退任直前に実現 静岡市の田辺市長と川勝知事の4年ぶりの対談は
退任前にどうしてもやりたいことの1つに知事との会談を挙げていた静岡市の田辺信宏市長が先ほど知事室を訪れ、川勝知事に退任のあいさつをしました。犬猿の仲とも言われる2人、雪解けを迎えることはできるのでしょうか。
田辺市長:
知事室入り
4日午後4時。
静岡県庁に姿を現したのは静岡市の田辺信宏市長です。
田辺市長がこうして知事室を訪れるのは、4年ぶりです。
4月で退任する田辺市長。
3期12年にわたり市政運営のかじ取り役を担ってきました。
4日にここを訪れた理由、それは…。
3月13日静岡市長会見
田辺市長 3月13日 :
「(任期中に)どうしても実現したいことは、任期中に県知事とお会いしたいと思っている。政令市と県という組織同士が抱えている課題や問題をもう一度話をして共有化をしたい」
退任前に実現したいこととして知事との会談を挙げた田辺市長。
このラブコールに対して川勝知事は…。
川勝知事 3月14日:
「お越しになれば、お話を承る。お別れの挨拶になるでしょうからね」
Q知事として現段階で市長と話したいことは?
川勝知事:
「特段ございません。ご苦労様と申し上げるくらい」
2015年
これまでたびたびその関係性がクローズアップされてきた川勝知事と田辺市長。
溝ができ始めたのは今から8年前のこと。
川勝知事が提唱していた「県都構想」を巡り直接対談した際には…。
川勝知事:
「キミ知ってましたか、彼のこと…。キミのためでもない。私のためでもありません」
田辺市長:
「キミキミっておっしゃいますけどもね。静岡市長ですけど」
川勝知事:
「あ、それは失礼しました」
田辺市長:
「県にも協力してもらって、どうやったら…」
川勝知事:
「それも制度論でしょ」
田辺市長:
「そうじゃなく、実質論です。つまり本社が…」
川勝知事:
「税率をね…」
田辺市長:
「聞いてください。聞いてください。私はずっと粘り強く知事の言葉に耳を傾けました。20分ぐらいでしょうか。あなたは私が話し始めて3分となく口をはさむ。もっと私の、市民の声をよく聞いてください」
去年10月
また去年9月の台風15号を巡っては…。
田辺信宏市長 去年10月会見 :
「知事とは携帯電話ができない。知りません私携帯番号を。かつて、(番号を)教えてもらおうと思ったこともあったが、残念ながら教えてもらえなかった。なので、なかなか知事とこういう緊急時に連絡をすることができない
状況が続いていて、今回の災害に遭遇してしまった」
そして、きょう
田辺市長が前回の市長選で当選した翌日以来、4年間、1対1で会うことなくその関係は冷え切っていた2人。
雪解けになるような話はできたのでしょうか。
田辺市長からは市の第4次総合計画への支援やリニア新幹線整備の推進など4つの要望事項がありました。
「静岡市は政令指定都市の失敗事例」発言について
静岡市 田辺信宏市長「2016年12月、G3を行ったときです。2月の県議会で知事は、またG3を市長が代わって再開したいと答弁をされた。あのときに報道のみなさんがいらっしゃる前で、『静岡市は政令指定都市の失敗事例だ』とおっしゃいました。それは静岡市長として、私は看過できませんでした。なぜならば、私自身あるいは小嶋善吉前市長はじめ先人の方々が、政令指定都市に向けて懸命の努力をしてきて、そして移行したということです。(政令市移行は)2005年ですので、まだ20年もたっていません。でもひとつずつひとつずつ指定都市の都市格というか、世界の中の静岡市、存在感のある都市づくりにまい進してきた。私自身がそういう12年間をやってきたと思っております。今でも政令指定都市・静岡市は失敗だったとお思いですか?」
静岡県 川勝平太知事「あのとき70万人に下がったんですよね。今では100万に戻ってるでしょう。ですから今、人口減少の中で、あの時、市長さんは100万都市を目指すというふうにおっしゃってましたけど、非常に厳しい」
静岡市 田辺信宏市長「私は100万都市なんてことは言ってません。適正な人口ということもあると。定住人口ではなくて、私たちは四次総の中では70万は切ったけれども、人間にとって人生を謳歌できるような心地よい都市ということで。その代わり、その人口活力を定住人口ではなく、交流人口とかで補って、人口活力を地域経済の活性化につなげていこうと、そんなふうに修正をしながら、四次総をこれから取り組んでいきますので、そのこともぜひご理解いただければなと思います」
静岡県 川勝平太知事「そのとおりです。もう今、移住希望地が3年連続日本一ですからね。ですから、コロナの中で人々の意識も変わりましたし、住まい方も変わるし、デジタル田園都市という文字通りこの広い空間の中で都市と緑とが一体であるような、それが理想だという風に内閣も言ってますから。静岡県がもちろん静岡市も含めてですけれども、理想的な地域として今選ばれていると、こういうことですかね」
静岡市 田辺信宏市長「県が連携すれば。ナンバーワンになりましたよね(笑)」
静岡県 川勝平太知事「本当に良かったと思います。これからです」
静岡市 田辺信宏市長「未来志向で連携して、市と県頑張っていくためには、過去明らかにして、きちんとノドに刺さったトゲは取り除かなければいけない。そんな気持ちで2016年、静岡市は政令指定都市の失敗事例だとおっしゃった知事が、きょうこういう思いを語っていただいたというのは、大変私にとって心強いし、有難いです」
「リニアの課題解決の加速化をお願いしたい」
静岡市 田辺信宏市長「最後に四つ目のお願いが。リニアの課題解決の加速化をお願いをしたいと思います。これは私のみならず、多くの静岡市民の皆さん、また連携中枢都市圏を形成している牧之原市長、島田市長、藤枝市長、焼津市長の思いも受けて、とにかく環境と経済の両立、それを静岡県でリーダーシップとれるのは知事しかいないと。5年間全く進んでないということが残念である。大局観を持って、それこそ世界レベルでこの問題を解決をしていただきたいと言うことをお願いしたいと思います」
静岡県 川勝平太知事「そのつもりでおります。そのためにやってるという面もありますからね」
30分間の会談を終えた2人は報道陣の取材に。
田辺市長「申し上げたいことは申し上げた」
静岡市 田辺信宏市長「申し上げたいことは申し上げましたので、知事はとても知識量が多くて、例えばスピーチの中で和歌をそらんじたりして。すごいなと思いましたが、時々言葉が過ぎることがあります。言葉は武器にもなるし、凶器にもなる。政令市は失敗だ。三保松原の松枯れ対策も静岡市は不合格だと言われたら、私たちが懸命にやってきたから、それは言い過ぎだというふうに反論をする。三期目の4年間は私は何を言われても、なかなか私の言うことが反映されないので、もう皆さんからね、なんであんな不仲なんだと言われることをやっぱり市は自粛しなきゃいけないということで、反論してきませんでしたが、最後でありますので、きょう、私が申し上げたいことを四つのお願いとして申し上げた次第であります。ご理解いただきたいと思います」
川勝知事「それなりの気持ちで来られることは分かっていた」
静岡県 川勝平太知事「ここに来られるのも、それなりの気持ちを持ってこられてるってことは分かってましたのでね。それでもう一週間しかないので。次の市長さんと関係は良くしていかなきゃならないと思ってましたので。ここは彼も気持ちよく、4月12日の退任の日までですね。過ごしていただけるようにという思いで、来ていただいたことを歓迎した、ということでございます」