「あちらの旅館の温泉にもどーぞ」…宿泊客激減にライバル旅館がタッグ 静岡・伊豆長岡温泉 /伊地アナが行くニュースの現場

 全国の旅行支援がほとんど終わり、静岡県内の観光業も苦戦しているところが多いようです。様々なアイデアで奮闘している観光関係者を取材しました。

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「あちらの旅館の温泉にもどーぞ」…宿泊客激減にライバル旅館がタッグ 静岡・伊豆長岡温泉 /伊地アナが行くニュースの現場

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 今日から始まったシルバーウイーク。旅館に泊まって、風情ある温泉に浸かったり、おいしい食事で、日々の疲れを癒したいですよね。でも…。
女性「旅館とかの値段がすごく上がっていて、ちょっと手が出ない」
男性「旅行支援で安くなっていたので、それが無くなったので、ちょっと金銭的に厳しくなったと感じる」

伊豆の国市の伊豆長岡温泉

画像: 伊豆の国市の伊豆長岡温泉

伊地健治アナウンサー:「伊豆の国市にある狩野川を望む場所に建つ温泉旅館に来ています。全国旅行支援がほとんど終了してしまったことで、こちらの旅館は平日の空き部屋が、半分ほどになってしまうなど、大きな影響が出ていると言います」

 コロナ禍で実施された、全国旅行支援策の「今こそしずおか元気旅」。宿泊費用で最大5000円の割り引きや、3000円の地域クーポン券がもらえることもありました。しかし、3月いっぱいで、宿泊施設へ直接予約する割り引きは終了。旅行を差し控える人が増えていると言います。

ライバル旅館が強力タッグ

 県内有数の温泉地、伊豆長岡温泉にある「おおとり荘」です。宿の自慢は、水揚げされたばかりの伊勢えびや、マグロ、鯛などの豊富な海の幸に、シイタケや水菜など、旬を感じる野菜をふんだんに使った、豪華な料理です。さらに…

画像1: ライバル旅館が強力タッグ

伊地アナ「あ~凄い。」
おおとり荘 原勝政支配人:「こちらは、古代ヒノキの上に漆を塗ったお風呂ですね」

 ヒノキの香りに包まれながら、ゆったりと浸かれる大浴場。

伊地アナ「凄い、凄い」
原支配人:「こちらが解放感バツグンで」
伊地アナ「これは贅沢だ」
原支配人:「お風呂に入るとちょうどいい風景になる」

画像2: ライバル旅館が強力タッグ

 最上階の7階には、箱根連山と狩野川を望む展望露天風呂があります。泉質は、アルカリ性単純温泉。お風呂上がりは、肌がつるつるになるため、美人の湯とも呼ばれています。

伊地アナ「伊豆半島は海が目の前だったり、土地土地の良さがあるけど、伊豆長岡の良さは山に囲まれた景観と、狩野川の流れ、癒しの空間という感じ。さらっとしてるけど、ぽかぽかして変にのぼせる感じではなく、入りやすいですね」

去年は予約でいっぱい…半年前から宿泊客が激減

画像: 去年は予約でいっぱい…半年前から宿泊客が激減

 宿泊料金は、一泊二食付きで1万1000円から。去年は予約でいっぱいでしたが、半年ほど前から、状況が一変したと言います。予約リストを見せてもらうと。

原支配人:「(平日は)半分以上の部屋が空いているのが現状です。少し落ちるなと思ったが、ここまで落ちるとは想像していなかった」

 直接予約での旅行支援が無くなった4月以降、宿泊客は激減したと言います。

原支配人:「今まで、1万5000円が1万円で泊まれるというのが全く無くなったという状態で。お客さんからも、もうちょっとしたら割り引きがあるんじゃないかとか、今行ったら損じゃないか、という認識があるような気がします」

 そして今、追い打ちをかけているのが、食材費や光熱費の高騰です。

原支配人:「特に電気代の値上がりが大きくて、おととしの10月は約50万円だったのが、(今は毎月)100万円超えているので、電気代だけでも、想像していない経費がかかっている」

 そのため、白熱球をLEDライトに交換。給湯器を、灯油からガスタイプに切り替えるなど、節約に努めています。

 さらに最近、大きな出費があったと言います。

原支配人:「大型の空気清浄機を導入しました。去年の9月から今年の3月までの間、設備投資の費用は約1億円です」

 その他にも、オープンスペースだったレストランを個室にするなど。設備投資にかけたお金は、およそ1億円。旅館経営に、重くのしかかっています。

 そこで、おおとり荘では、常連客を対象に独自のキャンペーンを展開。平日は一部のプランで、大人1人2000円の割引を実施しましたが、集客には、なかなか繋がらないと言います。それでも、おおとり荘は負けません。さらなる起死回生のアイデアを考えました。

秘密兵器は「湯めぐり手形」

画像: 秘密兵器は「湯めぐり手形」

伊地アナ「湯めぐり手形? 何ですかこれは」

 旅館のチェックイン時に配っているのは、“湯めぐり手形”です。チケット片手に、裏口から出て、案内されるまま付いて行くと…

伊地アナ「これは趣がありますね。庭園から入って行くんですね」

 歩いておよそ1分で到着したのは、別の温泉旅館“弘法の湯本店”です。

伊地アナ「湯めぐり手形を持ってきたんですけど、私はここに宿泊するわけではありませんが、お風呂入れますか?」

弘法の湯 齋藤麻由美さん「もちろんです。」

 多くの客を呼び込もうと、ライバルだったはずの2つの旅館が強力なタッグを組んだのです。9月から始めた新しいサービスで、各旅館の宿泊客は、もう一方の旅館の温泉も楽しめるんです。

岩盤浴、ラドン浴も楽しめます

 こちらの宿の自慢は…

伊地アナ「すごいぽかぽか」
齋藤さん「ご自身の体調によって、一番奥が熱くて、こちらがぬるい。だいたい30分から1時間こちらに寝て、ゆっくりデトックス・汗をかいて頂く場所です」

画像: 岩盤浴、ラドン浴も楽しめます

 温泉水で温められた岩盤の上に寝転ぶと、体の芯までじっくり温まり、発汗を促してくれます。

 月に2回ほど、日帰りで岩盤浴を利用するという客は。

常連客「本当に毛穴から体全体を温めて、汗を出すという事と、腰痛だとか、肩こり、けっこう事務作業が多いのですが、疲れがすっきり取れますね」

 こちらの旅館も湯めぐり手形に、期待をかけています

齋藤さん「それぞれ持っていない部分(温泉の魅力)を持っている。私共はお風呂が全部一階で展望がない。おおとり荘には素晴らしい展望のお風呂があって。逆におおとり荘さんの客が私共の岩盤浴、ラドン浴を利用いただけるメリットは高いと感じます。ライバルですが、お互いのお客様が今以上に満足していただける、今回の提案を賛同して始めました」

 観光客誘致へ、2つの旅館が手を取り合って、この危機を乗り越えようと頑張っていました。