シラス不漁で関連業者も苦境に 『春漁に期待』も研究所「爆発的に増えることはない」 静岡・吉田町、静岡市
嶋田光希アナウンサー(9日午前8時半ごろ):「シラス専門の漁港“吉田漁港に来ています。もうまもなく今シーズンのシラス漁が終わりを迎えますが、漁港には次々と漁船が戻ってきています。シラスを乗せた青いカゴが運び出されていきます」
キラキラと光る「吉田シラス」。日本有数のシラスの漁獲量を誇る吉田漁港では、早朝、船で運ばれてくるシラスいっぱいのカゴが陸に上げられ、競りにかけられました。シラス漁は1月15日~3月20日まで禁漁期間となるため、今シーズンの漁は残り数日となっています。
今シーズンは過去2番目に不漁か
ところが、市場関係者からはこんな声が。
市場関係者
Q.(今シーズンの)シラス漁は?
A.「ダメだね。そんなに取れてないよ」
静岡県の海の幸を代表する「シラス」。2015年の8549トンをピークに漁獲量が減り続け、おととしは3436トンにまで落ち込みました(主要6港の新居、舞阪、福田、御前崎、吉田、用宗各漁港の漁獲量)。
そして、今シーズンは12月末の時点で2528トンにとどまり、過去2番目に少ない漁獲量となる見通しです(2004年の2460トン)。
取材をした吉田漁港も例外ではなく、不漁に悩まされた1年となったようです。
価格は2倍に
南駿河湾漁業協同組合吉田支所長 園田信晴さん
Q.園田さんはシラス漁に関わってどれくらい?
A.「大体30年くらいやっている」
Q.その経験の中でも今シーズンは?
A.「非常に厳しい年だったと思う」
Q.今までにない(不漁)ですか?
A.「そうですね、なかなか無いですね、そういうことは…」
シラスの不漁は仕入れ価格にも影響が。例年、1キログラム700円前後で推移していた仕入れ価格は、現在、1400円~1500円とおよそ2倍になったといいます。
シラス扱う業者「原価より安く売ったことも」
異常事態ともいえるシラスの漁獲量の減少。最も打撃を受けたのはシラスを扱う業者です。
丸三水産代表取締役 藤岡尚紘さん:「売値の方が原価より安かった。そんな時もありました」
吉田漁港の前に店を構え、シラスを加工、販売する「丸三水産」。漁港のすぐ近くに工場を構えているため、鮮度の良さが自慢の店です。競り落とされたシラスは、すぐに工場に運ばれ、職人が手早く、丁寧に、絶妙な塩加減で茹で上げています。シラスの不漁が長く続く状況について…。
丸三水産代表取締役 藤岡尚紘さん:「自然相手なので、ある程度やむを得ないかなと思って、覚悟を決めて商売している。おいしいシラスが取れるのが何よりなので、量より質でがんばっている」
漁獲量は少ないものの、品質には恵まれている「シラス」。不漁の原因は、黒潮大蛇行やシラスの親であるイワシの減少などと言われていますが、こうした状況に漁協の考えにも変化が出てきています。
南駿河湾漁業協同組合 吉田支所長 園田信晴さん:「今までは取れれば取れるだけ(シラスを)取ったが、これからはそういう時代ではなくて、自然相手なので、自然保護ということも考えながら、漁もあるときに取るのではなくて、今後のことも考えて、(漁を)していかなければいけないと考えている」
用宗漁港の直売所「仕入れが高くなり売り上げあがっても利益少ない」
吉田漁港と同じく、県内でシラスが有名な「用宗漁港」。漁港の目の前に店を構えるのが「大漁丸直売所」です。直売所を併設するこちらのお店では、名物のシラス丼をはじめ、リーズナブルに海鮮どんぶりが味わえます(飲食は金・土・日・祝の限定営業)。
店の人気メニューの1つだというのが、新鮮な生シラスをふんだんに使ったどんぶりです。こちらの店では用宗漁港で水揚げされたシラスを使っていますが…。
大漁丸直売所 奥村尚美店主:「仕入れがすごい高いので、売り上げ上がったとしても利益として残る部分が少なくなってしまう。その辺が厳しい」
新型コロナが5類に引き下げられ、多くの人が外出するようになった今、シラスの減少とは逆に、おいしいシラスを求めてやってくる人が増えたといいます。
客(富士市から):「きょうは友達が初めてなので、一緒に来ました」
Q.一緒に来てどうですか?
A.「とってもシラスも甘くて、新鮮だし、おいしいですね。
客(静岡市内から)
Q.食べてどうですか?
A.「最高です。生シラスが本当に新鮮じゃないですか、ほとんど毎週来てる」
店では利益が少ないながらも、多くの人に来てもらいたいと、消費税分だけの値上げにとどめている厳しい状況。禁漁期間明けのシラス漁には期待しているといいます。
大漁丸直売所 奥村尚美店主:「3月になってシラスが取れてくれれば、客が結構たくさん来てもらえるので、シラスが取れることを期待している」
県水産・海洋技術研究所「爆発的に増えることはない」
県水産・海洋技術研究所によりますと、明確なことは言えないとしながらも、春以降も黒潮の影響などで、爆発的にシラスが増えることはないとみています。また、マイワシの稚魚が主流となる「春シラス」。本来、この時期には東北辺りまで南下しているはずですが、まだ確認できていないということです。今後も厳しい状況が続きそうな「静岡近海のシラス」。春漁までに回復をするのか、見守るしかありません。
(1月10日放送)