「カラスの巣」による停電増加 電柱に広がる“新たな生活問題” 繁殖期2月~6月に巣作り活発に 町の厄介者…県内3900個確認 高圧6600ボルト危険な撤去作業 静岡

“電柱の上に巣” 撤去現場に密着

「カァー、カァー」――住宅街に響くカラスの鳴き声。静岡市葵区では、電柱の上にカラスの巣とみられるものが確認されている。

 カラスが活発に巣作りを行うのは、繁殖期にあたる2月から6月にかけて。この時期は子育てのため、見通しがよく人目につきにくい高い場所に巣を作る習性がある。

街の中にはカラスがたくさん
街の中にはカラスがたくさん

電柱の巣が停電の原因に

 電柱の上に作られたカラスの巣は、私たちの生活にも影響を与える可能性がある。中部電力パワーグリッドによると、電線付近に巣が作られることで停電が発生するケースがあるという。実際に全国で問題となっており、県内でも対応が進められている。

電柱の上にできたカラスの巣
電柱の上にできたカラスの巣

高圧6600ボルト…危険な撤去作業

 巣によるトラブルを未然に防ぐため、電力会社は撤去作業を行っている。

 高所作業車が通報を受けて向かったのは静岡県菊川市の現場。電柱の高さおよそ12メートルの位置に、木の枝で組まれた巣が確認された。

 この電柱には6600ボルトの高圧電流が流れており、作業には大きな危険が伴う。作業員は専用の装備を身につけ、高所作業車で慎重に接近。巣の中に卵やヒナがいないかを確認しながら作業を進める。

 繁殖期のカラスは警戒心が強く、威嚇や攻撃をしてくる場合もあるため、周囲の安全確認も欠かせない。さらに、最も注意が必要なのが「感電」だ。専用の器具を使い、電気との接触を防ぎながら巣を取り除いていく。撤去作業はおよそ20分で終了した。

高所作業車に乗り作業
高所作業車に乗り作業

枝1本でも停電の恐れ “見えないリスク”

 取り除かれた巣は直径50センチほど。外側は小枝で組まれ、内部には柔らかい素材が使われているのが特徴だという。
 
 問題は、この小枝そのものが停電の原因になり得る点だ。電気が流れている部分に枝が接触すると、それだけで停電につながる可能性がある。特に雨の後など、水分を含んだ状態では電気を通しやすくなるため、リスクはさらに高まる。

 また、地域によっては針金ハンガーなどの金属類を含んだ巣も多く、こうした素材は電気を通しやすいため、より危険性が高いとされる。通常、電柱や電線には絶縁体が設置されているが、巣が橋渡しのような役割を果たすことで電流が流れ、漏電や停電につながるケースがある。

巣と電線は互いに絡まりあう
巣と電線は互いに絡まりあう

静岡県内で約3900個確認 停電は去年より増

 中部電力パワーグリッドによると、通報などにより、今年に入って静岡県内で約3900個のカラスの巣を確認。すでに6割近くが撤去されたという。

 しかし、その一方で停電も発生している。6月15日には吉田町で、およそ1900戸に影響が出る停電が確認された。今年は24日午前10時時点で、カラスの巣が原因とみられる停電が43件発生しており、去年と比べてやや増えている状況だ。

取り除かれた約50センチほどの巣
取り除かれた約50センチほどの巣

根本対策は難しく…頼みは“通報”

 巣の撤去は進められているものの、根本的に巣作りを防ぐ有効な手段は、現時点では確立されていない。そのため、通報によって場所を把握し、撤去するという対応が基本となっている。電柱には番号が表示されており、その番号を伝えることで正確な場所を特定できるという。

 まもなく繁殖期は終わるものの、まだ発見されていない巣の数は把握しきれていない。電力会社は、電気の安全な供給のためにも、カラスの巣を見つけた際は無理に近づかず、電力会社への通報を呼びかけている。

 住宅地の身近な存在であるカラス。その巣が思わぬトラブルにつながる可能性もある。日常の中での“気づき”が、停電を防ぐ一助となりそうだ。

中部電力パワーグリッド 石川浩司さん
中部電力パワーグリッド 石川浩司さん