浜名湖の冬の味覚「カキ」がピンチ 去年は例年の10分の1 減少の原因は黒潮、赤潮そして…か 浜松市
冬の味覚の代名詞、カキ。これからまさに旬を迎え、毎年、その味を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。
利用客(静岡・湖西市在住):「冬になるとやっぱりカキフライいいですよね。おいしかった」
利用客(愛知県)
Q.お目当ては
A.「一番はやっぱりカキ。すごく大きくて甘くておいしかった」
待ち焦がれたシーズン到来に、飲食店からも期待の声が上がっています。
日本料理店 魚あら(浜松・西区) 山田哲也社長
「待ちに待ったという感じ。去年が結構悪かったので、今年はだいぶ良くなって、身も大きく育っておいしいと思う」
そのカキを静岡県内で盛んに養殖しているのが、浜松市にある浜名湖。こちらで獲れるカキは肉厚で濃厚な味わいが特徴で、今月に入り、待望の収穫シーズンを迎えました。
ところが、そんな130年以上の伝統を持つ浜名湖のカキ養殖が、いま深刻な危機に見舞われているんです。
カキ激減の原因は黒潮に赤潮、それに天敵の増加
薄っすらと日が昇る、朝6時過ぎの浜名湖。その中を漁船で養殖場へと向かうのは、漁師で地元の養殖カキ組合の組合長も務める夏目さんです。日の出とともに、カキの水揚げを始めますが…。
舞阪町養かき組合 夏目善好組合長:「サイズ的には良いと思うけど…。なんせ、(カキの)付きが悪すぎて…。(一つ)7キロ~8キロぐらいだと思う、少し(カキが)付いていると10キロぐらいあるかもしれないが、でも良い時なら20キロ近くあるもんね」
近年、浜名湖のカキ養殖業者を襲っているのは、深刻的な不漁。
例年80トンほどで推移していた漁獲量は、3年前から減り始め、去年はわずか8トンと例年の10分の1ほどになり、これまで類を見ないほどの大不漁となっています。
(2018年:60トン、19年:37.1トン、20年:7.9トン)
その原因は自然環境の変化。
黒潮という暖かい海流が浜名湖に流れ込み、温度差によってカキが死滅してしまったり、赤潮と呼ばれるプランクトンの異常増殖によって、カキが呼吸や栄養吸収を妨げられるなどの被害が発生していたのです。
そして現在、それ以外にもカキの養殖に大きな影響を与えているものがあります。それが、最近浜名湖で数を増やしているクロダイによる食害です。
舞阪町養かき組合 夏目善好組合長:「クロダイが増えれば、食べる餌がないからあさりを食べる、あさりを食べ尽くして、今度はカキを食べるみたいな負の連鎖が続いているんじゃないかと思う。昔はクロダイも漁師がとっていたが、ここ数年あまり取らない、やはり安いみたいで。それが年々続いていってクロダイを取る天敵がいないからどんどん増えていく」
夏目さんの養殖場では、このクロダイによる食害が深刻化してきていて、2年前からは養殖場を網で囲うなどの対策をしています。
しかし、まだうまく成果をあげることができず、今年は今シーズンの収穫分だけではなく、来年用の養殖にも影響が出ていると言います。
実際に、そのカキを見せてもらうと…。
舞阪町養かき組合 夏目善好組合長
「これは今年の9月につけた種(カキの稚貝)で、たくさんついているでしょ?
これが一個一個のカキ、まだ親指ぐらい。網で囲うことで、これだけ上手く成功している感じ。今年の成功しているやつはこれだけついているという感じ」
浜名湖で行われるカキの養殖は垂下式と呼ばれています。岩などに付着して成長するカキの性質を利用して、円形上に加工した針金にホタテの貝殻を通し、その貝殻にカキの稚貝を付着させることで養殖を行います。
クロダイによる食害がないものは、このように、全体的にギザギザした形となりますが…。
舞阪町養かき組合 夏目善好組合長
「これが失敗しているやつ。本当に何もついてないような感じ。種がもう食べられちゃった。白くなっているのがあるじゃないですか。それは食べられた跡。もう食べられた後なので、カキがついていない感じ」
比較するとご覧の通り。
対策がうまくいった方は、ホタテの貝殻にカキの稚貝がついているのが分かりますが、クロダイに食べられてしまった方は、ホタテの貝殻がむき出しのような状態になり、稚貝はほとんどついていません。
舞阪町養かき組合 夏目善好組合長
「これだけの違いがあるということ。今年水揚げしているカキはこんな状態で育ったカキがいま剥いている感じ、だからあんまりついていない」
こうした被害を受け、浜名湖のカキ養殖業者が一番ダメージを負ったのが収入面です。
夏目さんが組合長を務める舞阪町のカキ養殖組合は、おととしから、大不漁によって例年の1割ほどしか収入を得られませんでした。
養殖のためには毎年数百万円ほど資材購入費などがかかりますが、去年は養殖ができる必要最低限の資材しか購入せず、なんとかやりすごしたと言います。
舞阪町養かき組合 夏目善好組合長
「昨シーズンは水揚げがほとんどないので、最低限の資材のみ。場所を直す竹? と種の購入とか、最低限の資材しか購入していない。カキ漁は先に資本を投資しているので、ある程度の水揚げで返ってきてくれないと次の年に繋がっていかない。
そこで組合が今年始めたのがクラウドファンディング。今年4月からプロジェクトをスタートし、5月には目標の200万円を2倍以上上回る、およそ524万円の支援金が集まりました。
舞阪町養かき組合 夏目善好組合長
「これはクラウドファンディングで皆さまからご協力していただいたおかげで購入した仙台種(稚貝)。皆さまのご協力のおかげで本当にたくさんのお金が集まって、なんとか仙台の種を購入することができた、ありがとうございます。
この小さいのが全部種です。(実際に見せながら)今のところは順調に育っている。いつもならさっき見た地種の失敗作のように丸坊主になっていたが、今年はこうやってついているのが目に見えて分かるので大変期待できる。
一年頑張って生きてください、としか言いようがない」