大井川鉄道の期間限定特別企画 昭和を体験できる「客車列車」
去年の台風15号で被災し一部の運休が続いている大井川鉄道。少しでも多くの人に乗ってもらおうとさまざまな企画を打ち出しています。その現場を取材しました。
山﨑優ディレクター 新金谷駅 島田市 22日
「島田市の新金谷駅に来ています。きょうは平日で現在の時刻は午後4時前なんですが、改札口にはご覧のように長い行列ができています。」
大井川鉄道大井川本線の新金谷駅。
平日の午後4時前にも関わらず、30人ほど人たちがカメラ片手に集まっています。
その目的とは・・・
茨城から 50代:
「レトロな客車に乗車しに来た。大学生の頃に旅行していた頃が懐かしくて、それを今でも体験できるという追体験、ノスタルジーですかね」
東京から 30代
「旧型の客車ということで、その車内に乗ってみたい。今しか乗れないかもしれない」
Qきょうのお目当ては?
神奈川から 40代
「客車列車ですね。自分が子どもの頃、だいぶ小さい頃だが乗った車両に近いもの」
皆さんのお目当てはこちらの「客車列車」。
大井川鉄道では期間限定で、今から80年以上前の昭和10年代から昭和30年代に製造された電気機関車が、旧型の客車をけん引する「客車列車」に乗ることができるんです。
Qすごい人ですね?
大井川鉄道 広報 加冷英鵬さん:
「予想以上にご好評いただいていて、企画した身としても驚いている。(今回の企画は)通常は電車で運転している普通列車の一部を、電気機関車と客車の編成に切り替えて運転をするもの」
この特別企画では普段運行している“現代の列車”の代わりに夕方から夜の時間帯限定で、レトロな「客車列車」が金谷~家山間を走ります。
(運行期間 6月21日22日/26日~7月13日まで)
出発
重々しいモーター音を響かせながら客車列車が発車します。
大井川鉄道 広報 加冷英鵬さん
「最近の電車だとすごく静かだったり、乗り心地が良かったり、あんまり揺れなかったりすることが多いと思うが、当時の車両だと今ほどバネや揺れを制御する技術がまだ発達していなかった時代のものになるので、線路の揺れ具合がダイレクトに客室に伝わってくる。そういったところが昔ながらの列車旅の醍醐味だと思う」
その他にも、向かい合わせのボックスシートや、国鉄時代の昔懐かしいマークが刻まれた扇風機など、至るところに昭和の名残が残っています。
大井川鉄道 広報 加冷英鵬さん
「昭和の日常だった列車が令和の非日常として復活する。日常と非日常の隣りあわせを楽しんでもらうところを目指している」
懐かしさやワクワク感がつまった客車列車の限定運行ですが、
今回この企画を考えた背景には、大井川鉄道の“厳しい現状”があります。
大井川鉄道 広報 加冷英鵬さん
「去年の台風15号で家山から先の線路が通れなくなってしまいどうにかしてお客様に今動いている区間だけでも楽しんでもらえるようにしたい、そんな思いから今回の客車列車を企画した」
いまだ全線復旧できない厳しい現状
大井川鉄道では去年9月の台風15号の影響によって家山駅から千頭駅までの区間で現在も列車の運行ができない状況が続いています。
先週には全国で初めて、国の要請に基づいて派遣される「鉄道災害調査隊」が大井川鉄道に入り、線路などの被災状況の確認が行われました。
鉄道・運輸機構 鉄道災害調査隊 大中英次課長:
「実際に見ますと広範囲に渡っているという状況も見てとれた
どういった形の復旧がいいのか、機構の目線で工事計画を提案した」
大井川鐡道では今ではおなじみとなった「きかんしゃトーマス号」も、今年は折り返し運転を実施するなど、例年とは違った状況で運行をさせていますが、それでも、列車に乗る観光客が減っているのが現状です。
車内で「昭和」を楽しむ
こうした状況の中で始まった昭和の「客車列車」の運行。
乗客は思い思いに“あの頃”を懐かしみながら列車の旅を満喫していました。
車内ではこんなお楽しみも・・・
車内販売員:
「いかがですか。お弁当と飲み物とおつまみもあります」
客室列車には車内販売員も乗っていて、お酒や軽食など、昔懐かしい「旅のお供」を購入することができます。
せっかくなので、瓶入りのジュースを購入してみました。
平成生まれのディレクター:購入したがどうやって開ければいい?
大井川鉄道 広報 加冷英鵬さん:
「一部の車両にはテーブルがついていて、ここを見ると分かるが栓抜きがついている」
現在ではほとんど見る事がなくなりましたが、座席に取り付けられた「栓抜き」も現役です。
山﨑優ディレクター
「開きました。意外と簡単に開くんですね」
大井川鉄道 広報 加冷英鵬さん:
「昔の長距離列車は車内で食事をとる、物を買うことが当たり前だった。やっぱりそれが一つの旅情の演出でもあると思うし、そういったところも含めて昭和の列車旅を楽しんでもらいたいと思い車内販売をすることになった」
車内の至る所で「昭和」を体感できる客車列車。
乗客も大興奮のようです。
東京から 30代:
「扉が手動だったりとか汽笛が鳴ったりだとか、沿線の景色もすごく車両にマッチしていて。絶対今の列車じゃ味わえない」
Q家山駅に着いた後はどうする?
「この後はまた金谷まで戻って3往復、(当日の運行分)全部乗ってみようかなと」
一部区間が運休という厳しい状況の中で、新たな企画を打ち出した大井川鉄道。
「お客さんに乗ってもらうこと」が被災からの復旧するための一歩となります。
大井川鉄道 広報 加冷英鵬さん
「当社として今必要としているのは、今乗りに来てもらうこと。今動いている区間だけでも乗ってもらうこと。昭和の日常を走ってきた味のある車両がいるんだというところを皆様に知ってもらって、繰り返し大井川鉄道に足を運んでもらいたい」