熱海市が『宿泊税』導入へ(前編) 1泊200円…導入の背景に「深刻な高齢化」…「観光振興の経費確保が厳しい」
静岡県有数の観光地・熱海市は来年4月から『宿泊税』の導入が検討されています。ホテルや旅館、民宿など市内にある約360の宿泊施設すべてが対象です。背景には熱海市が抱える大きな課題が。宿泊業者や観光客からは様々な声が聞こえてきました。
伊地健治アナウンサー:「JR熱海駅前から伸びる商店街です。きょうは木曜日、平日のお昼すぎなんですが、ご覧ください。商店街は多くの観光客の皆さんが、ひしめき合うように歩いています」
12日月曜に行われた熱海海上花火大会。熱海の夜空に3000発の花火が、打ち上げられ、多くの観光客が今年初めての花火を楽しんでいました。
観客「素晴らしかったです、感動しました」
観客「想像以上に良かったので、びっくりしています」
そして、60品種もの梅で、早春を彩るのは、熱海梅園の梅まつり。
入場者「どこも咲かない時期に咲くから、期待しています」
入場者「白と赤が混合していてすごく対比が良くて奇麗です」
観光客は「ちょっと嫌だ」「200円くらいなら」
県内有数の観光地・熱海。コロナ禍前には、年間750万人もの観光客が訪れていました。
伊地アナ「熱海の駅前にいると、大きなトランクを持った、この場所に泊まりに来たと見られるお客さんが多くいます。実はこの熱海市では、早ければ来年4月から、こうしたお客さんを対象に “宿泊税”という税金を徴収することを、お客さんはどう感じるのでしょうか?」
神奈川県から1泊の旅行で遊びに来ていた、5人組の女子高校生に聞いてみました。
伊地アナ「来年の4月から宿泊税という税金を、泊まる人すべてから取る事にしているんです。1人1泊200円という税金がかかるんですが知っていますか?
A.「知らなかったです」
Q.200円の税金が1人1泊かかると聞いてどう思う?
A.「え~、ちょっと嫌だ」
「高校生だから、高校生なので、やっぱお金があまり無いので」
Q.200円でもきつい?
A.「ない方が嬉しい。」
埼玉県などから遊びに来ていた、こちらの3人組は。
Q.どういった仲間ですか?
A.「学生時代の」
「もう、55年の付き合い。中学校からのずっとお友達です」
「200円ならしょうがないかな。500円は嫌です。200円なら安いわね」
イギリスから来ていた、2人組にも話を聞いてみました。
イギリス女性「課税するのは良いことだと思います。より魅力的な場所にする事で、たくさんの観光客を呼ぶことが出来ると思います」
イギリス女性「ここはとても素敵だから、もっとたくさんの人が来ると思うし、経済にも良いと思う」
背景には高齢化
熱海市は14日、県内では初となる宿泊税の導入について、来週始まる市議会定例会で審議すると発表しました。熱海市が宿泊税の導入を目指す背景には、市が抱える大きな課題がありました。
熱海市観光建設部 立見修司さん「熱海は非常に高齢化が進んでいる町になっている。そうすると将来的に税収が減少していくことが見えている。熱海市の産業を引っ張る観光業を振興するための経費を確保するには、なかなか厳しい状況にある」
熱海市の高齢化率は県内でも非常に高く、およそ49%。働く世代が減ったため、市の税収も右肩下がり。およそ30年前のピーク時には139億円ありましたが、3年前は89億円にまで減少。30%以上も減ってしまっています。
そこで白羽の矢が立ったのが“宿泊税”です。なぜ宿泊税に焦点を当てたのでしょうか?
熱海市観光建設部 立見修司さん「熱海の特徴ですが、熱海に来ている宿泊客の中のリピーターの割合が非常に多い。今回、熱海に宿泊していただく方に協力いただいて、宿泊税をご負担いただく。その税を観光振興に使わさせて頂く。それによって次に熱海に来た時に「ここが綺麗になっているな」とか「新しいイベントが生まれたなとか」「便利になったな」という所を、一つでも感じて頂けるような事が出来るのではないか」
宿泊客の負担は
宿泊者の負担は、具体的にどのようになるのでしょうか?
熱海市観光建設部 立見修司さん「12歳以上の宿泊された方に対して、1人1泊あたり200円の税の負担をお願いしようとするものです」
12歳以上を対象に、1人1泊200円。修学旅行などは除きます。旅館やホテル、民宿など、市内にあるおよそ360の宿泊施設、すべてが対象となります。これにより、年間およそ7億円の税収を見込むそうですが、気になるのはその使い道です。
熱海市観光建設部 立見修司さん「前提としてですね、宿泊税を使うものは、宿泊客に還元するという本旨から、宿泊客の満足度を高めるような政策にあてるのが原則です。花火大会のアップグレードであるとか、集客につながるような観光プロモーションの充実であるとか。そういう所に使っていきたいと考えている」
街の人は
宿泊税の導入について、街の声を聞いてみました。
こちらは、駅前の商店街で70年続く、土産店です。
Q:早ければ来年の4月から宿泊税をお客さんから徴収することを決めようとしていますが?
A.「出来ればとってほしくないです。でも、取るっていう事は、必要があって取ろうと思っているんでしょうから、仕方がないかなと思います」
一方、こちらの総菜店は?
A.「観光のお客さんの事が、(若い人が多くて)よくわからないからね。昔と違ってね。だからどうなるのか、影響があるのかないのか、ちょっとわからないよ」
Q.あまり気にしていない?
A.「そう、やってちょうだいって感じ。やるならやる、やらないならやらない」
さらに、実際に宿泊客から、お金を徴収するホテルや旅館に話を聞くと、いろんな意見が出てきました。
「お客様が他の観光地を選んでしまうのではないか」
「熱海全体がテーマパークになるような、そんな街造りをしていただければ」
(後編に続く)