【特集】「誰でも参加できる」三保海浜マラソン 企画したのは常葉大学4年生の宮城嶋開人さん 静岡市清水区

1月18日、静岡市清水区でマラソン大会が行われました。地域を盛り上げようと、この「誰でも参加できる」マラソン大会を企画したのは地元の大学生でした。(取材・文=三浦徹)

1月18日に静岡市清水区三保で行われた「三保海浜マラソン」。去年は激しい雨に見舞われたというこの大会ですが、今年は天候に恵まれた中で開催されました。開会式では静岡市の難波喬司市長があいさつしました。

●静岡市 難波喬司市長:
「笑って走ってつながるということで、わかりやすくていいですね。普段この近くに住んでいても、意外にこの辺りを走ったりすることはないと思います。こういう機会に地元はこんな所だなと関心を持っていただいて、この地域を大事にしようという思いが繋がっていけばいいと思います。とにかく楽しみましょう!」

3回目を迎える「三保海浜マラソン」。大会を企画したのは地元に住む、常葉大学4年生の宮城嶋開人さんです。

●三保マラソン実行委員会委員長 宮城嶋開人さん:
「大学2年生の時に始めた大会です。中学時代から陸上競技をずっと続けていましたが、陸上の先生から『砂浜を走る大会を開きたいからコースを考えてほしい』と言われたのがきっかけでした。その時にコースだけ考えるのではなく、地域に貢献できるような大会を開きたいなと思って企画しました」

大会には過去最多の310人が参加
大会には過去最多の310人が参加

砂浜を走るのは大変

三保地区では、中学生や高校生が部活の練習で砂浜を走ったり、学校のマラソン大会を砂浜で行ったりしているそうですが、一般のマラソン大会で砂浜を走るコースはあまり聞いたことがありません。

学校の大会と違って、実際にマラソン大会を開催するというのはかなり大変な作業なのでは?

●三保マラソン実行委員会委員長 宮城嶋開人さん:
「場所だけあれば、大会ができると思っていました。実際はそうではなくて、ゼッケンを発注したり、協賛をもらいにいくことも必要。場所を使うにしても、公園は静岡市、海岸は県、球場は東海大学と管理者が全部異なっている。想像がつかないくらい仕事がありました(笑)」

大会の特徴はその距離。マラソン大会はフルマラソン(42.195km)や、ハーフ(約21km)、10kmなどの部が設けられるのが一般的です。しかしこの大会の「レースの部」は一般男女が5kmと2.5km。マラソン大会の一般の部で2.5kmは異例の短さです。

●三保マラソン実行委員会委員長 宮城嶋開人さん:
「砂浜は走りずらいので、距離は短めに設定してあります。エリートランナーだけが参加できる大会ではなくて、ふらっと参加できる大会にしたかったので、2.5kmの部をつくりました。できるだけ多くの人、できれば陸上に関係ない人、競技に触れてこなかった人が参加できるような大会にしたかった」

記者も2.5kmの部にエントリー。フルマラソンを含め、何回かマラソン大会に参加したことがありますが、2.5kmは初めてです。2.5kmとはいえ、ちゃんと各自にゼッケンが配られ、完走すれば完走証が発行され、後日、記録を確認することもできます。

レースは 午前11時にスタート。2.5kmの部には61人がエントリーしました。砂浜を走るのは初めてですが、砂に足を取られて、全然前に進みません。「砂浜を走ると足腰が鍛えられる」というのは本当のようです。

天気が良ければ正面に見えるはずの富士山は残念ながら見えず。左側に袖師埠頭のガントリークレーンが見えると最初の折り返し。左側の海から冷たい風が吹きつける中、三保の灯台をすぎて、2回目の折り返し。

この辺りの走路は砂利道ですが、これも結構足には負担がかかります。およそ17分かかって、なんとか完走。正直、2.5kmを甘く見ていましたが、結構きつかった~。

実行委員長 宮城嶋開人さん
実行委員長 宮城嶋開人さん

一緒に走った人たちは…。

●参加者
・女性(静岡市駿河区 40代):
「普段は全然走ってないです。大会の趣旨が、『ランナーじゃなくても楽しめる大会』と伺って。それが素敵だと思って参加しましたが、2.5kmはきつかったです。結構走ったと思ってスタッフの人に『あと何キロですか』と聞いたら、さわやかに『折り返しです』って言われて。まだ半分あるのかと思って絶望しました」

・男性(静岡市葵区 50代):
「普段は何となく走っていますが、最近さぼり気味で2.5kmがちょうどいいかなと思って。思ったより距離が長くて、砂場で足を取られて、体が重たくて、本当に大変でした。でもまた出たいなと思いました」

・女性(静岡市葵区 50代)
「普段は走っていないです。5kmは無理だから2.5kmにしました。この大会はすごく手作りの感じがして好きです」

・女性(静岡市清水区 50代)
「今は別の地区に住んでいますが、生まれは三保なので懐かしかった。地元でも砂浜を走ることはないので、貴重な体験でした」

そして最後に行われたのは今年から設けられた「ふじさんの部」。部門別では今大会最多の71人がエントリー。富士山(ふじさん)にちなんで223mを走ります。マラソンというより短距離走です。年齢制限、順位、計測なし。でもゼッケンはあります。「ふじさん」にちなんで、みな同じ番号「223」のゼッケンをつけて走ります。大人に混じってお母さんに手を引かれた小さなこどもも…。清水区の広報キャラクター「シズラ」も参加しました。

砂浜は足が前に進まない
砂浜は足が前に進まない

距離は223m

●三保マラソン実行委員会委員長 宮城嶋開人さん:
「2.5kmでも長いという人にために、さらに短く、親しんでもらえる大会になるように223mという短い距離の部門を設定しました。これは走っても走らなくてもいい。ベビーカーであっても車いすであっても参加できる。223mの間、会場からずっと声援が届く。ゴールテープも切れる。同じ番号でもゼッケンをつけるとわくわくします。記録は出ず、順位もつきませんが完走証は用意しています」

ゼッケンはみんな「223」
ゼッケンはみんな「223」

松林を元気に!

そして大会と並行して行われていたのが、松林を元気にしようという保全活動。松林を元気にするためには松葉を集めることが必要だということです。走った後の参加者や応援に来た人にビニール袋が配られ、松葉を集めていきます。松葉はあっという間に袋いっぱいに集まりました。

走り終わった後は松葉を集める
走り終わった後は松葉を集める

来年も参加したい

今回は「ウォーキングツアーの部」も含め、過去最多の310人が参加。大会参加者数は年々増えています。

●三保マラソン実行委員会委員長 宮城嶋開人さん:
「実際開催してみると、子どもも大人も、皆さんが喜んでいただいているのが表情から伝わってきます。大会はこれからも継続していかなきゃいけないと思っています。ホテルが閉館したり、大型の観光施設がなくなったり、三保半島の先端はさびれてきていて、不法投棄もあります。この大会を通して、多くの観光客が訪れる『羽衣の松』だけじゃなくて、三保半島全体が盛り上がるようにしたいと思います」

記録を狙うエリートランナーの大会とは一線を画し、「誰でも気軽に参加できる」三保海浜マラソン。そのテーマは「わらって はしって つながって」。今年も笑顔があふれる大会になりました。

会場で参加者に話を聞くと「来年も参加したい」いう声があちこちから聞かれました。記者も来年も参加したいと思います。でも来年は「ふじさんの部」かな?

大人も子どもも「シズラ」も走る(歩く?)
大人も子どもも「シズラ」も走る(歩く?)