【特集】子どもの夢を実現するコンテスト 子どものデザインはどんな製品に? 製品化された入賞作10作品がお披露目
子どもが考えたデザインを職人さんが製品化
多くの地場産品がある静岡市では、地場産品をテーマに子どもの夢を実現するコンテストが2003年から行われています。2025年に特別賞に選ばれた作品が実際に製品化されお披露目されました。(取材・文=三浦徹)
「しずおか『夢』デザインコンテスト」は、静岡市内の小学3年生から6年生を対象に「あったらいいな」と思う地場産品のアイデアを募るコンテストです。
参加者は家具や仏壇、プラモデルなど、静岡の地場産品の15の分野から作品を考え、デザイン画で応募します。今回は静岡市内70の小学校から3620点の応募がありました。
このコンテストの最大の特徴は特別賞10点に選ばれると実際に製品になるという点です。児童が紙に描いたアイデア(絵)を地場産品の職人たちが製品化していきます。
3月21日。今回のコンテストで特別賞に選ばれた10作品が、実際の製品となり、静岡市のギャラリーに展示されました。2024年12月に入賞作品が決まってから、発案者の児童と職人がタッグを組み、およそ3か月製品化に向けて取り組んできたといいます。
作品によっては製品化が難しく職人さんが苦労するケースもあるということです。

製品化に苦労する職人さんたち
特別賞に選ばれた「トイレの兵隊」。発案者の横内小・小山みのりさん(12)とお母さんが、3月4日、製作を担当する職人さん、岸本真紀さんの工房を訪れました。「トイレの兵隊」はトイレットペーパーを引っ張ると、2人の兵隊が紙の上を歩くというもの。絵がとてもかわいい素敵な作品ですがどうやって兵隊を動かすのか? 実際にどんな製品になるのか想像がつきません。
岸本さんの専門は静岡の地場産品「挽物」。「挽物」はろくろを使って木を加工し、器やコマなどを作る技術です。なぜ「トイレの兵隊」の製作を担当したのでしょうか?
●岸本真紀さん:
「もともとはプラモデルでというアイデアだったようですが、ほかの人ができないので私がやることに…。私の専門ではありませんが、兵隊を動かすにはオートマタ(からくり人形)の技術が必要で勉強しました」
製品化に当たり苦労した点は?
●岸本真紀さん:
「絵では兵隊がティッシュの上に浮いていて、2体そろって歩いている。『ドラえもんに頼んでください』というレベルです(笑)。日々悩んで、100枚以上設計図を書き、ようやく自分なりのギミック(仕掛け)を考えました。いまはやっと5合目くらいかな。もっと時間はほしいけれど納品日はきまっているので」
お披露目の3月21日まであと少し。製作は間に合うのでしょうか?

21日、特別賞10作品が展示されたのは、しずおか焼津信用金庫のギャラリーです。小山さんの「トイレの兵隊」はこの日、製作した岸本さんが会場まで作品を持参しました。直前まで作業をしていたということです。
●製品を作った 岸本真紀さん:
「きのうは午前1時まで。きょうも展示用の台を作っていました。ギリギリ間に合いました」
Q製品のできばえは?
「最高でしょう! 難易度的には過去MAXでした。こんなに大変なのは初めてです。最初の『本当にできるのかな』から徐々に『いけるかも』になりました」
発案者の小山さんも母親と会場を訪れました。製品として完成した「トイレの兵隊」を見た感想は?

新たな地場産品の可能性も
●発案者 小山みのりさん:
「自分が描いたものよりもすごいものでした。ずっと大切に大事にしたいと思います」
●母親 小山麻理子さん:
「すごいかわいくて感激しました。トイレじゃなくて、もっとみんなの目に留まるところにしばらく置いておきたい。もったいなくて使えません。世界に一つの製品です。岸本さんがいろいろご苦労をされたことも聞いていたので、本当にありがたい」
●岸本真紀さん:
「オートマタがどんなものかようやくわかって、これからいろいろなものに応用していけると思います。挽物はお椀とおもちゃなんかが多かったけど、動きがあるものも今後作れそうです。このコンテストに新たな可能性を広げてもらいました」
この世にひとつしかない貴重な製品。製品は展示されたのち、アイデアを考えた児童にプレゼントされるということです。


作品は4月18日まで展示
作品はしずおか焼津信用金庫本店1階ギャラリーで4月18日まで展示されています。
【展示】しずおか焼津信用金庫本店1階ギャラリー「ゆめ空間」
【期間】3月21日~4月18日 午前9時~午後3時(土日祝除く)
これまでの特別賞の中では、5つの作品が実際に商品として発売されています。今回の10作品から商品化されるものがあるかもしれません。
▼´特別賞に選ばれた作品は下記の通り(所属は2025年3月時点)
・戎 桃愛さん(森下小)「しずまえチェス」
・大塚理人さん(清水有度第二小)「石げた」
・小泉健人さん(清水船越小)「富士ごま」
・小山みのりさん(横内小)「トイレの兵隊」
・佐伯一花さん(清水庵原小)「しずおかパレット」
・立花世愛さん(静岡大学附属静岡小)「日本のお風ろにみちびくよ」
・長澤朱里さん(南部小)「竹千筋細工かどっちょ洋服かけ」
・前田はなさん(清水入江小)「うなぎけんだま」
・吉川萌々さん(清水飯田小)「ぐるぐる空中ブランコ」
・脇 玲美奈さん(安藤小)「茶そばを食べよう富士山漆器」
