら進めていきたい」

画像5: JR東海が流域市町などに説明

吉田町・田村典彦町長
「東電は発電のための取水を抑制しても、発電には影響がないと考えているのか?」

JR東海中央新幹線推進本部・澤田尚夫副本部長
「発電の量が減ります。減るということは東電の事業の損失となるので、そこはJR東海が補償するという前提でやっている」

 大井川流域市町や利水団体とJR東海による、初の対話の場となった今回の協議会。参加した市長や町長、利水関係者の多くは、条件に理解を示し、JR東海へできるだけ早く東京電力側との協議を始めるよう求めました。

静岡県の意見に流域市町からは疑問の声も

 一方で、県は…

画像1: 静岡県の意見に流域市町からは疑問の声も

静岡県 森貴志副知事
「3つの要素については、まだ修正の余地もあると思うし、会員全てがそろっておらず、会員全ての意思が示されていない。きょうの意見や追加の意見を事務局で取りまとめ、JR東海へ文書で照会するので、JR東海は東京電力RPとその案で調整してもらったうえで回答をもらってからまた進めたい」

 流域市町の意向と相反して、態度を保留した県。これには流域市町からも疑問の声が…。

画像2: 静岡県の意見に流域市町からは疑問の声も

島田市 染谷絹代市長
「田代ダム取水抑制案については、ほぼ全員が了解した。少し待ったといったのは県だけだった。(県は文書を)できるだけ早くまとめて、返して、具体的な議論に入れるといい」

川勝知事は…

 歩調が合わなくなってきているようにも見える、県と大井川流域の市町。こうした状況に、川勝知事は…

静岡県 川勝平太知事(28日)
「この取水抑制案については、“今後JR東海と東電RPが協議を進めるべき”という意見が大勢を占めた。JR東海の提案に関して、共通認識を持つことができたと受け止めている」

 川勝知事も、JR東海と東電側が協議開始を求めることは、協議会の共通認識として受け止めた、と語りました。一方で…。

画像: 川勝知事は…

静岡県 川勝平太知事(28日)
「この取水抑制案は検討の余地がある。前提条件の文言について明確ではないものがあるので、そうした文言の修正なども行って、JR東海と調整後に意思表示をしたいと考えている」

 利水関係者が「田代ダム案」に期待を寄せる中、改めて判断を持ち越す形となった県。その背景として会見の端々に見えてきたのは、田代ダムをめぐる「水利権」です。

静岡県 川勝平太知事(28日)
「水利権と関係ないと言われても、それが本当に関係ないかどうかは、JR東海が関係ないというのとは別にして議論するべきもの」

 「水利権」とは、ある目的のために水を使う権利のことで、田代ダムでは東京電力が毎秒4.99トンの水を、大井川から取ることが認められています。開発によって、水が失われた歴史を持つ大井川では、過去に「水利権」をめぐって県側と東京電力側が長年協議をしてきた背景があります。その水利権の更新が、2年後に迫っているのです。県は、この水利権を含めた「3つの条件」について、協議会の納得が得られておらず、立場によって解釈に差が出ないよう、文言を修正する必要があると主張しています。

静岡県 川勝平太知事(28日)
「この水利権というのは非常にデリケートというか、重要な問題。だからこの件について、軽々に水利権と関係ないというには、少し詰めなくてはならないという認識を持っている」

 水問題の打開策の1つとされている田代ダム案。結論が出るのにはまだまだ時間がかかりそうです。

       (3月29日放送)