「大好きなお姉ちゃんがお星様に…」 津波にのまれた園児…見つかった場所に咲いた1輪の花が16都府県に… 浜松市で写真展
富士市生まれの愛梨ちゃん
3月初め、浜松市中区の花壇に咲いた一輪のフランスギク。
愛梨ちゃんの妹・珠莉ちゃん
「2011年3月11日。大好きなお姉ちゃんがお星様になりました。お姉ちゃんが見つかった場所にお花が咲きました。1輪だけ持ち帰った花が命をつなぎ、たくさんの場所で咲いています」
3月11日。浜松市で始まった写真展。
佐藤愛梨(さとう・あいり)ちゃんは2004年、富士市で生まれました。2歳の時、お父さんの転勤で、宮城県石巻市に引っ越し。翌年、3歳年下の妹・珠莉(じゅり)ちゃんが生まれ、すっかりお姉ちゃんです。
11年前の3月11日、愛梨ちゃんはバスで幼稚園から家に帰る途中、津波に飲まれました。
1輪から育った花が16都府県75カ所に
鈴木恵子さん(62)。育てているのは、津波にのまれた愛梨ちゃんの最期の場所に咲いたフランスギクです。
「アイリンブループロジェクト」。摘み取った1輪から育った花は、16都府県、75カ所に広がっています。
鈴木恵子さん:「人がいっぱい通るところは咲きやすいと言っていたので、ここは通る人たちがけっこういるものですから、その中で咲いたのかなと思ったり」
3月上旬、花開いた1輪。その周りのつぼみも、ほころびそうです。鈴木さんはこの日、写真展の準備を進めていました。
「前回もこうした。回ってきてここを見るっていう」
飾っていたのは、愛梨ちゃんの妹・珠莉さん(14)が撮った写真です。
鈴木さん:「悲惨な写真とか、そういうものがなくて明るかったり、なんかすごくパワーを感じましたね」
2017年5月の一枚。愛梨ちゃんの周りには、イチゴやお菓子、それにお弁当などたくさんの食べ物が…。タイトルは『おなかいっぱい』です。
旅も一緒に。愛梨ちゃんの写真を添えた『一緒にTrip』。
『つながっているよね』。こちらとあちら。橋がつなぐもの…。鈴木さんの心には愛梨ちゃんの母・美香さんの『ある言葉』が残っています。
鈴木さん:「『この子が命を落としたから、じゃあみんなは命を落とさないようにしましょうって教訓としてとらえるっていうのは本当はありえなくて、1人も犠牲になっちゃいけない』。応援するとかおこがましいですけど、何か浜松で静岡県でできることをしたいなとその言葉を聞いてすごく思いました」
来場者「命の大切さや珠莉ちゃんの思いが集まっている」
鈴木さんの孫は、愛梨ちゃんと同じ6歳です。
11年前、1人の女の子が犠牲になったという事実が活動の源です。
鈴木さん:「同じように子どもをもつ親だったり、おじいちゃんおばあちゃん、みんな同じ思いをすると思うので、気持ちが重なるものですから、すごく胸が痛いですけど、だからこそ目を背けないで見ていただいて考えていただきたい」
そして、きょう。東日本大震災の発生から11年です。写真展には午前から、多くの人が訪れました。
来場者:「きれいですね。そのきれいさが写真にそのまま映し出されているような感じで、命の大切さやそういう珠莉ちゃんの思いが集まっているのかなと思います」
来場者:「この状況のなかでほっこりした写真もあり、一方でこういう悲しくなるような写真もあって心動かされた。本当は一緒に食べたかったんじゃないかなと」
11年の時の流れ。写真展を通して鈴木さんが伝えたいこと。
鈴木恵子さん:「去年、10年目ということできりがいいようなことになったが、遺族にとっては区切りのいい年はないですし、10年たっても20年たっても苦しみや悲しみが癒されることはないと思うんですね。命を大切にするということを伝えていけたらと思うので、たくさんの方に写真展を見に来てほしい」
富士市で生まれた佐藤愛梨ちゃん。今年18歳を迎えます。
珠莉ちゃん:「この花には名前があります。『あいりちゃん』です。たくさんの人にかわいがってもらえるとうれしいです」
東北の被災地で『あいりちゃん』が咲くのは、もう少し先のこと。
2022年3月11日。生まれ故郷の静岡県では、『あいりちゃん』が一足早い春の訪れをうたっています。