社長は小学生と中学生!? 新商品のスイーツの売れ行きは 浜松市

 静岡県を代表する菓子メーカー「春華堂」。浜松市内の生産工場で新商品の開発会議が行われていました。この日、話し合っているのはパッケージのデザイン。

画像: 社長は小学生と中学生!? 新商品のスイーツの売れ行きは 浜松市

春華堂 企画デザイン課 鈴木良治さん:「全部お金に関わっていること。少し議論をしていただいたうえで、デザインの方向性を決めていきたい」

共同開発するのは6人の小中学生

 春華堂の担当者が予算を含むシビアな話を投げかけていたのは、新商品を共同開発している子どもたちです。小学5年から中学2年までの6人が会議に参加していました。

小6女子:「濃い色を使った方が見にくいかもしれないので」

中1男子:「本当にこれ今後の売り方になると思う」

自ら考える力を養う

 これは牧之原市の企業「グローカルデザインスクール」が行っている、農業を通じて地域の将来を担う人材を育成するためのコミュニティスクール「ジュニアビレッジ」。

 農作物の生産、商品の企画・販売、さらには年度末の事業報告会まで、1年間のプログラムで会社の事業展開を体験しながら学びます。

グローカルデザインスクール 村田和美さん:「自分たちの頭で考えるということに重きを置いています。株式会社の1年、ビジネス体験をできるというのは、全国でも珍しいかなと思っています」

 子どもたちが実際に「会社」を運営することで、自ら考える力を養います。取材前には番組スタッフに対して…

小6女子(社長):「いまお時間いいですか? 浜松ジュニアビレッジの社長をやっています」

中1女子(社長):「同じく浜松ジュニアビレッジの社長をやらせていただいております」

2人から名刺をいただきました。

画像: 自ら考える力を養う

 社長は小学6年生と中学1年生の2人。2人からご挨拶をしていただきました。「ジュニアビレッジ」では営業担当、企画デザイン担当など、必ず1人1つ肩書きをもっています。この日は、新商品のパッケージデザインを決める会議。子どもたちが生産したサツマイモを使って、「カタラーナ」という、スペイン発祥でプリンに似たスイーツをオリジナル商品として販売することになったのです。

2案に絞られたデザインからどちらを採用するか

 サツマイモの生産の指揮をとった、農業担当の小6男子。これまでに、何度も試食を重ねて納得できる味を追求してきました。パッケージも子どもたちのアイディアをもとにしたデザイン。問題は、A案とB案、ふたつに絞られたうちのどちらを採用するか…。

画像1: 2案に絞られたデザインからどちらを採用するか

中1女子(社長):「私がA案がいいと思った理由は私たちが大事に育てたサツマイモの印象が、すぐに見ている人に伝わる所です」

企画デザイン担当Aさん 中2女子:「Aとかは安直というか、そのままだけど、B案だったらこれなんだろうと思って、手に取って調べてもらったりして、ジュニアビレッジのことを知ってもらえるかもしれない」

企画デザイン担当Bさん 中2女子:「私はB案がいいと思う。理由は自分たちがした活動を1本の線で描くことで、一体感が生まれて買う人も頑張ったんだなってわかる」

中1女子(社長):「このB案だったらサツマイモというのが伝わりにくいけど、A案だったらサツマイモが伝わる」

企画デザイン担当Aさん 中2女子:「お芋で作ってあるよってわかっただけで買うかという話、売れなかったら元も子もない」

 話し合いの結果、B案に決定。さらなる改善を求める意見も。

小6女子(社長):「もう少し文字の色が濃い方がいいと思う」

中1女子(社長):「A案のとろっとした感じが、B案にも出ればいいなと思います」

春華堂 企画デザイン課 鈴木良治さん:「このことですよね? ちょっと検討します」

 子どもたちの真剣な姿勢を、大人たちもしっかりと受け止めています。

春華堂 企画デザイン課 鈴木良治さん:「大人、プロになると、考え方が凝り固まっている所がある。非常に柔軟な発想。固定観念にしばられない発想というのがすごい」

画像2: 2案に絞られたデザインからどちらを採用するか

 そうして完成したのがこちら…「琥珀(こはく)カタラーナ」です。彼らの活動をモチーフにした特徴的な一筆書きのデザインに加えて、中学生の社長が要望したA案のトロッっと感も採用された仕上がりに。

大型店で販売 声が出ず…

 そしていよいよ、浜松市の「イオンモール浜松市野」で初めての販売会です。オープンから30分。なかなか声をかけられません。

画像: 大型店で販売 声が出ず…

 中学生が思い切って声を出します。
「いらっしゃいませ サツマイモを使ったスイーツを販売しています」
「ぜひひとつ食べてみてください」
「春華堂さんとのコラボ商品です」

 すると、お客さんも興味を持ち始めました。

 多くの人が買いに来てくれましたが、実はそのほとんどが知り合いでした。

グローカルデザインスクール 村田和美さん:「来週は(静岡市の)松坂屋さんで販売します。お知り合い需要が本当に無い。初めて販売してみて。いろいろ反省とか気づきとかあったと思う。改善していい感じで来週につなげたい」

営業担当 中1男子:「やっぱり見るだけ見て帰っちゃう方が多かった。その人らをどうやってもってくるか」

 初日の販売をこう振り返ったのは、中学生の男子生徒。

ディレクター:なぜセールス担当に?

営業担当 中1男子:「初対面の人とコミュニケーションとるのが苦手だったので、直せたらなという感じで。人前で売るというのが初めてだったので、いろいろ疲れました」

「足を止めてくれる人が少なくて、心が折れそう」

 商品を説明するポップなどのデザインを手掛けた企画デザイン担当の中2女子は。

「足を止めてくれる人が思ったよりいなくて、心が折れそうです。次に生かすなら、もっと字を大きく何をどうやって売っているのか誰が売っているのかわかりやすいポップをつくっていきたい」

 「会社」を経営するやりがいを感じる半面、苦労とも直面した子どもたち。彼らはなぜ「会社」で働くのでしょうか?

 中学生の社長には、将来のビジョンがありました。

中1女子(社長):「(将来は)政治に関わる仕事をしたいと思っていて、今の経験が生きてくるんじゃないかと思います」

ディレクター:ジュニアビレッジ(会社)ってどんな所ですか?

中1女子(社長):「自分を客観的に見ることができる場所かなと思います。(以前)社長ってどんなイメージって議論したんですけど、「気取っている」とか「偉そう」とかそういうのが出てきて、でも一方で「皆のことを見ている」とか「沢山の意見を吸収できる」とも出た。誰かが停滞した時に笛を吹いて大丈夫?って言ってあげられるような存在の社長になりたいなと思っています」