鋼材の輸送をトラックから鉄道に切り替える「モーダルシフト」 静岡市の鋼材商社が鉄鋼メーカーなどと連携して実現
静岡市に本社を置く鋼材商社「アイ・テック」は、鉄鋼メーカーやJR貨物などと連携し、鋼材の輸送をトラックから鉄道に切り替える「モーダルシフト」を11月から始めています。12月1日、浜松市で、輸送に使われる専用のコンテナが公開されました。(取材・文=三浦徹)
1日、浜松市中央区のJR貨物・西浜松駅で公開されたのは「31フィート無蓋コンテナ」です。コンテナは長さ9m41cm、幅2m49cm、高さは2m50cm。コンテナの上面と側面が開放可能で、クレーンやフォークリフトでの鋼材の積み下ろしが可能です。
このコンテナは静岡市清水区に本社を置く鋼材商社「アイ・テック」と鉄鋼メーカー「トピー工業」が共同で製造したもので、合わせて4台が製造されました。
愛知県の豊橋製造所で製造されたトピー工業の鋼材は、トラックを使っておよそ800㎞離れた、岩手県北上市のアイ・テックの工場に運ばれています。
しかしコンテナの完成により、鋼材の一部が、西浜松駅~盛岡貨物ターミナル駅間(およそ793km)で、鉄道により輸送されることになりました。工場から貨物駅までは、それぞれ地元の運送会社が運びます。
地球にやさしい「モーダルシフト」
今回の取り組みは「モーダルシフト」と呼ばれるものです。「モーダルシフト」とはトラック等の自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶に転換することをいいます。
国土交通省によると、貨物輸送の方法を転換することでCO2の排出量を大幅に削減することができるため、モーダルシフトは地球温暖化対策として有効だということです。
また、長距離の運転が減ることで、最近問題となっているトラックドライバーの労働力不足にも効果があるということです。
アイ・テックの試算によりますと、今回の取り組みにより、CO2の排出量は年間で65%削減でき、ドライバーの運転時間も年間で61%削減できるということです。(年間240回鉄道輸送を想定)
地球にやさしい「モーダルシフト」。しかし実際には今も依然としてトラックが輸送の主力です。
貨物駅で荷物の乗せ換えが発生するため、輸送に時間がかかること。利用できるルートが限られること。距離が短いと必ずしもコストが削減できないことなどが理由で、なかなかモーダルシフトは進んできませんでした。
モーダルシフトが進んでいなかった業界の1つが鉄鋼業界です。
トピー工業によりますと、サイズや積み下ろし作業の問題などから、鋼材は通常のコンテナを使用することが難しかったといいます。今回専用のコンテナを4台作ったことにより、鉄道により定期的に鋼材を輸送することができるようになりました。鉄鋼業界では初の取り組みだということです。
さまざまな制約があり、なかなか進まないと言われているモーダルシフト。今回の試みが推進のきっかけになると期待されています。