復活Vの渡邉彩香、地元静岡・熱海市に戻っての調整を宣言 拠点の函南GCにも感謝の思い
静岡県熱海市出身の渡邉彩香(26=大東建託)が、今季開幕戦で約4年7カ月ぶりの「復活優勝」を飾った。通算7アンダーで首位に4打差4位タイからスタートし、5バーディー、1ボギーの68でまとめ、通算11アンダーでフィニッシュ。昨季賞金女王で同スコアの鈴木愛と演じたプレーオフでは、1ホール目でバーディーを奪って決着をつけた。渡邉はツアー4勝目。2018年からスランプに陥り、2019年は賞金ランキング115位だった。しかし、新コーチのもとで本来のスイングを取り戻し、新型コロナウイルスで開幕戦が約3カ月延期された間も、腕を磨き続けていた。優勝会見では、苦しんだ日々を振り返り、今後の目標も口にした。
―おめでとうございます。 首位と4打差でしたが、どんなプランでいこうと
渡邉 長く勝っていなかったので、あまりガツガツやっても空回りになるだけかなと思っていたので、ちょっと欲を抑えて、1ショット、1ショット、オフにやってきたことをしっかりとやるというのを意識していました。
―鈴木愛選手とプレーオフになった時の気持ちは
渡邉 (スコア)ボードを一切見なかったので、歓声もなかったし、あんまり優勝、優勝という意識は、今までの優勝よりも薄かったと思います。また、ずっと苦しんでいたこともあったし、開幕戦でいきなりここまで来たというのは、自分の中では「しっかりできたな」という感じでした。プレーオフ自体も初めてでしたが、そこで初めて「優勝したいな」という意識が出たと思います。
―最後のバーディーパットを打つ前の気持ちは
渡邉 下りのスライスラインだったのですが、自分が一番好きなラインだったので、「入れる」とかそういった気持ちよりかは、「自分の好きなラインだな」という感じで、打ちました。
―入った瞬間の感情は?
渡邉 うれしいのと、ずっとたくさんの方が気にかけて、応援してくださったので、その応援に応えられて「ホッ」とした気持ちでした。
―この数年、苦しんでいたのは、どういった点でしょうか
渡邉 ドライバーを中心に、ティーショットの不安が大きかったです。自分の持ち味はドライバーだったので、そこがなかなか気持ちよくできないことが、不調の要因でした。そして、このオフは(持ち球の)フェードボールの徹底を取り組んで、どんな場面でも、しっかりと左に出して、右に曲げる球を打てるように、スイングを1から見直しました。
―手応えをつかんで挑んだ大会だった
渡邉 そうですね。本来の開幕戦くらいには、自分でもいい感じに打てるようになっていたので、試合がいつ始まってもいいように、引き続きその調子をキープするようなことはしていました。
―本来の開幕時にいい調子だったとのことですが、緊急事態宣言中は、どのように過ごしていましたか
渡邉 ずっと、お世話になっている地元のゴルフ場(函南GC)で、お客さんが出てからとか、少し練習をさせてもらったりとか。いつも通りは、なかなかできなかったですが、いい状態を鈍らせないように、うまくタイミングを見つけて、練習をするようにしていました。
―今大会は、コロナ対策をしていましたが、どのように感じていましたか
渡邉 万全に対策していただいているのを選手みんなが感じていたと思います。もちろん、感染しないように気を付けていたのですが、安心してプレーできたなと思います。
―1日の順延の影響は
渡邉 雨でもしかしたら、最終日が中止になってしまうのでは? という気持ちもあったので、プレーできるだけでもうれしかったです。
―5年間勝てなくて、リオ五輪前も悔しい思いをされて、最もつらかった時期は
渡邉 昨年と一昨年の2年間ですかね。
―その間に「黄金世代」など、いろいろな選手が出てきてました
渡邉 選手とか、周りというよりも、自分の好きなクラブが気持ちよく打てないという苦しさが大きかったです。変な話、自分からドライバーをとったら、何が残るんだ? という感じでした。
―今はフェードに戻されていますが、一時期、ドローに取り組んでしましたが
渡邉 リオに行けなくて、その中で「もっとこうしたい。ああしたい」と自分に足りない部分ばかりが、浮かんでしまったので、そういうのもあって、フェードの幅を狭めてストレートぽく打ちたいとかが出てきて、迷いにつながったなと思います。
―それが一昨年、昨年と深みにはまってしまって?
渡邉 はい。そう思います。
―昨年の夏頃は、試合でドライバーをバッグから抜いたと思いますが、その決断をした時の心境は?
渡邉 好きなドライバーが入っていると、打ちたくなってしまうので、そこでまたマイナスなイメージがついて、繰り返していたので、1回抜いて、ドライバーに休憩させてやろうという思いでした。
―川口キャディーが泣いていて、友人も祝福してくれて、そういった方々の顔を見ての気持ちは
渡邉 私も涙が出そうでした。やっぱり、「苦しかったよね」という話を言われた時は、みんなの顔が浮かんで、ちょっと泣いてしまいました。
―特にやるせなさを感じた時は
渡邉 たくさんスポンサーをしていただいて、そのホステス大会が年間通して何試合かあって、そこで結果が一切残せないというのが、去年にあったので、自分でも不甲斐ないし、こんなプレーでプロとして失格だなという気持ちになりました。
―スイングで左に突っ込む癖があったとのことですが、ずっと直そうと思っていましたか
渡邉 直したいとは思っていましたが、どう直していいかというのもあり、去年の途中から(新しい)コーチに付いて見てもらうようになりました。そこで直し方をいろいろ提案してもらって、自分に合う、合わないというか…このイメージは嫌とか、振っていて気持ち悪さがあるのは嫌だったので、それをコーチに素直に言って、「これは気持ち悪いから試合では打てなさそうだ」とか。そういう話し合いをしたり、いろんなアプローチで取り組んできました。
―コーチはどなたでしょうか
渡邉 中島規雅さんにお世話になっています。
―ティーショットが安定してきましたが、そのメカニズムは
渡邉 上体が強くなって、突っ込んでしまうのが癖だったので、球に当てるまでは、その場で回転できるような意識を強く持って、練習に取り組んできました。
―大会は、無観客で行われましたが、歓声が聞こえない分、自分のプレーに集中できたというのはありましたか
渡邉 ボードも一切見ていなかったので、そういった面では集中できた部分はあったと思います。でも、ギャラリーの方々がたくさんいた方が、自分の気持ちが盛り上がるので、そこは寂しい部分もありました。でも、今の自分の状況を考えたら、そのお陰で自分のプレーに集中できたかなという気持ちもあります。
―今日、最高の結果が出て、あらためてゴルフに対する思いは
渡邉 ゴルフがすごく苦しい時期があったので、(今日は)すごく楽しかったです。自分の好きなドライバーを気持ちよく打って、それがこうやって結果につながって、優勝がついてきてくれたので、最高の気持ちです。
―調子が悪い時期もずっとゴルフが大好きでしたか
渡邉 そうですね。「やめたい」とか「嫌い」とかはなかったですね。
―今後は、どのように調整して
渡邉 引き続き、このいい感じを鈍らせないように、地元(静岡県熱海市)に戻って、変わらずに一生懸命にやります。
―次の大会に向けての意気込みを
渡邉 久しぶりに勝って、幸先よく開幕戦で優勝できたので、しっかりとこの状態をキープして、次の試合でもいいプレーができるように、準備を怠らずに頑張りたいと思います。