【リニア】「ボーリング」議論も平行線(後) 静岡県専門部会「今やる必要ない」 島田市長「やる価値がある」 /今週の静岡
静岡・島田市 染谷絹代市長(11日):「こんなに皆さんが不安を持っているものが、少しでも科学的・工学的に根拠が得られるならば、これはやる価値があるのではないかと」
一方、専門部会側は…。
県専門部会 森下祐一部会長:「私はボーリングそのものを否定しているわけではありません。この高速長尺先進ボーリングは工事を安全に行うために必要であることに異論はありません。ただ、このボーリングを“今行う必要はない”と判断しました」
専門部会「急いでボーリングをする必要はない」
意見交換会では、専門部会側から「ボーリング」をめぐり、こんな意見が…。
県専門部会 森下部会長:「現在の高速長尺先進ボーリングでは、水が流出するだけとなってしまいます。山梨工区の先進坑が現在の位置で停止したとしても、静岡工区の工事を始めてから再開すれば十分に間に合いますので、今急いで高速長尺先進ボーリングをする必要はないということになります」
静岡県側に水を戻すための導水路トンネルを作るのにも数年かかる見込みのため、まだボーリングは必要ないという意見。
島田市長「対立の構造の中で議論している気がする」
ただ、こうした平行線を辿る議論に、大井川流域の市長らから様々な意見が…。
牧之原市 杉本基久雄市長:「県の専門部会の先生方は、何を持ってリニアの工事を進めていく判断材料とするのか」
菊川市 長谷川寬彦市長:「抜けてしまうという不安を、逆にすごく感じてきました。今まではこの調査やったほうがいいんじゃないかとすごく言っていたんですが」
島田市 染谷絹代市長:「対立の構造の中で議論をしているような気がしています。JR東海とみなさん方が。どうすれば水を守れるかという目的のために寄り添う議論をしてほしい。事務局はかなり頻繁にJRとやりとりしているはずです。しっかり話をしてもらって、その内容について私たちは一度も聞いたことがない。ボーリングは水抜きが目的というような、決めつけるような発言をすると私たち流域がまた戸惑うんです」
これまで、「ボーリング」についてJR東海はあくまで地質や水の状態を調べるためのものとしています。ただ、専門部会側からは一般論も交えてこんな意見も…。
県専門部会 大石哲委員:「黒部の時のような死者が出たりということがないように、安全な工事を行うために水を抜くというのが工事の目的なわけです」
島田市 染谷絹代市長:「それについてはJRの見解を聞いてみたいと思います」
専門家と大井川流域との間にどことなく溝を感じる場面が多かった意見交換会。ただ、専門部会側も、前向きな見解は示しています。
県専門部会 森下部会長:「どうしてもボーリングがしたければ、失われる水をリアルタイムで戻す方策とセットにして提案してください。その切り札は田代ダムからの取水を抑制する案であります」
意見交換会後、流域市長は…
意見交換会後、大井川流域の市長や町長らは…。
牧之原市 杉本基久雄市長:「どこが噛み合っていないか、それぞれお考えがあるので、そういった意味では、きょうの意見交換会をやって、今まで我々もわからなかったリスクがあるということは理解ができたと思っています」
藤枝市 北村正平市長:「だいぶこの水の問題については、議論・論点が絞られてきているなという感じがして、特に高速長尺先進ボーリング。また県のほうもしっかりと話をして欲しいなと思っています」
島田市 染谷絹代市長:「何て言うんでしょうかね…、議論がかみ合わない状況がずっと続いているような気がしましてね、で、もう少し、何て言うかな…、胸襟を開いて話し合うと言いますかね、解決の術についてお話しすることができるのではないかなというのが印象の一つでもありました。まだ時間がかかることだと思っています」
川勝知事「議論が出てくるのは当然」
市長や町長の声を知事はどう受け止めているのでしょうか。
静岡県 川勝平太知事(16日):「今回初めて、専門部会の先生と流域の市町の首長さんが話をしたと。だからそこでいろんな議論が出てくるのは当然だと。だけど共通していることがあります。この水の問題は極めて重要だということで、それに対する不安持ってらっしゃるし、安心したいっていう気持ちもあると、それがニュアンスの差として出てると私は受け止めております」
(12月17日放送)