だだっ広い展示室にあるのは壁だけ!? 『作品がない』展示会を開くワケは「枯らし期間」 静岡県立美術館

改修工事を経て、4月新たに生まれ変わった静岡県立美術館。今『アート作品がない』企画展が開かれています。その展覧会とは一体…?

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だだっ広い展示室にあるのは壁だけ!? 『作品がない』展示会を開くワケは「枯らし期間」 静岡県立美術館

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美術品がない展示室

 だだっ広い部屋…。まっさらな壁。他には何もありません。ここは、静岡市駿河区にある県立美術館の展示室です。

根方ゆき乃記者:「きょうの美術館には作品が全くない。あるのは作品を運ぶための台車…、こちらは作品を搬入するバックヤード。普段は美術品を陰で支える裏方たちが今回は主役の企画なんです」

 今、開かれているのはその名も「大展示室展」。アートではなく、美術館の「展示室」が今回の主役です。

 作品をより効果的に見せる照明の役割を紹介したブースや絵画を傷つけずに運ぶための道具などが並ぶ館内。

 普段、アート作品を陰で支える壁や台車、ケースなど名脇役の知られざる姿を見てもらうための企画展です。

 普段は作品が展示されているこの大きな壁…。実は、展示会に合わせて職員が毎回動かしています。高さ4メートルほどの壁、天井からつられていて、自由自在に動かし、展示室を区切ることができます。

 耐震補強のため、およそ半年間の改修工事を終え、今月、新たに生まれ変わった県立美術館。

画像: 美術品がない展示室

「枯らし期間」を逆手に

 しかし、次の作品展は6月の予定で2カ月の空白期間が…。一体なぜなんでしょうか?

担当者:「工事をしたあと壁に塗った塗料などが作品に影響を及ぼして変色させたりという可能性がゼロではないということで、美術館では工事の後は数カ月、枯らし期間を置いている」

 聞きなれない「枯らし期間」という言葉。工事後の建物からは塗料をはじめ、多くの建材から有害物質や水分などが放出されます。これがアート作品に影響を及ぼす可能性があるため、展示室内の環境を整える必要があり、その期間が「枯らし期間」です。

 今回の「大展示室展」はこの「枯らし期間」を逆手にとった企画で、展示室の裏側だけでなく、改修工事によってバージョンアップした機能も紹介されています。

担当者:「こちらは今回の工事で導入したLEDランプとこれまでの古いハロゲンランプの照明を比べるコーナー。右側がハロゲンランプで左がLED。ハロゲンランプはちょっと赤みを帯びている。照度を落とすともっと赤くなってしまうので、本来の色が分からなくなるが、LEDはそうした点がなく色の違いがよりはっきり見え絵画を見る環境がよくなった」

画像: 「枯らし期間」を逆手に

来場者「見られないところを見られるのが面白い」

 初めて見る展示室の裏側に来場客も興味深々です。

来場者:「美術館の裏側は初めて絵がないと結構広いし、見られないところを見られるのが面白い」

来場者:「工場の中で使っているような機械や測定器があったので、昔(自身も)やっていたので同じようなことをやるんだなと思ってみた」

担当者:「これまで以上に作品が見やすくなったり、(耐震補強により)安全に見ていただけるようになったというのが工事の成果としてあるので、近くの方に限らず多くの方に見ていただきたい」

 新しく生まれ変わった県立美術館、そして今しか見られない美術館の裏の顔を見に足を運んでみてはいかがでしょうか。