争点は血の色 袴田事件の再審可否の決定まであと3日 東京高裁の判断は?!
「ハッピバースデー トゥーユー!おめでとうございます」
10日、87回目の誕生日を迎えた袴田巌さん。
巌さん:
「年のことはよくわからん」
支援者からは花束を、姉のひで子さんからは手袋をもらいました。
ひで子さん:
「健康に気を付けて長生きをさせたいと思う。せめて100ぐらいまでは生きてもらいたい」
袴田さんは早速手袋を身に着けると、ドライブに出掛けました。
事件~高裁差し戻し「5点の衣類」
1966年、旧清水市のみそ会社の専務一家4人が殺害された事件で、死刑判決を受けた袴田さん。
今も死刑囚のままです。
2014年、静岡地裁が一度は再審=裁判のやり直しを認め、このとき、袴田さんは48年ぶりに釈放されました。
しかしその後、東京高裁は検察側が求めた決定の取り消しを認め、2020年最高裁は高裁に審理を差し戻しました。
その”理由”が…
「5点の衣類について審理が尽くされていない」
5点の衣類とは、犯行時に袴田さんが着ていたとされる血まみれの半袖シャツやズボンなど最も重要な証拠です。
事件から1年2カ月後に現場近くの工場のみそタンクから麻袋に入った状態で見つかりました。
当時の捜査資料に記載された5点の衣類の血の色は「濃い赤色」。
この血の色について東京高裁がどう判断するかが再審可否の決め手となります。
奥田勝博助教の実験
旭川医科大学の奥田勝博助教。
弁護側の鑑定人として、1年以上みそに漬かった血液は「赤みが残ることはない」と主張。
再審開始を訴える際に求められる新しい証拠を示しました。
奥田勝博助教:
「こちらのチューブには薄い塩酸を入れます。そうすると今赤いのがだんだん黒っぽく変わっていく。(中性の生理食塩水と)比べるとこういう感じで黒っぽく変わっているという感じ」
奥田助教によりますと、血液を赤く見せるヘモグロビンというたんぱく質は、酸が加わると壊れ、黒っぽくなる性質があります。
通常のみその環境は弱酸性で、塩分濃度が10%程度。
血液をこの条件にさらすと、時間が経つにつれて赤みを失っていくといいます。
奥田勝博助教:
「数日で赤みがないっていうのが、この実験からもわかるかと思う。10日も経つと真っ黒という状況になっている」
一方、検察側は奥田助教らの実験に対し、みそタンクには酸素がほとんどない上に、血液が固まった『血痕』では化学反応が遅くなると指摘。
長期間みそに漬けても赤みが残る可能性があると反論しました。
奥田勝博助教:
「確かに酸素濃度が低いほど反応は遅くなるとは思うが、(みそタンクは)決して無酸素ではない」
奥田助教は、麻袋や衣類の隙間にも化学反応を起こすのに十分な酸素があったと主張します。
こちらは、血液を布に垂らしたもの。
1時間半放置すると…
奥田勝博助教:
「みそに漬けていない状態だが、いわゆるこういう風に血痕として置いておいて
酸素と触れさせるだけでも、赤みを失っていくということが言える」
奥田助教は、乾燥させた血痕にみその成分を加えると乾燥度合いに関わらず、数日で色が変化し、茶褐色になると結論付けました。
奥田勝博助教:
「固体の状態は確かに反応が遅い。ですが、みその液体成分が染みてきて、いわゆる反応の場が液体となったときには、その先は全く同じことになるので、十二分に液体に漬かって変色するまでの時間はあったと思う」
検察側も、おととし9月血のついた布をみそに漬ける実験を開始。
1年2カ月後に取り出した結果、「血痕には赤みが残る可能性がある」と反論しました。
そして、奥田助教らの鑑定は新証拠としての明白性が認められるものではないと主張。
再審請求の棄却と袴田さんを再び収監することを求めています。
袴田事件弁護団事務局長 小川秀世弁護士:
「間違いなく再審開始は出していただけるだろう というふうに思っています。ただ袴田さん高齢ですし、これ以上長引かせることは絶対避けてもらいたい」
10日、87歳になった袴田さん。
3日後、釈放から9年のときを経て高裁の判断が出されます。