大雨発生の可能性を情報発信 気象庁が6月1日から「線状降水帯」の予測を開始 静岡県内の備えは…
気象庁は「線状降水帯の予測の公表」を発表
気象庁大気海洋部業務課
酒井亮太 気象情報企画官:「線状降水帯が発生すると、大雨災害の発生の危険度が急速に高まるということがあるので、気象庁では6月1日から半日程度前の線状降水帯による大雨の発生の可能性の情報を出していく」
5月中旬、気象庁が発表したのが「線状降水帯の予測の公表」。死者・行方不明者232人を出した、2019年の西日本豪雨。大雨をもたらしたのが、「線状降水帯」です。メカニズムを静岡地方気象台の職員に聞きました。
静岡地方気象台
鶴橋茂太 気象情報官:「線状降水帯発生のメカニズムの模式図だが、この風上のところでは同じようなところで、どんどん積乱雲が発生して風下へ、発生して風下へという形で列をなす。そうするとその通り道の下では同じようなところで強い雨が、激しい雨が降るような状況になるので、そこでは集中豪雨、災害が発生する可能性が極めて高くなってくる」
こちらが、西日本豪雨の際の雨雲レーダー。
静岡地方気象台
鶴橋茂大さん:「風上の方から次々と発達した雨雲が入り込んで、同じようなところで、強い雨雲がかかっていることが見ていただけると思う」
発生原因のひとつは温暖化。気温が高ければ空気中に雨雲のもととなる水蒸気を多く含むことが出来るため、活発な雨雲の発生につながりやすくなるといいます。
難しい線状降水帯の予測
スミス春子アナウンサー:「どうして今まで線状降水帯を予測するのは難しかった?」
静岡地方気象台
鶴橋茂大さん:「線状降水帯の予測そのものは現在でも難しい。今まではメカニズム自体も不明瞭な中々わかっていないところがあった。また、海上から水蒸気が入ってきて、それが、例えば西日本豪雨とかでも、雲が発達してという形だが、なかなか海上での水蒸気の把握、海上から入ってくる水蒸気の観測自体も、中々手薄だったこともあり、いろいろな面で予測が難しかった」
しかし2018年以降、海上の水蒸気の量を観測する船などを導入。民間の船会社とも協力することで様々なデータを入手でき、予測ができるようになりました。近年激甚化する雨による災害。その被害を最小限にとどめるため、早めの避難を呼びかけるのが、線状降水帯の予測を公表する狙いです。予測では全国を東海や関東など大きく11の地域に分け、発生の可能性がある半日前から6時間前に公表します。
それでも…。
静岡地方気象台
鶴橋茂大さん:「実際に、われわれの言う線状降水帯の基準に適合するものは4回に1回。(ただ)必ずしも、線状降水帯、ライン状にはならなくても大雨になっている確率は5割を超えている。災害は線状降水帯か、ライン状になっているどうかは関係なく、同じところで、大雨が降り続くということが、災害が発生する要因になるので、そういった意味で、線状降水帯という言葉だけにとらわれずに、大雨になる可能性があるというところを意識して頂けたら」
防災の専門家は…
防災の専門家は、気象庁の取り組みについて…。
静岡大学 防災総合センター
牛山素行 教授:「線状降水帯という言葉が比較的近年関心を集めるようになってきて、それが大雨に関係があるらしいというイメージが、広く持たれていると思うが、線状降水帯というのは、災害に結び付くような大雨をもたらすいくつかある現象のひとつにすぎない。ですから、われわれは情報を受け止める側としては、線状降水帯の雨であるかなんであるかはどちらかといえばどうでもいいわけで、要は、災害をもたらすような雨が起こりつつあるのか、起こりそうなのか、ということ、ここに注意を向けていった方がいい」
このように指摘した上で、やはり普段からの備えの重要性を訴えます。
静岡大学 防災総合センター
牛山素行教授:「ひとつ期待できるのは、雨による災害は予想もつかないところで発生するというのは極めて稀なんですよね。洪水も土砂災害も、ハザードマップでこの辺で大きな被害が置きそうだと示されているところで発生するのが大半なわけです。なので、まずは身の回りを確認してどこでどんなことが起きそうなのかというところを確認しておくことが何よりも重要になってくると思います」