「同じ味が出せるかな」…紅茶づくりを復活させた夫の遺志を引き継いで 日本紅茶発祥の地・静岡
真っ白なクリームが印象的なババロアタルト。花模様のデコレーションもおいしさを惹きたてます。
試食リポート植田結衣子アナ:「ん~、紅茶のいい香り~」
静岡市が発祥の地で、今や全国でも有名なタルト専門店の「キルフェボン」。店内中央に設置された大きなショーケースには、彩り豊かなタルトが常に22種類以上並びます。旬のフルーツや地元の厳選した食材などを使用したタルトが人気で、店がオープンすると、待ち構えたお客さんが続々と店内へ。
なかでも今、人気となっている商品が…。
キルフェボン静岡 千葉優希奈店長:「丸子紅茶、静岡県産のべにふうきをすべての層に惜しみなく使用した、ぜいたくな紅茶のタルトとなっている。クリーム系の中では、断トツで人気の商品となっている」
10月中旬から静岡限定で販売されている人気のタルト。使用されている食材は、“静岡”が誇る国産紅茶の「丸子紅茶」です(期間限定商品「静岡県産丸子紅茶(べにふうき)のババロアタルト」1ピース993円(税込み)ホール(25cm)9936円(税込み)。
客(静岡市60代夫婦)
Q:丸子紅茶のタルトを選んだ理由は?
A.「僕が紅茶好き。きょう妻が誕生日でケーキを選んだ時に丸子紅茶があったので選んだ。楽しみ」
丸子紅茶の茶葉を練り込んで焼き上げたタルト生地に、ライチジャム。その上に、紅茶の茶葉でじっくり煮出したババロア、紅茶ダックワーズと紅茶クリームを重ねていて、まさに“紅茶づくし”。当初、丸子紅茶のタルトは11月末までの販売予定でしたが、あまりの人気に販売期間を12月19日まで延長しました。
数ある“静岡の食材”。なぜ“丸子紅茶”を選んだのでしょうか?
キルフェボン静岡 千葉優希奈店長:「今回、静岡県限定の紅茶のケーキを考案する時に、真っ先に浮かんだのが、静岡の地場の紅茶である丸子紅茶。生産者の村松さんがこだわり抜いて作ったというのが、スタッフの中でも話題になっていて、生産者の独自の発酵技術だとか、そういうところに魅かれて使用することになった」
日頃から静岡の食材にアンテナをはっている店舗スタッフ。香りもよく、渋みが抑えられた丸子紅茶はケーキに向いているといいます。そして、丸子紅茶との共通点も商品開発へと大きく導きました。
キルフェボン 静岡千葉優希奈店長:「丸子紅茶が日本の紅茶の発祥の地ということもありますし}
日本の紅茶発祥の地は静岡!?「丸子紅茶」とは?
静岡市のタルト店「キルフェボン」で今人気商品となっている「紅茶タルト」。生地には静岡市の丸子紅茶が練りこまれています。
キルフェボン静岡 千葉優希奈店長:「丸子紅茶が日本の紅茶の発祥の地ということもありますし、キルフェボンも静岡店が発祥の地で、お互いを高め合うではないですけれども、(丸子紅茶を)広めていけたらと思う」
植田結衣子アナウンサー:「日本の紅茶発祥の地“丸子(まりこ)”で生まれた“丸子紅茶”一体どんな紅茶なのでしょうか?」
静岡市駿河区丸子。実は「日本の紅茶発祥の地」とされていて、「起樹天満宮」には、国産紅茶の普及に貢献した多田元吉の記念碑が建てられています。
多田元吉は明治8年~9年、日本人で初めて中国やインドの茶産地を調査し、4000種ほどの茶の種子を持ち帰りました。その後、丸子を拠点に紅茶づくりに励みます。ところが、戦後盛んだった紅茶の輸出も、輸入自由化によって衰退。丸子の紅茶生産も例外ではありませんでした。
村松二六:「おいしい紅茶を作りたい」
今からおよそ40年前、紅茶発祥の地となった“丸子”で、紅茶づくりを復活させようと立ち上がったのが、茶農家の村松二六(にろく)さん。1996年から紅茶用品種「べにふうき」の栽培に国内で初めて取り組み、本格的な紅茶製造をスタートさせました。
紅茶にとって重要な発酵技術も自ら手掛け、丸子紅茶をトップブランドにまで育て上げた二六さんですが、去年84歳でこの世を去りました。現在は、妻の時枝さんがその意思を受け継いでいます。
丸子紅茶 村松時枝さん:去年お父さん亡くなったからやめようかなと思ったけど、もう少し頑張ろうかなと」
亡き夫の遺志を引き継いだ時枝さん。“心臓部”となる工場を見せてもらいました。
村松時枝さん×植田アナ
時枝さん「まず初めに茶葉を刈ってきて、ここに広げる」
植田アナ「この広い所にずらっと並べる?」
時枝さん「1番茶は水分が多いので、火を焚いて熱風を取り込んで水分を外す。これが揉捻(じゅうねん)というが、重しをかけて、ここに茶葉を入れて1時間圧力をかけると茶色く発酵してくる」
【注】揉捻=茶葉に圧力をかけ細胞を破壊する
丸子紅茶 村松時枝さん×植田アナ
時枝さん「これが発酵器。お水を使って、シャワーみたいに流しながらぐるぐる回る」
時枝さん「一定の湿度や温度にならないから回すようにしたくて、自分で作った。特許も取って」
最後は、酵素の働きを止めて、いい香りが極限に達するまで火入れをする乾燥工程へ。
植田アナ「これが乾燥機?」
時枝さん「そこでガスを焚いて乾燥するできあがり。その温度計が上がりすぎちゃうと。うっかりしてると焦げて煙が出るときもあって、焦がしたことある(笑)」
“紅茶は生きもの”だと二六さんに叩き込まれた時枝さん。酵素の働きをコントロールする繊細な職人技がないといい紅茶はできないといいます。
植田結衣子アナウンサー:「いい香り。おいしい。果物みたいにほんのり甘い香りがして、飲んだ瞬間ふわっと香ってくる」
苦労も多かった紅茶づくり。キルフェボンとのコラボレーションには不安もあったといいます。
丸子紅茶 村松時枝さん:「私も一緒に40年やってきたから。でも私も同じ味が出せるかなって。実際二六の作ったのは終わっちゃった。だから時枝の“べにふうき”になったけど。キルフェボンさんが私の再スタートを切ってくれた」
明治から令和へ。紅茶を愛した夫婦によって受け継がれる「丸子紅茶」。お茶としての本来の味はもちろん、タルトという形になっても、“静岡の味”として愛され続けています。(タルトの販売は12月19日まで)

