【リニア】川勝・静岡県知事と長崎・山梨県知事は『仲直り』 今度は静岡・難波市長が県の姿勢にNO
静岡市の難波喬司市長が断言したのは、JR東海が山梨県で行っている「ボーリング」について。
品川―名古屋間で建設が進む、リニア中央新幹線。静岡県も南アルプスの地下がルートになっていますが、トンネル工事が大井川の水や生態系に影響を及ぼす懸念から、県は、着工を認めていません。
静岡県がJRに「山梨県でのボーリング調査は県境300mまで」と要望
一方、隣の山梨県では、静岡県の県境付近までのトンネル掘削を見据えた「ボーリング」が行われていて、20日時点で県境から459m地点まで進んでいます。
ただ、この「ボーリング」について静岡県は、JR東海に対し、県境から300mの地点より先は掘り進めないよう求めていました。
静岡県 川勝平太知事(15日):「JR東海の地質調査によって、山梨県から1kmぐらい入ったところあたりから山梨県側にかけて破砕帯があるということがわかっている。いわゆる先進ボーリングで掘っていくと、これは水抜き工事を兼ねているので、突発湧水もあり得る」
「破砕帯」とは、岩などが砕かれてできた隙間の多い地層で、たくさんの地下水が蓄えられているとされる場所。県は、この破砕帯が県境をまたいでいるため、ボーリングがこの部分に到達すると、静岡県側の水が山梨県側に流れ出てしまう可能性があることを懸念しています。
長崎・山梨県知事「頭越しに言わないで」
ただ、この県の姿勢が、波紋を広げる事態に…
山梨県 長崎幸太郎知事(12日):「静岡県の議論には、大変強い違和感を感じている。正直言って。我々としては、山梨県内の活動についていかなる県であっても、我々のことを頭越しに何がしかおっしゃっていただくのは、願わくば遠慮願いたい」
山梨県の長崎幸太郎知事は、山梨県で行われているボーリングについて、静岡県が事前に相談もなく「待った」をかけたことに猛反発。これに川勝知事は、「礼節を欠いていた」と反省の言葉を口にしたものの、要請を撤回するつもりはないことも明らかにしていました。
直接会って『仲直り』
こうした状況の中、24日、都内で開かれた会議に、静岡・山梨両県の知事が参加。2人はお互いの連絡先を交換したほか、今後は両県の副知事をホットラインとして、県同士のコミュニケーションをさらに密にしていくことを確認したといいます。
静岡県 川勝平太知事:「静岡県が山梨県の行政権に干渉しているかのごとき印象を持たれたこと、大変遺憾に思っていて、常にコミュニケーションをしあうことを確認したことで、今後もうコミュニケーション不足みたいなことは起こらないと期待している」
ただ、山梨県の長崎知事は、静岡県への配慮を見せた一方で、JR東海への要請を撤回しない県に対し、釘をさすことも忘れませんでした。
山梨県 長崎幸太郎知事:「現時点での状況は工事を止めるに及ばないと判断しているが、静岡県の懸念も敬意をもって向き合うべき。静岡県からしっかり掘削について深刻な影響があると科学的根拠を示してもらうことが筋」
静岡・難波市長が県の姿勢にNO
ボーリングをめぐる両県の“すれ違い”が、ひとまず解決となったなか、24日の静岡市の難波喬司市長の発言が、再びこの問題に注目を集めるきっかけにとなりました。
静岡市 難波喬司市長:「工学をやってきたものの個人的見解として、県境までボーリングは掘っていいと思っている。300m前で止めるという議論については、私は賛同していない」
副知事、そして県の理事として、リニア問題の最前線を見てきた難波市長が、「個人的な見解」としながらも、県の姿勢に正面から「NO」を突き付けました。会見の中で難波市長は、破砕帯をお風呂に例えて持論を説明する場面も…。
静岡市 難波喬司市長:「風呂に水があると思いますね。風呂の底っていうのは水圧がかかってますね。その風呂の底(の栓)を抜いた時に、当然こっち側にある水が出てくる。本坑の大きなトンネルや、(本坑に先駆けて掘る)先進坑みたいな大断面のトンネルについては、ギリギリまでやると、どうしても今のような現象が起きるから、気を付けた方がいいと言ってきた」
つまり、難波市長も、お風呂の栓を抜く、つまり破砕帯に穴をあけることで、たまっていた水が流れ出るという点は県と一致しています。では、なぜボーリングはOKなのか? その根拠としてあげたのは、「穴の大きさ」でした
JR東海によるとリニアが通る本体のトンネルには幅およそ14mの穴が開きます。いっぽう、ボーリングでは最大で幅35cmと大きな差があります。
静岡市 難波喬司市長:「ボーリング坑ってこんなもんだと思う。このくらいの口径のものが300m先にある時に、風呂の水の底を抜いた時に、300m先まで水を引っ張ることは考えられない。従って私は、このくらいのものであれば、ここまで掘っても何の問題もないというのが私の考えです」
県同士のすれ違いが解決を見せた矢先に表面化した、県と静岡市の考え方の“すれ違い”。議論はまだまだ平行線をたどりそうです。