生活保護の引き下げの取り消しを命じる判決「厚生労働大臣の判断には裁量の逸脱または乱用があり違法」静岡地裁
生活保護費の引き下げは憲法に違反しているとして静岡県内の受給者らが自治体を訴えた裁判で、静岡地裁は、引き下げの取り消しを命じる判決を言い渡しました。
久須美舞記者
「このあと判決が出る生活保護費の引き下げ訴訟。これまで地裁20件の判決のうち、引き下げが取り消されたのは10件で、司法の判断が大きく分かれています」
訴状などによりますと、生活保護の基準額は、2013年から3年間、物価が下落したことなどを理由に、平均6・5%引き下げられました。
これに伴い生活保護を受給している県内の50代から70代までの男女6人は、生活保護の基準額が引き下げられたことは、生活保護法に違反していると主張。
食事や入浴の回数を減らさざるを得なくなり、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を奪われたなどとして、静岡市などに引き下げの取り消しを求めていました。
きょうの判決で静岡地裁の菊池絵里裁判長は、国が引き下げの根拠とした基準の1つについて、「統計などの客観的数値などとの合理的関連性が欠けていて、専門的知見との整合性はない」と指摘。
そのうえで「厚生労働大臣の判断には裁量の逸脱または乱用があり違法だ」として、自治体側に引き下げを取り消す判決を言い渡しました。
山本定男さん:
「今、原告になって1番うれしい。闘ってきて本当に良かったと心から感じている。また、これからも長い裁判が始まると思いますが皆様の声援、ご支援よろしくお願いします」
生活保護費の引き下げを巡る訴訟は、全国29都道府県で起こされていて、引き下げの取り消しを命じる判決は、地裁では、東京や大阪などに続き11例目となります。
大橋昭夫弁護士:
「この判決は ものすごく、大きな重要な意味を持っていると思います。自分が今度生活が出来なくなった場合、どうするのかというようなことも含めて大きい視点で捉えていきたい」