わずか8歳で「オリンピック優勝宣言」…雪がほとんど降らない静岡から冬季五輪優勝目指す 三木つばき選手の素顔

 昨シーズン、世界選手権で金メダルを獲得、さらにワールドカップでも日本選手初の総合優勝、静岡が誇る、世界トップクラスのスノーボーダー、三木つばき、21歳。須藤誠人アナウンサーが取材しました。

三木選手「おはようございます。きょう、よろしくお願いします」
須藤アナ「静岡朝日テレビの須藤と申します」
三木選手「三木つばきです、よろしくお願いします」
須藤アナ「三木選手、静岡へおかえりなさい」
三木選手「わ~ありがとうございます!帰って
これました!」

 21歳の若さで世界の舞台で活躍する三木選手。幼いころからの夢を追い求める、トップアスリートの素顔とは。

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須藤アナ「まずは2024-25シーズン、終わったばかりということでお疲れ様でした」
三木選手「ありがとうございました」

須藤アナ「大活躍の一年だったと思うんですけど、振り返ってみていかがですか?」
三木選手「総合して割と立てていた目標よりも、結果は最終的には上回ったシーズンにはなったかなと思います。いろいろ改善点もたくさんあるにはあるんですけれども、やっぱりこの競技ってどれだけ上手な選手でも転倒のリスクが必ず試合で付いてくるスポーツなので、安定した強さを求めていくという意味では充実したシーズンになった」

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 コース上に20本あまり立っている旗門(きもん)と呼ばれるフラッグ。2人が同時に滑り、どちらが早く滑り切れるかを競うのが、三木選手が頂点を目指す「スノーボード・パラレル大回転」です。時速50kmのスピードで、相手との一騎打ち。スピードと正確性が求められる一方で、転倒すれば重大なケガにつながる、危険と隣り合わせの“スピード競技”です。

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須藤アナ「つい先日、スノーアワードのMVPも受賞されていました。それについてはいかがですか?」

三木選手「直前まで知らなかったので、別の方が受賞されると思っていたので『え~私なの?』みたいな感じで(笑)」

 三木選手は昨シーズン、オリンピックの試金石となる戦い「世界選手権」で金メダルを獲得。さらに、ワールドカップでも総合優勝を果たすなどその功績が認められ、全日本スキー連盟が主催するシーズン表彰式で、最優秀選手に選ばれました。これでおととしに続き、2度目の受賞です。

三木選手(スノーアワード2025 都内14日):「日本代表選手として、日本でオリンピックを待ち遠しくしてくれている国民の皆さまの前で最高の滑りをお見せできたらなと思いますし、来シーズン、オリンピック、オリンピックイヤーを盛り上げていけたらと思っています」

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滑れないストレスで? 早かった反抗期

 21歳の若さで日本のスノースポーツ界を背負って立つ三木選手。スノーボードとの出会いは4歳のとき。インストラクターをしていた父親に感化され、初めて板を履きました。“雪遊び”としてのめり込んだのも束の間、転機を迎えたのは5歳を迎える春のこと。長野県から、のちに“地元”となる「掛川市」へ引っ越すことになるのです。

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 三木選手「5歳になる春、掛川に引っ越してきて、その1年間はスノーボードをしなかったんですけど、私が早めの反抗期が来てしまって、親に体当たりをしまくるっていう(笑)反抗期が来てしまって、まあストレスがすごかったんですよね。それでお母さんが板を出してきて、家の中で履かせたらピタッと収まったそうなので、多分滑れないストレスで、1シーズン山に行けなかったストレスで、親の腕を引っかきまくっちゃったりして、『(両親が)じゃあスノーボードまた連れてくか』と言って」

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 とはいえ、雪があまり降らない静岡県では十分な練習ができないため、両親はシーズンになると、毎週金曜日の夜、車を走らせ、掛川市から長野県へ。土日の2日間みっちり練習をして、日付けが変わった月曜日に掛川へ戻る、その生活を、なんと3年間も続けました。

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8歳で「オリンピック優勝宣言」

 そして、当時小学3年の三木選手は、両親にこう告げます。

三木選手「8歳のシーズンが終わるときに『ママ、パパ、私、世界で一番速く滑れるようになる』って言って、どういうものだそれは? ってなって、オリンピックで優勝じゃない?と。『じゃあオリンピックで優勝する』って言ったのが、プロを目指し始めたきっかけになります」

須藤アナ「8歳でそれを宣言したんですか?」
三木選手「宣言しました」

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そこから伝説が始まる

三木選手「小3から12月から3月までの4カ月間、長野でひとりで山籠もり」
三木選手「小4からは大人の部に」
三木選手「中学校1年生からは海外で」

 小学3年からシーズンに入ると、掛川の親元を離れ、ひとり長野に滞在。ホームステイ先の旅館の手伝いをしながらひたすら腕を磨き、小学6年には、史上最年少のプロ選手に。

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 そして、中学1年から、戦いの舞台は世界へ。当時の練習ノートには、ひとり、地道に努力する様子が綴られています。

小学生の頃の練習ノートより
「あした、がんばること。後ろ足にのる。りゆう、後ろにのるとテールがうかない」

三木選手:「秋までに冬の4カ月分の勉強を終わらせてから行く。そうやってお金をかけて行くからには、結果も出さなきゃいけない」

 小学生とは思えない強い覚悟と並外れた実行力で、8歳で宣言した“夢物語”は、いつしか“現実的な目標”へと形を変えました。耳を疑うほどの成長スピードの速さ。その圧倒的な“滑り”を支えるのは、鍛えあげた「体幹の強さ」です。

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 三木選手のフィジカルを管理しているのは、このジムのオーナーでもある山地輝幸さん。小学生の頃から、もう10年来の“バディ”です。

山地さん「腹キメて…10回いこう」
三木選手「(体幹トレーニング)」

須藤アナ「これはどういうトレーニングなんですか?」
三木選手「これは体幹を固めながら下半身を動かしているので、スノーボードも一緒でお腹を固めながら動かすので、そういう連動ですよね?」
山地さん「そういう連動性を高めるために、体幹がすごく重要になる競技で、バランスを取りながら、いかに板に力を伝えるかが重要になるので、どんな負荷がかかっても崩
れない軸を保つというのを練習でやっています」
須藤アナ「不安定な足場での競技ですもんね」

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 すると、ここで。

山地さん「大丈夫っすか? やらないっすか?」
須藤アナ「えっ?今のをですか?うわ~」
三木選手「でも、そんな難しくない、全然難しくない」
須藤アナ「すごく大変そうでしたよ」

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山地さん「肘を付いていただいて、全部ここ(腕)で支えます。パッと飛びながら足を入れ替えます、はいどうぞ」

 須藤アナ、めっちゃ遅いけど何とかできてます。

三木選手「あっ、でもすごい」
須藤アナ「(苦悶の表情)」
山地さん「はい、オッケー」
須藤アナ「(脇腹おさえて)つりそうです。三木選手は全然息上がってないから、すごい」

三木選手「こんなメニューをたくさんやってもらって、教えてもらってます」

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お気に入りの場所は御前崎の海の朝日

 現在は日本体育大学に通い、シーズンに入れば海外を拠点に様々な大会に参戦。大学生とプロスノーボーダー、二束のわらじで多忙な日々を過ごしています。今は年に1カ月ほどしかないオフシーズン。静岡に帰省した際、疲れを癒やす“お気に入りの場所”があるそうです。

三木選手「御前崎の海まで自宅から車で40分~1時間くらい。私、朝日がすっごく好きで、天気が良いってわかっているときは、午前2時半とかに起きて、運転もすっごい好きなので、運転をゆっくりしながら朝日が昇る前に海辺に着いて、ボーっと朝日見るのはすごいリフレッシュできる。帰りはスタバ寄って帰って来る」

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三木家のルールは…

 さらに、三木選手の大好物は“静岡人らしさ全開”のあの料理。

三木選手「地元に帰ると毎回食べさせてもらうのが、うなぎがすごく好きで。うふふ。ちょっと高いので、毎回は食べられないんですけど。シーズン中とかは一時帰国を2~3回するんですよね。一時帰国をするときに行って帰ってくるまでの一遠征の中で、優勝出来たらうなぎに行けるというルールが三木家の中にあって(笑)」

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掛川市立桜木小学校 2022年

 オフの間も、多忙な合間をぬって母校で講演会を行うなど、地元とのつながりを大事にしながら、子どもたちに夢を持つことの大切さを伝えている三木選手。

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 そんな、彼女の“夢”とは―――

三木選手「来シーズンの2月に開催されるミラノ・コルティナ冬季五輪で優勝することです」

 順風満帆に思えたキャリアですが、18歳で挑んだ初めてのオリンピック。その大きさに飲み込まれました(北京五輪9位)。

北京五輪 三木つばき選手(当時18歳):「攻めた結果があの大きなミスにつながったと思うので、もっと練習をがんばっていきたいと思います。オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない」

 3年前の悔しさを胸に、さらなる進化を遂げ、世界のトッププレイヤーに成長した三木つばき。狙うはオリンピックの「頂(いただき)」です。

三木選手「続けていくこと、諦めないことでここまで来れるんだというのを“静岡県民がスノーボード、スノー競技で世界一を獲る”ことで、背中でお見せできたらと思いますし、戦っている姿から感じてもらえたらなというのはすごく思います」

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 24日、JR浜松駅前で行われたトークショー。事前に用意された席は満席で、立ち見客が出るほどの人気ぶりです。雪に馴染みが薄い静岡県から“雪の女王”誕生なるか。三木選手の活躍から目が離せません。

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須藤アナ「三木選手が幼い頃に描いた夢が現実のものになろうとしています。オリンピックまで250日あまり。世界一速いスノーボーダーが静岡から誕生することに期待が膨らみます」

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