「神明ボウル」50年の歴史に幕(1) ピンの裏側は…永野主任の1日に密着 静岡市
はじけ飛ぶピンが奏でる独特の音。誰もが一度は楽しんだことがあるであろうスポーツ、それがボウリングです。
男性客:「ストライク取ったら、やっぱりワクワクドキドキしますし、うれしいですよね」
女性客:「年齢関係なく、健康関係なく、ボウリングって楽しめて簡単にできるから」
ボウリングブームが去り、ボウリング人口は30年で9分の1に
屋上のピンが存在感を示す静岡市葵区新明町にあるボウリング場「神明ボウル」。その幕開けは、今から半世紀以上昔、1972年にさかのぼります。当時の日本は、ボーリングブームの最盛期。ここ、神明ボウルでも数多くの大会が開催されたほか、ボウリングを楽しむたくさんの人たちで、あふれかえりました。
当時を知る女性
妹)私たちが若い頃はボウリングね。
姉)中山律子さんの頃だからね。
妹)順番待ちをしないと、すぐはゲームを始められないくらいに混みあってましたからね。
しかし、ボウリング人気は徐々に下火に。1993年には4080万人だったボウリング参加人口は、およそ30年の間に9分の1にまで減少。それに伴い、全国のボウリング場の数も1972年のおよそ3700から、去年には670余りにまで減っています。
神明ボウル「コロナ禍で客が激減」 そして老朽化
神明ボウルも例外ではありませんでした。
神明ボウル 永野智史主任:「コロナ禍に入ってからは客も激減して、緩和されたころからまた少しは戻ってきたが、それでも増える様子は見られなかった」
客離れとともに、神明ボウルにのしかかった課題。それは「老朽化」でした。普段は入れない、ピンの裏側を見せてもらうと…
神明ボウル 永野智史主任:「奥の方は、基本的には営業中に見る感じですかね」
Q.どんなところをチェックする?
A.「ここら辺にピンとかがこぼれていたりするので、そのこぼれた近くのレーンの方で異常がある可能性が高いので、そういったところを見たりとか」
Q.機械的には順調に動いている?
A.「異常があるときはあるが、すごく活躍してくれている」
しかし、全国的に行われた耐震診断で、神明ボウルの入る建物は、地震により崩壊する危険性が高いという結果に…。営業を続けるためには、改修が必須とされていました。しかし…
神明ボウル 永野智史主任:「人命にかかわってくることでもあるし、建て直しを行わなかったので、『営業していくのか?』という不安の声ももらっていた」
そして、9月4日、神明ボウルを9月いっぱいで閉店することが明らかとなりました。
朝、機械の音だけが響くレーンで作業をしている一人の男性。神明ボウルの永野主任です。
神明ボウル 永野智史主任
Q.これは何の作業をしている?
A.「これは、もともと引いてあったオイルを機械を使って一度落としてから新しいオイルをレーンに塗るような作業になる。レーンのパターンというのがその店ごとに決まっていて、(そのままでは)提示してあるものと変わってきてしまうので、常にやらないといけない」
それぞれのボウリング場では、オイルの塗り方が決まっていて、誰でも見られるように示されています。これが、ボールの曲がり具合に影響することから、使用するすべてのレーンのオイルを、毎朝塗りなおす必要があるのです。
作業のさなか、足元をしきりにチェックする永野さん。これは…
神明ボウル 永野智史さん
Q.(足元を)見て、何かわかるのか?
A.「オイルが漏れていることがあって、アプローチ上にたれている場合は、固まって、(靴が)すべらなくなってしまうなどの影響が出るので、見落としがないようにしたい」
永野主任「日課がなくなると、ちょっと寂しい」
1時間以上かけて、オイルを塗りなおした永野さん。この作業を行うのも、残りわずかです。
神明ボウル 永野智史主任:「毎日やることなので、それが日課みたいなもので、なくなるとちょっと寂しいというか、習慣が変わるような感じはある」