【リニア】川勝知事から鈴木知事へ…この1年で変化は 取材班はカギとなる南アルプスへ 静岡

静岡・鈴木康友知事:「最大の懸案だったリニア中央新幹線のJRとの対話も随分進みまして、今、順調に進んでいるというふうに思っております。一定の成果があったというふうに思います」

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鈴木知事就任1年

鈴木知事(2024年5月):「スピーディーにことに当たっていきたい。どこかで政治的な決断も必要かな」

 知事就任当時、リニア問題についてこう意気込みを語っていた鈴木知事。「スピーディー」という言葉通り、就任直後からキーマンたちと面会を重ね、就任2カ月後にはトンネル工事行われる南アルプスへ。

南アルプス視察(提供:静岡県)
南アルプス視察(提供:静岡県)

 現地では、鈴木知事が自ら質問する場面も。その3カ月後には、南アルプスの山梨側で行われているボーリング現場を訪れました。

鈴木知事(去年10月):「今のところ湧水量も少ない、県民の皆様に安心いただける状況だと思う」

ボーリング現場視察
ボーリング現場視察

 大井川の水問題などから、リニアの工事を認めてこなかった静岡県。リニア工事に関わる課題を28項目に整理し、これら全てを解決することが、着工の前提条件としています。ただ、現状で完了しているのは8項目です。

鈴木知事(今年1月)
Q:今年中にも(28項目の)対話が完了する可能性は?
A.「理論上はあり得るが、物理的にはなかなか難しいかという感じもする」

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 JR東海は、静岡工区の工期を最短でも10年と公表していて、今年中に着工できないとなると、品川―名古屋の開業は少なくとも2036年以降となる見込みです。

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 いっぽうで、大井川流域では“田代ダム案”をめぐって新たな動きが。これまで「田代ダム案」は、南アルプスの県内区間で流出した水量を取水制限によって大井川へ戻すとしていましたが、今回、山梨側の工事で静岡由来の水が流れ出た場合にも田代ダム案を適用すると利水関係協議会で了承されたのです。

島田市・染谷絹代市長:「節目節目で議論するのが大事だと改めて感じた」

JR東海・澤田尚夫リニア推進本部長:「東京電力さんには少し取水抑制を広げさせてくださいという話をしていく」

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取材班「南アルプス」へ

 静岡県にとってリニア問題のカギとなる「南アルプス」。今回、静岡朝日テレビは再び現地を取材しました。めざすのは生態系の調査が行われる沢のひとつ「悪沢」。大井川を北上していきます。

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嶋田光希アナウンサー:「道路脇に大小様々な石が落ちています。目の前何十メートルも上から大きく崩れていますね。えぐれて流されたよう」

 元々、海の底だった南アルプスは現在も年間およそ4mmずつ高くなっていて、その速度は世界でもトップクラスだといいます。

 厳しい環境のせいか、ところどころに崩れているところが…。いっぽうで、野生の動物も多く生息しています。目の前に広がる大自然を眺めながら、南アルプスの奥深くに進んでいきます。ところが…。

嶋田アナ
嶋田アナ

車通れず「もう歩くしかない」

嶋田アナ:「あの先かなり石が落ちてきて高く積みあがっている。ちょっとむずかしそう。いや〜、すごいことになっていますね」

静岡市 織部康宏環境政策監:「これから先はこんな所ばかり。ここもう置いて歩いてここから」
嶋田アナ:「歩くしかない?」

 落石により車は通れず。ここからは急遽、歩いて移動することに。南アルプスの奥深くは、道路の整備が進んでいません。状況によっては車での移動ができないところもあります。さらに…。

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嶋田アナ:「この先の道どうなってますか、これ岩を上っていくということですよね? 結構な斜面になっているんですけど、すごいことになっています」

 目の前に立ちはだかるのは、崩れた斜面。

嶋田アナ:「すごいこれ、全部上から全部落ちてきている?」
織部さん:「あそこから」
嶋田:「上から水が滝のように…」

 自然の厳しさを感じながら歩くことおよそ1時間。ついに…。

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およそ3時間…ついに大井川の源流部「悪沢」に

織部さん:「ここが悪沢になります」
嶋田アナ:「こちらが悪沢。結構大きいですね」

 南アルプスの入り口からおよそ3時間、大井川の源流部に位置するのが「悪沢」です。周りの沢と比べても水の流量が多いのが特徴です。ここの真下にはリニア新幹線の走行車線など4つのトンネルが通り、流量の減少が指摘されています。

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織部さん:「静岡市の方ではここを代表地点のひとつとして決めて、上流の方はまだ調査が全部できていないから、そこの調査をきちんとやりましょうというのが今回の趣旨」

 なぜ水の量が減ってしまうのか。そこにはリニアトンネルと断層が影響しています。JR東海の計画では南アルプスの多くの沢の真下をトンネルが通ることに。

 中でも、この悪沢を含む3つの沢は断層も通っていることから、トンネル内に水が流出する可能性が高く、上流部では流量の減少が確実視されています。

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 現在、県や静岡市はそれぞれJR東海と有識者を交え、流量の減少が生態系に与える影響を議論していますが、南アルプスの上流部で水が減ることで、県の絶滅危惧種にも指定されているような動植物などへの影響も指摘されています。

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織部さん:「(トンネル工事で生態系に)必ず影響が出ると予測しているから、人の手が入っていないところで脆弱なところだから、南アルプス全体の生態系を全体で守っていこうというのが私たちの願い」

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 こうした状況を受け、静岡市の協議会では水位低下による生態系への影響が大きいとされる悪沢を含めた3つの沢を調査の代表地点に設定。今年の秋にはJR東海が上流部を現地調査をし、その結果を踏まえた生態系の保全方針を他の沢にも適用していく方針です。

鈴木知事:「まだまだ調査をこれからしなきゃいけないということもございますので、しっかりJR東海さんや静岡市さんとも調整を図りながら調査も進めていきたい、というふうに思っております。そうは言っても100%賛成していただけるということは考えにくいので、どこかの時点でやっぱり決断ということが必要になってくる」

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 命を育む豊かな自然とリニアは共存できるのか。知恵と行動力が試されています。