【リニア】水資源分野の対話完了に静岡市長がJRに「苦言」、島田市長は「注文」
リニア工事を巡り、静岡県とJR東海との間で行われていた大井川の水資源に関する項目の対話が全て完了したことを受け、静岡市の難波喬司市長はJR東海に苦言を呈した。

リニア工事めぐる対話「水資源」終了
2日、静岡県庁では水資源に関する県の専門部会が開かれ、県がJR東海と対話を要する28項目のうち2項目について、JR東海の対応が了承された。
これにより水資源に関する項目は全て完了。「大井川の水の全量戻し」に端を発し11年余り続いた問題に終止符が打たれた。

会議に出席した平木省副知事は「大井川の水は極めて重要なもの」とする認識を示したうえで、「対話項目を1つひとつクリアするという意味では、非常に大きな1歩」と話した。

JR東海静岡工事事務所の永長隆昭所長は、「水資源の議論は非常に長い期間を要してきた。これまで話してきたことをきちんとやっていくことが大事」と振り返った。

川勝前知事は度々JRを批判
リニア新幹線を巡っては、2013年、JR東海がトンネル工事で対策を何もしなかった場合、大井川の流量が最大で毎秒2トン減ると試算。
川勝前知事は、県外に流出する水の全量戻しを求めたものの対応を明言しないJR東海を度々批判していた。
2022年になり、JR東海が田代ダムから水を取る量を抑えて大井川の水量を確保する、いわゆる「田代ダム案」を表明。
翌年、大井川流域自治体と県がこれを了承した。

静岡・難波市長「長期化したのはJRの姿勢に問題」
静岡工区の着工を認めなかった川勝平太前知事のもとで副知事を務め、リニア問題を担当していた、静岡市の難波市長は3日、コメントを発表。「水資源についての対話がここまで長くかかったのは、、環境影響評価について県や市町との対話が始まった当初、環境リスクに関するJR東海の対応姿勢に問題があったことが原因の一つと認識している」とJR東海に苦言を呈した。
一方で協議については、「水資源への影響予測や保全措置の検討、リスク管理の方法などについて、科学的根拠をもとに、社会からの不安の声にも耳を傾け、これまで議論を重ねてきた関係者のみなさまの長年のご尽力の賜物と敬意を表します」と評価した。

島田・染谷市長「JRは今後も真摯に対応してほしい」
島田市の染谷絹代市長は、水資源に関する対話項目の完了を評価したうえで、「JR東海においては、今まで専門部会で議論されてきた内容に対して、今後も真摯に対応していただきたい」と、コメントを発表した。

県がJR東海と対話を必要とする残る課題は、発生土置き場と生物多様性の2分野18項目。
リニア推進を掲げる鈴木知事の就任から1年が経ち、静岡工区の着工に向け「スピード感」を見せているが、県民の理解が得られるよう今後も丁寧な議論が求められる。