今年度寄港予定は100隻超! 静岡・清水港のクルーズ船寄港数は本州最多 乗客の行動にも変化

静岡県の清水港に今年度寄港予定のクルーズ船は100隻を超え、過去最多となることが分かりました。訪れる人の数が増え、乗客の行動にも変化がみられるということです。(取材・文=三浦徹)

静岡市によりますと2024年の清水港に寄港したクルーズ船は87隻で、全国で9位でした。外国船に限ってみると、本州では横浜港や大阪港を抑えて1位となっています。

コロナ禍が空けた2023年度から寄港数は右肩上がり。2025年度は109隻の寄港が予定されていて、過去最多となる見込みです。なぜここまで増えたのでしょうか?

今年度寄港予定は100隻超! 静岡・清水港のクルーズ船寄港数は本州最多 乗客の行動にも変化

●静岡市 清水みなと振興課 眞田剛光課長:
「立地の問題が大きいと思います。クルーズ船は夜のうちに移動して、次の日の朝に港に入り、乗客はそこで1日を過ごします。その日の夕方出港して次へ向かうというのが基本のスタイルです。外国のクルーズ船は関東地区と関西地区にほぼ寄港しますが、両地区を移動するときに、寄るところがないと1日洋上になってしまうので、寄港地として清水が選ばれていると思います。関東は東京と横浜、関西は神戸と大阪に分かれるので、結果的に清水のほうが数は多くなります」

ーー関東と関西の間に寄港地となる港は清水港以外にはないのですか?
「候補としては名古屋港なども考えられます。ただ名古屋港は奥まった所にあるので、外洋から港に向かうだけで1、2時間かかるため、敬遠されがちと聞いたことがあります」

ーー立地以外の要因は?
「富士山が世界遺産に登録されたのが大きいと思います。そこから寄港数が増えました。清水は欧米の船が多く、買い物というよりも、文化とかそういうものに関心が高いお客さんが多い」

コロナ禍以降寄港数は右肩上がりに
コロナ禍以降寄港数は右肩上がりに

ーー増加する観光客に市としてはどう対応する?
「お客さんがただ来ただけだと地元の効果が見えません。静岡市では2024年からクルーズ船のプロジェクトチームができました。商業や観光の部署などが一緒になって横断的に対応するようになりました」

ーー具体的にはどんなことをしていますか?
「観光は定番の観光地巡りがどうしても多くなる。船にはグレートがあり、『ラグジュアリー』というレベルが高い船だと一般の観光コンテンツよりは、もう少しハイグレードで、なかなか普段は行けないような所とか体験が好まれる。そういう上質や高質なコンテンツを作って、それを今度は船会社や旅行会社にセールスをかける。そうすると今度は旅行にも付加価値が付くのでそれを船に提案してツアーに組み込む。2024年はお茶の関連施設で、ティーペアリングを体験するツアーを実施しました」

静岡市 清水みなと振興課 眞田剛光課長
静岡市 清水みなと振興課 眞田剛光課長

100隻を超えるクルーズ船が訪れるようになった清水港ですが、最近は乗客の行動に変化がみられるということです。

●静岡市 清水みなと振興課 眞田剛光課長:
「以前はクルーズ船のお客さんは、バスに乗って市内の観光地をめぐるケースがほとんどでした。1番人気は三保松原で、日本平夢テラス、久能山東照宮が御三家でした。大型の船だと観光バスが30台から40台きていました。今は同じクラスの船でもバスは10台~20台くらいしか来ない。明らかに減ってきています」

ーー乗客が観光バスに乗らなくなった?
「だんだんクルーズ人口も増えて、クルーズに慣れた人も増えた。そうするとバスに乗って『見せられている』観光ではなく、自分たちで地図を見て行先を決める人が増えてきています」

ーーバスに乗らなくなった乗客は何をしている?
「歩くのが好きな人が多いようです。自分でグーグルマップを見て、日本の街並みを見たりしています。欧米の人は、人がどういう暮らしをしているのかに興味があるみたいで。市民の方から『外国の方がまちなかで迷っていた』という声を聞くことがありますが、迷ってるわけではなく自分たちで見てまわっている」

清水港周辺を歩いている人は多い
清水港周辺を歩いている人は多い

確かに清水区では、観光地でもないところを歩いているクルーズ船の乗客(とみられる)の姿が見られました。

また、地元のスーパーやドラックストアの袋に、カップラーメンやポテトチップを詰め込んで歩いている外国人の姿も…。町を散策している人向けに、マップをつくるべきでは?

●静岡市 清水みなと振興課 眞田剛光課長:
「実は昔からいろいろなマップを作っています。タウンマップとか商店街に特化したものとか。あまりマップが多いと紙ばかりになってしまいますが、目的が違うのでなかなか集約しずらい。そういう意味では、デジタル化が課題です」

スーパーやドラッグストアの袋を持っている人も
スーパーやドラッグストアの袋を持っている人も

ーー今後の課題は
「静岡市が外国人の受け入れ体制ができているかというとそうでもない。表示や言語の問題もある。せっかくいいものがあっても買ってくれなかったりします。静岡市では商店街の人に向けて『外国のお客さんはこういう傾向がある』といったセミナーを開いたり、『外国人に売れる商品づくり』などの支援をしたりしています。単純に右肩上がりを求めるよりは、来たお客さんが満足して帰っていただけるようなことをしなければいけない。『清水に寄港したらこんないいことがあるんだよ』と。それに何が必要かというと、やはり観光の受け入れとかが重要になってきます」

観光客の受け入れ態勢が課題
観光客の受け入れ態勢が課題