沼津市の住宅前に衰弱した17匹の猫が入ったケージが…「多頭飼育」の現状と課題
ゲージいっぱいに押し込まれた猫たち。
6月7日の夜、沼津市に住む80代女性の住宅の前に衰弱した17匹の猫がケージに入れられ、投棄されていました。
これはその時に撮影された映像です。
キャットファースト三島 代表:
「(猫の状態は)一言で言うと詰め込まれていた。奥の方は重なり合っていた」
こう話すのは連絡を受けて猫を保護した団体の代表。
ケージの中には成長した猫が2匹、子猫が15匹、詰め込まれるように入れられていました。
一部の猫は衰弱がひどく、こちらの団体では5匹を保護しましたが、20日までに子猫4匹が死んでしまったということです。
キャットファースト三島 代表:
「猫は1回の出産で少なくて3~4匹、多くて6~7匹生む子もいる。通常外の子は産む子は2回から3回だが、家の中の子は下手すれば4回くらいうんじゃう子もいるので、それで圧倒的に増えててしまう」
保護した団体の代表は、不妊や去勢の手術をしていなかった猫が短い期間で子どもを生んだことで、猫が一気に増え、管理が行き届かなくなった多頭飼育崩壊が起きたのではないかと指摘しています。
キャットファースト三島 代表:
「生活困窮や精神的に疾患がある方、社会的弱者の方が周りに助けを求められない。その家族も飼っている方が嫌だと言えば引き下がってしまう。そういう環境が多頭飼育崩壊を起こす」
犬・猫保護の現状
県内では、おととし、富士市の住宅で109匹の犬を放し飼いにしていた女が、動物愛護管理法違反の疑いで逮捕されました。
適正な密度を超えた状態で飼育された犬には皮膚病や歩行障害などの症状が見られ、衰弱した状態で保護されたといいます。
こうした動物保護の現状はどうなっているのでしょうか
こちらは県内で殺処分された犬と猫の数のグラフです。
猫は犬と比べて、管理されていない、いわゆる野良猫が多く、繁殖力も強いため、殺処分される数も多いですが、 犬、猫とも、ここ数年は減少傾向で、2015年度は1939匹が殺処分されていましたが、2022年度は102匹と、20分の1ほどに減っています。
一方で、こんな課題も・・・
県衛生課 阿部冬樹技監:
「多頭飼育にかかる苦情件数は、令和3年度より4年度の方が増えている」
保健所に寄せられた多頭飼育に関する苦情件数は犬・猫合わせて、2021年度は123件、次の年は136件と10件以上も増加しています。
そんな中、去年県は多頭飼育崩壊を早い段階で見つけ、解決するためのチェック表を作成しました。
県衛生課 阿部冬樹技監:
「多頭飼育崩壊に至る可能性があるケースがあったらそれを保健所に相談いただくということをお願いしている。
まだ頭数が少ない、管理ができる、何とか解決ができる段階で早期に探知・着手して問題化する前に解決しようという取り組みを今後も進めていきたい」
保護猫カフェ
こうしたなかで保護猫を飼育している現場では─
こちらは静岡市内にある保護猫カフェ 。
現在いる40匹の猫、すべてが保護猫です。
ネコカフェファング 動物取扱責任者 大石海介さん:
「コンセプトとしては保護猫カフェになる。里親譲渡型という形になるが、ここにいる猫たちはすべて保護猫で、野良猫であったりとか人為的な要因によって家がなくなってしまったというような猫たちがここに一回保護されてきて、そこから相性のいい里親さんが見つかれば新しい生活が始まる。そのための仮の住まいのような形」
こちらでは年間10匹から15匹が譲渡されています。
一方で保護猫の数は3年前のオープン当時から横ばいの状態が続いているといいます。
カフェにいる猫を紹介してもらうと・・・
ネコカフェファング 動物取扱責任者 大石海介さん:
「この子は名前をアイラといって女の子だが、ブリーダーの崩壊現場から保護した子になる」
ブリーダーの崩壊現場から保護されたアイラちゃん。
保護当時はお腹には子どもがいて、今では息子のシューくんも元気に育っています。
ネコカフェファング 動物取扱責任者 大石海介さん:
「彼は名前をラエドと言う。今年で4歳になる猫だが、浅間神社の方で保護された」
様々な理由で保護された猫たち。
こうした猫がなくなるには、どういったことが必要なのでしょうか。
ネコカフェファング 動物取扱責任者 大石海介さん
「多頭飼育崩壊の危険性や終生飼養、一度迎えたらその命が終わるまでずっと共に過ごすということがどれだけ大切かを意識していない方々に対して、どれだけ大事なことなのかということを伝えていくこと、それは我々もやっていこうとは思っているが、昨今かわいいという言葉が一人歩きしているような気もする。かわいいから正確な知識を身に着けてこの子が不条理や不利益を被ることがないようにしようと。そこまで考えてもらえればより良い猫と人との共生が望めると思う」