どうなる「ふるさと納税」…基準厳格化で戸惑う自治体も 10月以降は値上げが加速か 静岡

 年々利用者が増加している「ふるさと納税」。総務省は1日、全国での昨年度のふるさと納税寄付総額が9654億円となり、3年連続で過去最高を更新したと発表しました。県内1位は焼津市でおよそ76億円。全国でも11位にランクインしました。しかし、今、このふるさと納税にも値上げの波が押し寄せてきています。

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静岡・焼津市ふるさと納税課 山下浩一課長:「返礼品自体が原材料費の高騰によって値上げがあるので、そういったことは昨年度から相談はある。相談していく中で結果として寄付金の見直しをするということはある」

10月以降ふるさと納税の値上げが加速か

 海の幸や体験型レジャーなどの返礼品をお得に楽しめるふるさと納税。しかし、今、全国で値上げの波が押し寄せてきています。

 海の幸に恵まれた北海道白糖町。去年6月時点では、1万円の寄付でサーモン1キロを返礼品として受け取れましたが、今では寄付額1万5000円まで値上げするなど、返礼品全体のおよそ8割を値上げに踏み切ったということです。

画像: 10月以降ふるさと納税の値上げが加速か

 さらに10月以降、値上げの波が広がる可能性が。ふるさと納税は、返礼品や送料などの経費を寄付額の5割以下にするというルールがあります。しかし、実際には経費を計上する基準があいまいで、仲介サイトへの手数料や、受領証発行などの経費を含めると5割を超えている自治体が多くありました。そこで総務省は10月以降、その基準を厳格化して適用するようにします。

焼津市「影響はない」

 昨年度のふるさと納税の寄付額が、およそ76億円と過去最高となった「焼津市」。このふるさと納税の基準厳格化で影響はないのでしょうか?

画像: 焼津市「影響はない」

焼津市ふるさと納税課 山下浩一課長:「本市(焼津市)では寄付の受領証の発行にかかる経費であったり、そういったすべての経費を含めて、元々5割以下にしているので、今回のルール改正によります寄付金の見直しというのは考えていない」

県内35市町に取材すると…

 焼津市は「影響はない」ということでしたが、県内の他の自治体はどうなのでしょうか。番組では県内35の自治体に、ふるさと納税の基準厳格化についてリサーチしました。

画像: 県内35市町に取材すると…

 その結果(7月26日時点)は19の自治体で「影響はない」ということでしたが、「現時点ではっきりとは言えないが、状況によっては一部値上げも検討せざるを得ない」という回答をした自治体は半数近くの16に上りました。そのうちの1つが、ふるさと納税の寄付金額が県内で6位の「御殿場市」です。

御殿場市「現時点ではクリア。これ以上、経費が膨らむと厳しい」

 御殿場市の昨年度のふるさと納税寄付金額は、およそ14億6000万円。ふるさと納税を担当する課によりますと、寄付金を受け取った後の受領証明書の送付に関してはこれまで経費に含めていませんでした。

画像: 御殿場市「現時点ではクリア。これ以上、経費が膨らむと厳しい」

御殿場市魅力発信課 鈴木愛さん:「経費は調査の結果、当市(御殿場市)としては50%近くには近づいてしまうが、それ(50%)を下回る数字ではある。なかなか自治体としても、対応に苦慮したところではある」

 ふるさと納税の基準厳格化に伴う経費については、現時点ではクリアできるものの、これ以上、経費が膨らむと厳しい状況。さらに追い打ちをかけているのが物価高騰などの影響だといいます。

御殿場市魅力発信課 鈴木愛さん:「去年から今年にかけては、やはりコロナ禍の影響や原料高騰の各種影響で、(事業者から)値上げの相談をいただくことが多くなっている。今回のことに限らず、やはり返礼品の値段の上昇があれば寄付額に転嫁しなければならないので、そちらは順次対応している」

街の人は…

画像: 街の人は…

 やはり原材料費や燃料費の高騰は、ふるさと納税にも影響を及ぼし始めているようです。街の人は…。

静岡市内(60代男性)「値上げはしょうがないです。それに比例して(値上げは)すればいい、コストがかかるんだから!」

静岡市内(50代男性)「ふるさと納税を、(また)やってみたいとは思いますけど。金額がどのくらい上がるかですよね。1割程度だったら良いと思う」

静岡市内(50代女性)「10月からまた(ふるさと納税のルールの)見直しがあるということだったので、もう一つ二つぐらい検討しているものがあったので、9月中に(ふるさと納税)しようかなと思っている。」

 値上げに関しては一定の理解が得られているようですが、10月以降、基準適用の厳格化で返礼品の選択肢が少なくなる可能性も。

基準が変わる「熟成肉」「精米」

画像1: 基準が変わる「熟成肉」「精米」

 さらに総務省は、10月から返礼品に「地場産品基準」を導入します。その基準が適用されるのは「熟成肉」と「精米」。これまで「熟成肉」と「精米」は、その自治体で加工していれば返礼品として認められていましたが、10月からは、その自治体で生産をしていないと認められなくなります。

さの萬 佐野佳治社長:「熟成肉と精米に限られたことに関しては、私ども良心的にやっている業者からすると非常に違和感があります」

 こう話すのは富士宮市で「熟成肉」を返礼品として提供している「さの萬」の佐野社長。「さの萬」は100年以上続く老舗の肉店。肉の販売に加え、佐野社長は “熟成肉”の国内第一人者として、全国的にも知られています。

 「さの萬」の「熟成肉」は、総務省から、今回の基準見直しがあっても、返礼品として「問題はない」との回答を得ています。しかし、熟成肉や精米に限定されたルールに戸惑いもあるといいます。

画像2: 基準が変わる「熟成肉」「精米」

さの萬 佐野佳治社長:「私はそういう点も疑問がある。うどんどうなの、そうめんどうなの、その小麦粉作ってすべてでやっているお宅はほとんどないわけ。ですから、そういう加工度の問題で、お酒もやはり、加工して精米して作るから地酒になっているわけで、加工度の高いものは、私は地元産という形にした方がいいのではないかと思っている」

 10月からの基準厳格化で寄付額の値上げなどの動きが予想される「ふるさと納税」。利用者にとっても、寄付をする自治体選びに影響が出てきそうです。