【特集】元お笑い芸人が高齢者向けデイサービスの施設長に 「人の笑顔を見ることが好き」変わらない思い

和彩花 施設長
河合昇さん:「皆さんこんにちは。これなんの取材に来てくれているのかなと思う人もいると思うんですけど 何を隠そう浜松で美人さんしか来ないデイサービスあるよと。そういう噂を聞きつけて取材に来てくれたわけではございませんと。あはははは、ねえすみません」

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 部屋の中が明るい笑い声に包まれているのは、浜松市浜北区東美薗にある高齢者向けデイサービス「和彩花(わいか)」。

中学生からの夢だったお笑い芸人として活動

軽快なトークの中でボケやツッコミを交えながら利用者を笑顔にする施設長の河合昇さんはちょっと変った経歴の持ち主です。

和彩花 施設長
河合昇さん:「東京吉本所属の芸人をやっていました。元々お笑いを見るのも好きで人を笑わせることもずっと好きだったのでその延長線上で芸人を目指しました」

 浜松市出身の昇さんは大学卒業後に上京。養成所を経てお笑い芸人として活動していました。中学生からの夢だったという職業に就き、華やかなステージで活躍することを目標にしていましたが、その生活は厳しく、金銭的にも苦しいものでした。

生活のために始めた介護のアルバイト…そして芸人生活にピリオド

和彩花 施設長
河合昇さん:「いわゆる売れない芸人でして 月に1万の月収とかで。最初は好きなことやっている喜びの方が強かったんですけど、やってくうちにこのままで大丈夫かな、とかいう不安な気持ちもありながらやってました」

 生活費に困った昇さんは、昼間はお笑い芸人、夜は介護施設でアルバイトと2足のわらじで生活することにしました。しかし、この介護施設で後の人生を決める転機が訪れます。

和彩花 施設長
河合昇さん:「夜勤中なかなか寝られないご利用者様にお茶を出してテーブルでお話するっていう時間があるんですけどその時にあるおばあちゃんが私の目をまっすぐ見て『あなたはお笑いよりもこの仕事の方が向いているからって』っていうことを言われまして。それがなんか忘れられないでずっと頭に残っていました」

 介護の楽しさや奥深さに加え、お笑い芸人生活にはなかった達成感があったといいます。

和彩花 施設長
河合昇さん:「日中だれも笑わない舞台にでて、夜勤に行って。よーきてくれたねなんて言って受け入れてくれて、僕の話しで笑ってくれて。介護の方が人を幸せに出来てるなっていうような、そんな思いでした」

 昇さんはこの出来事をきっかけに5年にわたったお笑い芸人生活に区切りをつけます。

悠紀子さんとの出会い、結婚、そして施設開業

また、働き始めた都内の介護施設では、後に妻となる悠起子さんとの出会いもありました。

和彩花 
河合悠起子さん:「とてもユニークな人で、いくらスベってもへこたれない精神力のつよい人だなと思いました。介護っていうと一概ではないですけど、暗いイメージもあったりもするんですけど、とにかくいつも笑顔で前向きなので、それに際して感銘を受けて一緒に頑張りたいなと思いました」

 お互いの介護に対する考え方に惹かれ合った2人は、結婚を機に昇さんの地元である浜松市で介護施設を開くことにしました。5年前から経営者として施設を運営する一方、利用者向けのレクリエーションから送迎まで行うなど忙しい毎日を過ごす昇さん。

 普段の様子を利用者に聞いてみると…

Q、昇さんのお話し聞いててどうですか?
利用者:「明るいですよ、元気がでます」
利用者:「朗らかな方とっても優しい方。だれにでも笑顔を見せてます」

こだわりの食事は利用者から大好評

施設では一人一人に寄り添った介護を大切にすることに加え、毎日の食事にもこだわっています。

和彩花 
河合悠起子さん:「地産地消にこだわってできる限り手作りで、あとはいろどりですとか盛り付け。五感に響くというか、喜んでいただけるようなお料理を作らせていただきたいと思っています」

 悠起子さんは元イタリアンレストランの店長で、介護食アドバイザーの資格を持ちます。自然と笑顔になるような、いろどり豊かな食事は利用者からも好評です。

利用者:「副菜を作って下さって美味しいですよ。食事はもう言うことなしですよ」

場所が変わっても思いは…

人の笑顔を見ることが好き― そんなきっかけでお笑い芸人の道を歩んだ昇さん。華やかな劇場という夢に描いた場所ではなくても、芯にある思いは変わらず、この新たな舞台で活躍したいと話します。

和彩花 施設長
河合昇さん:「介護と地域の方々が一緒になって楽しい笑顔になるような場所でありたいなっていう。お笑いも介護も共通しているのが目の前の人を全力で笑顔にするっていうことなので。いまは目の前の相手の人とか皆さんが、いかに幸せになるかということを考えて介護に向き合っていきたいと思っています」