消えたサバ缶の陰に『イワシ豊漁』 伊東市の漁師「1月半ばから毎日大漁」 研究所「4月頃までは獲れる」
サバの不漁の一方で、“ある魚”の漁獲量は増えています。
漁師は「毎日大漁」
午前5時、静岡県伊東市の富戸港(ふとこう)の沖合800メートル。仕掛けられていた定置網を引き上げると、たくさんの魚。中でも最近多いのが…。
城ケ崎海岸富戸定置網株式会社 加納常行船長:「年が明けて1月半ばくらいからイワシが毎日続いていました。大漁でした。船に積めるのは大体15トンですけど、その15トンを毎日繰り返しても、網の中で獲りきれないというような状況だった」
豊漁と不漁が20年おきに繰り返すというイワシ。マイワシの数は2015年ごろから増加。さらに、最近は、海水温の上昇で、エサとなるプランクトンが大量に発生していることも豊漁の要因です。
鮮魚店「脂ののりがいい」
このイワシの豊漁に、鮮魚店では…。
栗田麻理アナウンサー:「静岡市内の鮮魚店です。今イワシが豊漁ということなんです。こちらには特大サイズのイワシが1本140円で売られています。売れ行きも好調ということです」
こちらの店では1日150匹ほどのマイワシを仕入れていますが、取材した日も昼頃にはほとんど売り切れ状態。全国的な豊漁で、近場の市場で仕入れられるため、価格も例年より10円~20円安く提供しています。
鮮魚日の出 川瀬真吾代表取締役:「ここ2カ月くらい豊漁です。こちら助かっています。この時期あまりイワシは入荷が少ないんですけど、去年の12月くらいからイワシの脂がすごいのりが良くなって、それが2カ月続いている状態です。珍しいですね。他のものも値段が上がっているので、今はイワシを食べてください。値段は安いですよと、こちらは自信を持って言える」
お客さんは…。
買い物客
Q.「この特大サイズが140円ですけど、どうですか?」
A.「安いですよね。いま何でも高くなっているので、安いものがちょっとでもあれば、喜ぶんじゃないですか、みなさん」
干物屋「数年ぶりに地物のイワシで…」
豊漁の恩恵を受けているのは、鮮魚店だけではありません。熱海市網代の干物屋「ふじま」。代表の藤間義孝さんは、数少なくなった天日干しにこだわり、アジやウナギ、それに、タラバガニなどさまざまな干物を手作りしています。そして今年は…。
干物屋ふじま 藤間義孝代表:「数年ぶりに地物のイワシを卸すことが出来ました。脂がかなり抜群でしたね。お刺身でも。うち飲食店やっているので提供しましたが、かなり好評でした。今年は群を抜いて良かったですね。ここのところ、ちょっと作り(イワシの干物)も減っていたが、今回たくさんいいイワシがあがったので、スタッフも気合入れて作って、おいしいイワシの干物を届けたい」
飲食店は「当日あがった」イワシでにぎり寿司と刺身
イワシ豊漁の余波はこんなところにも。沼津港近くの食堂「沼津かねはち」。市場の仲買業者の直営で、毎日、水揚げされたばかりの魚を直接仕入れています。この日、厨房でさばいていたのは、仕入れたてのイワシ。こちらの店では、2月から、沼津港で水揚げされたイワシを使ったメニューを「おすすめ」として提供しています。
沼津かねはち 鈴木幹雄料理長:「こちらはにぎり寿司のネタとお刺身になる。当日あがったものなので、非常に新鮮なもの。今は脂がのっておいしいので、一品料理でお出ししている」
メニューは、にぎり寿司と刺身の2種類。もともと、イワシのみを使ったメニューはありませんでしたが、2月から沼津港でもイワシが多く水揚げされるようになり、急遽、開発したそうです。
沼津かねはち 山本浩芳店長:「お客様の反応も良くて、中にはリピートしていただくお客もいて、売り上げ増にもつながっている。イワシはここ数年水揚げが少なくて、もともと沼津はイワシとサバとアジが有名なので、ここでまた獲れているというのはありがたい」
豊漁で訪れたイワシフィーバー。
沼津かねはち 山本浩芳店長:「水揚げ量が増えてくれば、当然徐々に(市場価格も)下がってくるので、そうすればもっとお客様に喜んでいただける値段にも下げられると思う。(豊漁が)続く限りは、(料理を)提供して、値段が安くなればその値段で提供していきたいと思う」
全国的なイワシの豊漁はいつまで続くのでしょうか…。県水産・海洋技術研究所は「マイワシは産卵のため、冬から春にかけて南下する。北上する4月頃までは獲れるのではないか」としています。