【リニア】「期成同盟会」総会に初参加の静岡・川勝知事「一貫して賛成」 沿線知事や自民から“苦言”「建設反対協議会ではない」 /今週の静岡 リニアの動き(後編)
「期成同盟会」総会 川勝知事あいさつ
5月31日、リニア沿線10都府県の知事が初めて一堂に会した「期成同盟会」の総会。沿線の知事たちが注目する中、川勝知事は何を語ったのか?
静岡県 川勝平太知事(都内):「静岡県は一貫してリニアに賛成しております。このリニアの技術は日本の誇るものであり、これを次世代に継承発展させていかなければならないと思っています。南アルプストンネル工事につきましては、昨年の私が入る前の期成同盟会の決議の第一項におきまして、水資源の保全また南アルプス自然環境の保全をうたい、それと同時にリニアを進めると、同じように閣議決定もそのことがうたわれ、
また翌月の選挙における自民党の党約にもうたわれました。これは静岡県の主張と全く一緒でございまして、ご同慶の至りでございます」
改めて、静岡県はリニアを推進する立場であり、期成同盟会や政府の姿勢と「一致している」ことを訴えました。しかし…
静岡県 川勝平太知事:「南アルプストンネル工事を含め、トンネルを掘りますと2つの問題が出てきます。1つは水です。もう1つは掘削土でございます」
川勝知事による、およそ3分半のあいさつのうち、2分余りを占めたのは、南アルプスをめぐる静岡県の立場について、理解を求める言葉でした。
静岡県 川勝平太知事:「南アルプストンネル工事における水の問題に関しましては、JR東海さんが田代ダムの取水抑制によって、これを解決したいという案を出されておりまして、この実現可能性が今、JR東海さんと東京電力の間で話し合われておりまして、これの解決を私どももとしても鶴首しているところであります」
沿線知事からは“苦言”相次ぐ
静岡県の現状を伝え、理解を求めた川勝知事。ところが、リニア開業を見据えて街づくりを進める沿線の知事から相次いだのは、“苦言”ともとれる声でした。
期成同盟会会長 愛知県・大村秀章知事:「南アルプス静岡工区の工事はまだ着手できていない状況。これは関係の皆様方に英知を結集してもらい、1日も早く“より良い”解決策を見出して進めてもらうように強く望む」
山梨県 長崎幸太郎知事:「南アルプス静岡工区における大井川の減水対策案については、早期に水問題の解決に向けた関係者間の協議が整い、速やかに工事が着工されることを山梨県としても“強く、強く”期待する」
長野県 阿部守一知事:「まさに静岡工区の問題は、開業時期に直結する“極めて重要な課題”であり、これは静岡県の問題であると同時に、沿線地域すべての共有の問題と考えている」
岐阜県 古田肇知事:「“線路はつながってナンボ”。全関係者が一丸となって、一つになって、前に進めていく。これが大事ではないかと思っている」
さらに、まだルートが決まっていない三重県の知事からも…。
三重県 一見勝之知事:「名古屋以西の工事が、名古屋以東の工事が遅れることによって遅れるということは、ぜひ避けてもらいたいと思っている」
山梨・長崎知事「静岡県の懸念をメンバーで共有」
静岡県に対する厳しい意見が飛ぶ中、山梨県の長崎知事からは、こんな提案も…。
山梨県 長崎幸太郎知事:「静岡県の懸念は リニア全通に関わる重大な問題で、期成同盟会のメンバーで共有し意見を表明することが大事。当面、期成同盟会で意見を交わし合う場を設けるべく事務方で調整を始めたらどうか」
この提案に、会長を務める愛知県の大村知事も賛同し、速やかに事務方での協議を検討していく考えを示しました。
国に「早期の全線整備に向け」要望
総会のあと、川勝知事はこの日2カ所目となる国交省へ。期成同盟会のメンバーとともに、早期の全線整備に向けて、国に協力を求める要望書を提出しました。
自民本部では「建設反対協議会ではない」
その後、知事が姿を見せたのは、自民党本部。ここではリニアに関する特別委員会が開かれ、川勝知事をはじめ、リニア沿線都府県の知事らが出席しました。冒頭、古屋委員長のあいさつでは、川勝知事に向けたのか、こんな発言が…。
自民党リニア特別委員会 古屋圭司委員長:「この同盟会の正式名称は、リニア中央新幹線建設促進協議会(期成同盟会)で、建設反対協議会(期成同盟会)ではない。沿線の知事として、国民として、われわれ国会議員として、リニア建設に向けてしっかり調整をして進めていくということが何よりも大切。各知事からは忌憚のない意見を頂戴したい。時にはバトルがあってもいいと思う」
「バトルも辞さない」そんな言葉で始まった特別委員会。会議中、古屋会長からは釘をさす言葉が…。
古屋委員長:「期成同盟会に入った以上は同じ方向を向くべき。全国様々な事業で、皆問題を抱えているが、知恵を出して解決している」
川勝知事「励ましの言葉だと思った」
1時間以上に及ぶ会議を終え、取材に応じた川勝知事は…。
Q.古屋会長から最後に厳しい言葉が飛んだと思うが?
A.「いや、厳しいというより励ましの言葉だと思った。この気候のいい時に特別委員会の先生方には燕沢。これは国交省の山体崩壊の頻度で一番危ないところと言われていて、その現場を見てもらうとわかる。現場を見ればそれが不適切であると、一目瞭然であると私は思っているので」
Q.長崎知事がボーリングに、改めて理解を求める発言が委員会内であったが?
A.「山梨県の長崎知事が、高速長尺先進ボーリングについて明解な見解を繰り返されて、この問題は極めて全体を左右しかねない重要な問題なので、期成同盟会の中で部会を作ったらどうかと総会で話して、今、特別委員会で大村会長がそれをやっていくとおっしゃって、ですから我々が持っている情報を共有できる。それが決まったのは非常に大きい。ですからこれは期成同盟会に入った大きな価値だと思う。今回の長崎知事の発言によって、全期成同盟会の関係者に共有できるようにしていこうと、同時にそれを解決するために知恵を絞ろうということになった」
「静岡空港新駅」の提案も
一方、期成同盟会の中では、リニア開業よるメリットの一つとして、 ひとつの案を検討する考えが示されました。
山梨県 長崎幸太郎知事:「国際空港と高速鉄道が結節する「静岡空港新駅」については、これまでに例のない画期的な駅になると考えている」
山梨県の長崎知事が「これまでにない」と語ったのは、リニアの全線開業後、静岡空港に新駅を建設する構想です。
牧之原台地にある静岡空港は、その真下を東海道新幹線が走っています。これまで日本には、空港と隣接した新幹線の駅はなく、県もこの新駅建設に向けて、2014年から6年間にわたり、総額およそ4750万円の調査費を計上してきました。
一方、JR東海は、掛川駅と静岡空港の間が短く、東海道新幹線の高速性が生かせなくなるとして建設の可能性を否定しています。
今回の長崎知事の提案に、川勝知事は…
静岡県 川勝平太知事:「空港新駅の可能性を言ってもらいこれは本当にありがたいこと。ただ、牧之原台地は大井川の右岸にあり、空港自体も大井川の水によっている。水の問題と、この空港新駅の問題は関係しているので、会長のリーダーシップのもと、研究会が建設的に行われることを切に望む」
(とびっきり!しずおか 土曜版 6月3日放送)