【リニア】「ボーリング」議論も平行線(前)JR東海「ボーリング調査中に流出する水は少ない」 静岡県専門部会「戻す方策までセットにして提案してほしい」 /今週の静岡
11日、県庁で行われたのは、県の専門部会のメンバーと大井川流域の市長や町長によるリニア問題に関する初めての意見交換会。流域のトップから意見が相次いだのは、JR東海が提案している“ボーリング”についてでした。
JR社長「湧水の状態などの情報得られる」
現在、JR東海は山梨県側から静岡県に向かってトンネルを掘り進めています。これはリニアが実際に走る「本線」ではなく、「先進坑」と呼ばれる作業用トンネルですが、工事の進捗は県境まで1kmを切っている状況です。そうした中で今、JR東海が希望しているのが「ボーリング調査」です。
JR東海 金子慎社長(11月25日):「ボーリングは、いきなり大きな断面のトンネルを掘ることに比べれば、このボーリングをすることによって、いろんな危険を避けるための情報、あるいは湧水の状態等、いろいろ情報が得られるので、これをやった方がいいだろうと申し上げている。何か小さいものでも、何か危険があるので、やめた方がいいということにはならないというよりは、やっぱりやった方がいいのではないかというのが私たちの考え」
静岡県専門部会「県外に水が出たらどうやって返すのか決めて」
リニアのトンネル工事を巡っては、本来は大井川に流れるはずの水が、山に穴を開けることで山梨県側に流れ出てしまうという懸念が指摘されています。4日に開かれた県の専門部会でも、委員から同じような指摘が相次ぎました。
県専門部会 塩坂邦雄委員:「(県外に水が)出たときにその水が仮に静岡県の水だとしますよね。それをどうやって返すのかを決めておかないといけない。それが膨大だったら返せない」
県専門部会 丸井敦尚委員:「静岡県の地下水を大井川に全量戻すという約束をしていたと思うが、(水が県外に出て)どれだけの影響がある、どれだけ安心なのか、どれだけ危険なのかが一般の方々が判断しやすいように教えていただきたい」
JR担当者「ボーリング調査中に流出する水は少ない」
一方、JR東海側は…。
JR東海担当者:「仮にボーリングの先端が県境付近の断層帯に差し掛かったとしても、流入する湧水が静岡県内の地下水に影響し、大井川の水資源利用に影響を与える可能性は小さいと考えられる。なお、静岡県内の区間を掘削中に湧水量が管理値を超えた場合には、掘削を中断し対応を検討する」
「ボーリング調査中に流出する水は少ない」とし、調査終了後に、流出した水を静岡県へ返す方針であること改めて伝えました。
ただ、これに委員からは…
県専門部会 森下祐一部会長:「流出した量をきっちり評価して、その分を戻すという原点が崩れてしまう。戻す方策までセットにして提案していただきたい」
「ボーリング」については、川勝知事もたびたび会見で言及しています。
静岡県 川勝平太知事(11月29日):「掘ると水が出るということはほぼ確実なので、調査が独立してされるものではない。(土木学会が出した本によると)施工中の地質調査の中に先進ボーリングが入っている。ですから、これは施工中(工事中)の調査。高速長尺先進ボーリングについて何となく調査だけと言っているが、これは関係者は施工中のトンネル工事の一環としてやるんだということは常識になっている。それを金子社長が調査・調査と言うので、そこに引きずられて、それはいいことだという人もいると思うが、本来の調査をやる時間が十分にある。それをなさっていただきたい」
ボーリング調査も認めない静岡県。ところが、大井川流域の市町の意見は、県とは異なるようです。(後編に続く)
(12月17日放送)